中学受験と習い事・スポーツの両立
続ける・減らす・休むの決め方
💡 先に結論 受験の年でも、「全部やめる」と「全部続ける」の2つだけではありません。続ける・回数を減らす・形を変える・区切りの日まで休むの4つから、子どもと1つ選びます。決める物差しは、寝る時刻までの余白と、子どもの気持ちです。体を動かす時間そのものは、どの形でも残します。
⚽ 習い事・スポーツと受験、両立できる?
「受験の年だから、スポーツはやめさせるべき?」は、0か100かで考えるほど決めにくくなります。いちばん近い様子を選ぶと、なぜそうなるのかと、今夜決めることが1つに決まります。
先に知っておきたい3つのこと
- 体を動かす時間が、成績の足を引っぱるとは言えません。学校で体を動かす時間を増やしても、成績が下がる様子は見られず、よい関係を報告した研究のほうが多くありました(米国疾病対策センター、2010年、50本の研究のまとめ)。WHOは、5〜17歳に1日平均60分の中くらい以上の運動をすすめ、考える力や学校の成績にもよいとしています(2020年)。
- 「ゴールデンエイジを逃すと伸びない」には、はっきりした根拠が足りません。9〜12歳をこう呼ぶ言い方はよく使われますが、この時期を逃すと後から伸びない、という「時期の窓」は、研究でまだ確かめられていないと整理されています(Ford ほか、2011年)。焦って決めなくて大丈夫です。
- 競技を減らすことと、体を動かすのをやめることは別です。米国小児科学会は、1つの競技に偏らず、週に1〜2日はその競技を休むことをすすめています(2016年)。受験の時期は、競技の回数を調整しながら、体を動かす時間は残す形がとれます。
いまの様子は?(いちばん近いもの)
運動ばかりで、成績が下がった気がする
🏠 練習のある週はテストの点が下がる。「スポーツのせいだ」と思うと、やめさせたくなる。
見立て:点を下げているのは運動そのものより、運動に押し出された睡眠と宿題の時間であることが多い状態です。
なぜ?運動の時間を増やした研究をまとめると、成績は下がらず、変わらないか、よい方向に出たものが多くありました。いっぽうで、運動すれば成績が上がる、とまでは言い切れません。だから「運動をやめれば点が戻る」とも言えません。先に見るのは、練習の日に何時に寝て、宿題をどこでやっているかです。
根拠:米国スポーツ医学会の見解(Donnelly ほか、Medicine & Science in Sports & Exercise 2016年。5〜13歳の研究をまとめ、運動・体力と考える力・成績によい関係があり、学校の成績への影響は中立とした)/米国疾病対策センター(2010年、50本の研究のまとめ)
今夜から:
- 点が下がったテストの前の1週間を、練習の日とそうでない日に分けて、寝た時刻を書き出す。
理由:運動の日に寝る時刻が遅れているなら、減らすのは運動ではなく、夜の予定の重なりだからです。 - 練習の日の宿題を「帰ってから」ではなく「練習の前か、次の朝」に動かせるか、子どもと話す。
理由:疲れた夜に回すほど、時間がかかって睡眠が削られるからです。 - 下の1週間シミュレーターで、寝る時刻までの余白がない曜日を確かめる。
理由:全部の曜日ではなく、決まった曜日だけが重なっていることが多いからです。
言いかえ:「サッカーばっかりやってるからでしょ」→「練習の日、何時に寝られてた?」
理由:好きなことを責められると、話し合いが守りに入るからです。
✅ 効いているかの見分け方:2週間後、練習の日も決めた時刻に寝られていて、次の小テストで練習の日とそうでない日の差が小さくなっていれば合っています。
小6の秋。チームの練習をいつ、どう減らす?
