小学生の習い事の平均数 — 調査データから見る実態
まず、実際のデータを見てみましょう。複数の調査機関が小学生の習い事の数について調査を行っています。
| 調査元 | 調査年 | 習い事の平均数 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 子どもの習い事図鑑 | 2020年 | 2.39個 | 習い事をしている子に限定 |
| イオレ | 2023年 | 約1.9個 | 1個:24.4%、2個:37.5%、3個:21.8% |
| バンダイ こどもアンケート | 2019年 | 約1.8個 | 2つ以上が53.3% |
各調査を総合すると、小学生の習い事の平均は約2個というのが実態です。ただし、これは「習い事をしている子」の平均であり、約23%の小学生はそもそも習い事をしていないというデータもあります。
学年別の傾向
学年によっても傾向が異なります。バンダイの調査では、小学3〜4年生が最も習い事をしている割合が高く(約81%)、この時期は学校生活にも慣れ、英語やプログラミングなど新しい習い事を始める家庭が多いことがわかっています。一方、小学5〜6年生になると中学受験の準備で塾に絞る家庭が増え、習い事の数は減少する傾向があります。
📊 結論:理想は2〜3個、4個以上は要注意
データを総合すると、小学生の習い事は2〜3個が一つの目安です。4個以上になると子どもの自由時間が極端に減り、疲労やストレスの原因になる可能性が高まります。ただし、この数字はあくまで目安であり、一番大切なのは「子ども自身が楽しめているかどうか」です。3個でもキツそうなら減らすべきですし、4個でも本人が生き生きしているなら問題ありません。
スポンサー
習い事「やりすぎ」のデメリット — 何が起きるのか
習い事が多いこと自体は悪いことではありません。問題は、子どもの容量を超えたときに起きるデメリットです。
① 自由時間の消失
カリフォルニア大学の精神科医ダニエル・J・シーゲル教授は、子どもの発達には「何もしていない時間」が不可欠だと指摘しています。自由時間に脳は活性化し、情報を整理したり、新しいアイデアをひらめいたりするのです。習い事で毎日が埋まると、この「余白」がなくなります。
② 学校生活への悪影響
習い事による疲労が蓄積すると、学校の授業に集中できなくなることがあります。特に平日の夕方〜夜に複数の習い事がある場合、宿題の時間が遅くなり、睡眠時間が削られるという悪循環に陥りやすくなります。
③ 「やらされ感」による意欲低下
本人が望んでいない習い事が増えると、どの習い事にも真剣に取り組めなくなります。すべてが「こなすもの」になり、本来の「楽しみながら上達する」という習い事の価値が失われてしまいます。これが最も怖いデメリットです。
④ 保護者の負担
見落とされがちですが、習い事が多い家庭の最大の挫折理由は「保護者の送迎負担」です。送迎のための移動時間、待ち時間、スケジュール調整は保護者の体力と時間を大きく消耗します。保護者が疲弊すると、子どもにも余裕のない対応をしてしまいがちです。
「やりすぎ」のサインを見逃さない — チェックリスト
習い事が多すぎるかどうかは、数だけでは判断できません。以下のサインが見られたら、立ち止まって考えてみてください。
こんなサインが出たら要注意
- 習い事の日の朝に「お腹が痛い」「頭が痛い」と訴えることが増えた
- 以前は楽しそうに通っていたのに、行くのを嫌がるようになった
- 学校の成績が目に見えて下がった
- 友達と遊ぶ時間がほとんどない(週に1日もない)
- 寝つきが悪い、朝なかなか起きられない
- 食欲が落ちた、または逆に過食になった
- 以前より怒りっぽくなった、些細なことで泣く
- 「もう何もしたくない」という発言が出た
⚠️ 注意:「頑張っている」ように見えても要注意
真面目な子ほど限界を見せず、親の期待に応えようと頑張り続けます。「嫌だと言わないから大丈夫」ではなく、表情や行動の変化を丁寧に観察することが大切です。特に「以前と比べてどう変わったか」に注目してください。
スポンサー
習い事の数を決める — 5つの判断基準
「何個が正解」という一律の答えはありません。以下の5つの基準で、わが家にとっての適切な数を考えましょう。
判断基準① 子どもの「放課後の自由時間」はどれくらいあるか
放課後〜就寝までの間に、宿題、夕食、入浴以外の「自由に使える時間」が1時間以上あるかを確認しましょう。平日に自由時間がほぼゼロの場合は、習い事が多すぎる可能性があります。
判断基準② 週末にまとまった「何もしない時間」があるか
土日両方が習い事で埋まっている場合は見直しが必要です。少なくとも週末の半日は、家族でゆっくり過ごしたり、子どもが好きなことを自由にできる時間を確保しましょう。
判断基準③ 子どもの睡眠時間は確保できているか