🏠 6年生の秋、模試や過去問が増えてきた。でもチームには最後の大会がある。いつ、どうやって監督に伝えればいいか分からない。
見立て:迷っているのは「やめるかどうか」より、「区切りの日」と「伝え方」が決まっていないことです。
なぜ?区切りの日を親が決めて言い渡すより、子どもと一緒に決めるほうが、子どもは自分で選んだ区切りとして最後までやりきりやすくなります。区切りの日を先に決めておくと、毎週「今週は出る?休む?」と話し合わずにすみます。子どもにとっても、最後の大会まで、あるいは決めた日まで、と分かっていると気持ちの整理がつきやすくなります。競技を減らしても、体を動かす時間は残せます。米国小児科学会は、子どもに週1〜2日はその競技を休む日をつくることをすすめています。
根拠:米国小児科学会の臨床報告(Brenner ほか、Pediatrics 2016年)/自己決定理論(Ryan・Deci、American Psychologist 2000年。自分で選んだと感じられることが、やる気を保つ柱の1つ)。伝え方の手順は編集部の考えです。
今夜から:
- 子どもと、区切りの日を1つ決める(例:最後の大会の日、12月の最後の練習の日)。
理由:本人が選んだ日だと、そこまでは気持ちよく続けられるからです。 - 区切りの日の1か月以上前に、子どもと一緒に、監督やコーチに直接伝える。
理由:チームは試合の出場や役割を先に決めるので、早く伝えるほど迷惑がかからず、最後まで気持ちよく出られるからです。 - 区切りの日のあとも、週に何回か体を動かす時間(家族で走る・縄跳びなど)を予定に書いておく。
理由:競技をやめることと、体を動かすのをやめることは別だからです。
言いかえ:「受験だから、もうやめなさい」→「最後の大会まで出て、そこで区切ろうか。いつにする?」
理由:区切りを一緒に決めると、やめることが「取り上げられる」ではなく「やりきる」になるからです。
✅ 効いているかの見分け方:2週間後、区切りの日までの予定が家族の中ではっきりしていて、練習の日も塾の宿題が回っていれば合っています。
中学では、部活とクラブチームのどちらで続ける?
🏠 受験する学校は決まってきた。でも、入ってから部活でやるのか、今のクラブチームに通い続けるのか、決めていない。
見立て:決める物差しは「どちらが強いか」より、「週に何日・何時間か」と「学校からの移動時間」です。
なぜ?国のガイドラインでは、学校の部活動は週2日以上の休みの日(平日1日・週末1日)、1日の活動は平日2時間程度・休みの日3時間程度が目安です。クラブチームは練習日や移動が別にかかります。中学受験で遠くの学校に通うと、通学時間が増えるぶん、クラブへの移動と重なりやすくなります。学校によって部活の日数や、外のクラブとの両立の考え方は違います。
根拠:スポーツ庁・文化庁「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」(2022年12月)。学校ごとの扱いは説明会で確かめてください。最後に子どもの答えで決める理由は、自己決定理論(Ryan・Deci、American Psychologist 2000年)です。
公立中学の休日の部活は、2031年度までに原則すべてを地域のクラブへ広げる方向です。いまの学年が中学に入る年と重ねた早見表は部活の地域移行とは(いつから・費用・入らない選択)へ。
今夜から:
- 志望校の候補の通学時間と、今のクラブの練習の曜日・時刻を、下の1週間シミュレーターに入れる。
理由:入学後の1週間を先に見ると、続け方の現実が分かるからです。 - 説明会や個別相談で、「この競技の部活は週何日か」「外のクラブと両立している生徒はいるか」を聞く。
理由:パンフレットに載らないことが多く、学校ごとにちがうからです。 - 子どもに「中学でいちばん大事にしたいのは、試合で勝つこと・仲間・楽しむことのどれ?」と聞く。
理由:どちらで続けるかは、本人が何を大事にしたいかで答えが変わるからです。
言いかえ:「強いほうで続けなさい」→「中学に入って、どんな1週間にしたい?」
理由:子どもが自分の1週間として考えると、決めたことを自分で守りやすいからです。
✅ 効いているかの見分け方:2週間後、説明会で聞くことが決まっていて、子どもが中学での続け方を自分の言葉で言えれば合っています。
寝る時刻が遅くなってきた(練習と塾が重なる日)
🏠 練習から帰って夕ごはん、そのあと塾の宿題。気づくと、寝るのが夜おそくになっている。
見立て:足りないのは、やる気ではなく夜の時間です。
なぜ?体を動かす時間と勉強の時間は、どちらも寝る時間から削られていきます。削られた睡眠は、次の日の集中に出ます。
根拠:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」(小学生は9〜12時間)
今夜から:
- 今夜、寝る時刻を1つ決めて、子どもと紙に書く。
理由:先に寝る時刻を決めると、そこから逆に予定を組めるからです。 - 下の1週間シミュレーターに練習と塾を入れ、寝る時刻までの余白がない曜日を見つける。
理由:困るのが毎日ではなく、決まった曜日だけということもあるからです。 - 余白がない曜日だけ、練習か塾のどちらかを減らす。
理由:全部を減らさずにすむからです。
言いかえ:「早く宿題やりなさい」→「何時に寝たい?そこから決めよう」
理由:寝る時刻を子どもが選ぶと、自分の予定として守りやすいからです。
✅ 効いているかの見分け方:2週間後、決めた寝る時刻を守れた日が、週の半分をこえていれば合っています。
子どもは続けたい。親は受験のために減らしたい
🏠 「試合に出たい」と言う子と、「受験の年なのに」と思う親。話すたびに言い合いになる。
見立て:どちらかが正しいのではなく、決め方が決まっていない状態です。
なぜ?「何をやるかは本人が選び、やめるかは区切りの日に決める」という決め方があります。選んだのが自分だと、続ける理由も自分のものになります。
根拠:ダックワースの「ハード・シング・ルール」(Character Lab)
今夜から:
- 0か100かではなく、4つの形(続ける・回数を減らす・形を変える・区切りの日まで休む)を子どもに見せる。
理由:選べる形があると、言い合いではなく相談になるからです。 - 子どもに1つ選んでもらい、その形で受験の予定が組めるかを、下の1週間シミュレーターで確かめる。
理由:気持ちと時間の両方で確かめると、あとで「やっぱり無理」になりにくいからです。 - 選んだ形を、区切りの日(例:1月のクラス分けのあと)まで続けると約束する。
理由:区切りがあると、途中で毎週話し合わずにすむからです。
言いかえ:「受験の年なんだから、やめなさい」→「この4つの中なら、どれにしたい?」
理由:選ぶのが子どもだと、決めたことを自分で守ろうとするからです。
✅ 効いているかの見分け方:2週間後、練習のある日も、塾の宿題に自分から向かえていれば合っています。
「ゴールデンエイジのいまやめたら、もったいない」と迷う
🏠 「9〜12歳は運動神経が伸びる時期。いまやめたらもったいない」と聞いて、決められなくなる。
見立て:「いましかない」という焦りが、決め方を急がせている状態です。
なぜ?9〜12歳を「ゴールデンエイジ」と呼ぶ言い方は、日本のスポーツ指導でよく使われます。ただ、この時期を逃すと後から伸びない、という「時期の窓」には、はっきりした根拠が足りないと整理されています。分かっているのは、毎日体を動かすことが体にも、考える力や学校の成績にもよいということです。体を動かす時間をやめることと、競技を減らすことは、別のことです。
根拠:Ford ほか(2011年)Journal of Sports Sciences の総説/WHO「身体活動・座位行動ガイドライン」2020年(5〜17歳は1日平均60分の中くらい以上の運動)
今夜から:
- 「競技を続けるか」と「体を動かすか」を、分けて考える。
理由:競技を減らしても、体を動かす時間は残せるからです。 - 競技を減らす週も、1日平均60分は体を動かすと決める(登下校・休み時間・家族での外遊びも入る)。
理由:WHOの目安は、競技だけでなく遊びや移動もふくめた時間だからです。 - 競技に戻る日を、受験のあとのカレンダーに先に入れる。
理由:戻る日が決まっていると、「やめた」ではなく「休んでいる」になるからです。
言いかえ:「いまやめたら、運動神経が伸びないよ」→「試合は少し休んでも、毎日体は動かそう。戻る日も決めておこう」
理由:焦りではなく、決めた予定で話せるからです。
✅ 効いているかの見分け方:2週間後、競技の日が減っても、毎日どこかで体を動かせていれば合っています。
試合・合宿と、模試・講習の日が重なる
🏠 週末の公式戦と模試が同じ日。どちらに行くかで、毎回もめる。
見立て:重なるたびにその場で決めているので、毎回だれかが「選ばされて」います。