厚生労働省のガイドラインでは、6〜12歳の推奨睡眠時間は9〜12時間です。習い事から帰宅して宿題をして、十分な睡眠が取れる時間に寝られているかを確認してください。睡眠不足は学力低下と直結します。
判断基準④ 本人の「やりたい気持ち」はあるか
すべての習い事について「行きたい?」と聞いてみてください。本人が「うーん……」となる習い事は、保護者の意向で続けているだけかもしれません。子どもの「やりたい」が明確なものだけに絞ると、数は自然と適正になります。
判断基準⑤ 保護者が無理をしていないか
送迎の負担、費用の負担、スケジュール調整のストレス。保護者が疲弊していると、子どもへの対応にも余裕がなくなります。「保護者も含めて持続可能か」は重要な判断基準です。
学年別:習い事の数の目安
小学1〜2年生:1〜2個が理想
まだ体力が十分ではなく、学校生活に慣れることが最優先の時期です。「楽しい!」と感じられる習い事を1〜2個に絞り、放課後は友達と遊ぶ時間や自由時間をたっぷり確保しましょう。この時期に「習い事=楽しい」という印象を持てるかどうかが、その後の継続に大きく影響します。
小学3〜4年生:2〜3個が目安
体力もつき、興味の幅も広がる時期。新しい習い事を追加するには良いタイミングですが、3個を超える場合は週のスケジュールを慎重に確認してください。この時期から中学受験を意識して塾を始める家庭も多いですが、塾を入れると他の習い事との両立が難しくなるため、優先順位を話し合うことが大切です。
小学5〜6年生:1〜2個に整理
中学受験組は塾に集中するため、習い事は1つまで(できれば体を動かすもの)に絞るのが現実的です。非受験組でも、この時期は自分の関心を深掘りする段階なので、「広く浅く」より「狭く深く」の方が実りが多い傾向があります。
習い事をやめるタイミング — 前向きな整理のしかた
「辞める=失敗」ではありません。子どもが成長すれば興味や適性も変わります。習い事の整理は「次の成長への切り替え」と捉えましょう。
やめどきのサイン
こんなときは前向きにやめてOK
- 2〜3ヶ月以上、継続的に行くのを嫌がっている(一時的な波ではなく)
- 当初の目標を達成した(泳げるようになった、級が上がった等)
- 他にやりたいことが明確にできた
- 学校生活やメンタルに明らかな悪影響が出ている
- 家庭の経済的な負担が大きくなった
やめるときの子どもとの向き合い方
大切なのは、子どもと一緒に「なぜやめるのか」「次に何をしたいのか」を話し合うことです。一方的に「やめなさい」でも「続けなさい」でもなく、本人の気持ちを聞いた上で、家族として判断するプロセスが重要です。やめたことを後から責めたり、蒸し返したりしないことも大切です。
「区切り」を事前に決めておく方法
習い事を始めるときに「まずは半年やってみて、そこで続けるか考えよう」と区切りを決めておくと、やめるときに罪悪感が減ります。また、「25メートル泳げるようになったら卒業」のように具体的な目標を設定しておくのも有効です。
スポンサー
よくある疑問 — 正直にお答えします
Q. 周りの家庭が3〜4個やっているので焦る
お気持ちはよく分かります。しかし、習い事の数は家庭ごとに事情が異なります。子どもの体力、性格、家庭の経済状況、保護者の送迎可能な範囲。すべてが違うので、「周りと同じ数」にする必要はまったくありません。大切なのは「うちの子が楽しめているか」です。
Q. 習い事を減らすと「逃げ癖」がつくのでは?
これは多くの保護者が心配することですが、科学的な根拠はありません。むしろ、「自分に合わないことを見極めて次に進む力」は社会で必要とされる力です。本当に「逃げ癖」が心配なケースは、すべての習い事を短期間で投げ出す場合であり、じっくり取り組んだ上でやめるのは健全な判断です。
Q. 中学受験があるから塾と習い事を両立させたい
小4以降、塾の授業は週2〜4回、宿題も相当量あります。現実的に、塾と3個以上の習い事を両立するのは多くの家庭にとって困難です。受験を決めたら、優先順位を明確にし、「継続するもの」「一旦休むもの」「やめるもの」を整理しましょう。息抜きのために体を動かす習い事を1つだけ残す家庭が多い傾向です。
まとめ — 「何個やるか」より「何のためにやるか」
この記事のポイントをまとめます。
調査データでは、小学生の習い事の平均は約2個。2〜3個が一つの目安であり、4個以上は子どもの状態を注意深く観察する必要があります。
ただし、本当に大切なのは「何個やるか」ではなく「何のためにやるか」です。目的が明確で、子ども自身が楽しめていて、家庭全体として無理のない範囲であれば、その数がわが家にとっての正解です。
もし今「多すぎるかも」と感じているなら、このチェックリストを使って家族で話し合ってみてください。そして、やめることを「失敗」ではなく「次の成長への切り替え」と捉えること。それが、子どもにとっても保護者にとっても一番健全な習い事との向き合い方です。