なぜ?先に決め方を1つ決めておくと、その日にもめることがなくなります。
今夜から:
- 秋〜冬の試合・合宿と、模試・講習の日を1枚に書き出す。
理由:重なる日が先に見えるからです。 - 重なったときの決め方を1つ決める(例:公式戦は試合、練習試合は模試)。
理由:決め方があれば、その日に話し合わずにすむからです。 - 決め方を、チームの指導者と塾にも先に伝えておく。
理由:あとから休みを伝えるより、気持ちよく送り出してもらえるからです。
言いかえ:「今回はどっちにするの?」→「前に決めたとおり、公式戦の日は試合にしよう」
理由:毎回決め直さずにすむからです。
✅ 効いているかの見分け方:次に重なったとき、話し合わずに決められれば合っています。
子どもが「スポーツをやめたい」と言い出した
🏠 受験の勉強が増えたころ、「もうやめたい」と子どもが言った。
見立て:「やめたい」の中身が、疲れなのか、楽しくないのか、人のことなのかで、答えが変わります。
なぜ?疲れなら回数を減らす形があります。楽しくないなら、区切りの日を決めて、そこで決めます。
根拠:ダックワースの「ハード・シング・ルール」(Character Lab)
今夜から:
- 理由を3つの中から聞く(つかれた・楽しくない・人のこと)。
理由:理由が分かると、やめる以外の形も見えるからです。 - つかれたなら回数を減らす形を試す。楽しくないなら、区切りの日(例:いまのシーズンの最後)を決める。
理由:気持ちが揺れている日に決めずにすむからです。 - やめると決めたら、体を動かす別の形(家族で走る・休みの日の外遊び)を1つ決める。
理由:競技をやめても、体を動かす時間は残せるからです。
言いかえ:「せっかく続けてきたのに」→「どれがいちばん近い?つかれた?楽しくない?人のこと?」
理由:責める前に理由を聞くと、子どもが本当の理由を言いやすいからです。
✅ 効いているかの見分け方:2週間後、子どもが自分の言葉で「どうしたいか」を言えていれば合っています。
小学3年生:2月に塾が始まるまで、まだ時間がある学年です。いまの競技の時間を1週間シミュレーターで出し、2月からの塾の曜日を入れて、先に試しておきます。
小学4年生:塾の日が増える前に、4つの形のどれにするかを決めておくと、5年生になったときに決め直さずにすみます。
小学5年生:塾の日と宿題が増える学年です。週の合計時間と寝る時刻までの余白を見て、形を決めます。
小学6年生:体を動かす時間をゼロにしない形を選びます。受験のあとに競技へ戻る日を、先にカレンダーに入れておきます。
わが家はどの形にする?(決めたら、14日後にこのページで比べられます)
わが家の1週間シミュレーター
練習・試合と塾を、曜日と時刻で入れてください(「スポーツ」に印をつけると、競技の週の時間も出ます)。寝る時刻までの余白と、週の合計が出ます。記録はこの端末の中だけに残ります。
根拠にした資料
- WHO「身体活動・座位行動ガイドライン」2020年(5〜17歳:1日平均60分の中くらい以上の運動)
- 米国疾病対策センター「学校での身体活動と学業成績の関係」2010年(50本の研究のまとめ)
- Ford ほか(2011年)The Long-Term Athlete Development model: Physiological evidence and application, Journal of Sports Sciences 29(4)
- 米国小児科学会「Sports Specialization and Intensive Training in Young Athletes」Pediatrics 2016年
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
- Character Lab「Grit: The Power of Passion and Perseverance」(ハード・シング・ルール)
- Roediger & Karpicke(2006年)Test-Enhanced Learning, Psychological Science 原文
受験の学年ごとに、今月決めること
小3〜小6の10月〜3月に、入塾・全統小・志望校・出願と合わせて、月ごとに今月決めることを1つにまとめています。中学受験 小3〜小6の10月〜3月|学年別・いま親が決めること →
習い事ごとに「何歳から・週何回」を見るときは習い事ガイド、やめどきは習い事のやめどきガイドへ。