「説明会に行きすぎて逆に決められなくなった」「候補が多すぎて家族会議が進まない」「GWに何校か見に行きたいが、どこを優先すべきかわからない」──首都圏だけで私立中学は約300校。調べれば調べるほど候補が増えるのは、情報収集をしっかりやっている証拠です。しかし、20校を全部追いかけることは物理的に不可能。GW前に10校に絞ることで、5月以降が一気に動きやすくなります。
1. 「候補が多すぎて決められない」は正常です
首都圏だけで私立中学は約300校、国公立を含めると350校以上あります。偏差値表を眺め、説明会に足を運び、パンフレットを集めていくと、あっという間に候補は20校を超えます。
これは悪いことではありません。「多すぎて決められない」は、情報収集をしっかりやった人だけが持てる悩みです。何も調べていない家庭はそもそも候補が3校しかなく、結果的に「合う学校」を見逃すリスクがあります。
問題は、20校を全部同じ深さで追いかけようとすることです。過去問を解く時間、説明会の日程、入試日の組み合わせ——すべてに限りがあります。GW前に「深掘りする10校」と「いったん外す10校」を分けることで、5月以降の説明会・文化祭を効率的に回れるようになります。
2. 第1段階:通学60分超を外す
最初に外すべきは「物理的に通えない学校」です。これは感情ではなくデータで判断できます。
中学生の通学時間の限界は片道60分。これを超えると、部活動・自宅学習・睡眠のいずれかが犠牲になります。入学直後は新鮮で気にならなくても、中2・中3で「毎日片道80分」の疲労は確実に蓄積します。
| 通学時間 | 放課後の自由時間(部活なし) | 放課後の自由時間(部活あり) | 就寝時間の目安 |
|---|---|---|---|
| 30分以内 | 約4時間 | 約2時間 | 22:00〜22:30 |
| 45分 | 約3.5時間 | 約1.5時間 | 22:30〜23:00 |
| 60分 | 約3時間 | 約1時間 | 23:00〜23:30 |
| 75分 | 約2.5時間 | 約30分 | 23:30〜24:00 |
| 90分 | 約2時間 | ほぼゼロ | 24:00以降 |
やるべきこと:Google マップで「朝7時台の電車で、自宅の最寄り駅から学校の最寄り駅まで」を検索してください。乗り換え込みで60分を超える学校は、この段階で候補リストの下に移動します。
ここで通常5〜8校が候補から外れます。
3. 第2段階:教育方針の不一致を外す
次に外すべきは「家庭の方針と合わない学校」です。偏差値が合っていても、教育方針が合っていなければ6年間が苦しくなります。
以下の5つの軸で、家庭の方針と学校の方針を照らし合わせてください。
| 軸 | Aタイプ | Bタイプ | 代表的な学校(例) |
|---|---|---|---|
| 管理 vs 自主 | 宿題多め・面倒見◎ | 自由・自己管理 | A: 巣鴨、城北 / B: 麻布、武蔵 |
| 進学 vs 探究 | 大学進学実績重視 | 探究・体験重視 | A: 海城、渋渋 / B: 公文国際、かえつ有明 |
| 共学 vs 別学 | 男女共学 | 男子校・女子校 | A: 渋幕、広尾 / B: 開成、桜蔭 |
| 宗教の有無 | 宗教教育あり | 宗教教育なし | A: 聖光、雙葉 / B: 筑駒、駒東 |
| 部活の位置づけ | 部活が盛ん | 学業最優先 | A: 早実、本郷 / B: 開成(文武両道型) |
パンフレットだけではわからない部分が多いので、この段階では「明らかに合わない」学校だけを外します。「よくわからない」学校は残しておいて、GWの説明会で確認します。
💬 先輩保護者の声:
「偏差値だけで選んで入学させた結果、子どもが"この学校、合わない"と言い出したのは中1の秋でした。管理型の学校に自由人タイプの子を入れてしまった。もっと校風を見るべきだった。」(中2・男子の保護者)
ここでさらに3〜5校が外れます。この段階で、20校が12〜14校程度に絞れているはずです。
4. 第3段階:入試日程の物理的衝突を整理する
ここからは「捨てる」のではなく「組み合わせを考える」段階です。
首都圏の中学入試は2月1日〜5日に集中します。午前入試と午後入試の組み合わせ、合格発表のタイミング、繰り上げの可能性——これらを考慮すると、物理的に受験できるのは最大でも6〜7校です。
| 日程 | 午前 | 午後 | 合格発表 |
|---|---|---|---|
| 2/1 | 第一志望(多くの場合) | おさえ or チャレンジ | 当日夜〜翌朝 |
| 2/2 | 第二志望 or 第一志望② | おさえ② | 当日夜〜翌朝 |
| 2/3 | 状況に応じて | (疲労を考慮) | 当日夜 |
| 2/4-5 | 繰り上げ・後期日程 | — | — |
チェックすべきこと:
- 第一志望の入試日程(複数回入試があるか、2/1午前か午後か)
- 2月1日午前に何を受けるか(ここが全体の軸になる)
- 午後入試の選択肢(移動時間を含めて現実的か)
- 2月2日以降の「おさえ」候補(合格発表のタイミングとの兼ね合い)
- 同日程の学校が複数ないか(どちらか一方しか受験できない)
5. 第4段階:偏差値帯のバランスを確認する
第3段階まで終えたら、残っている候補の偏差値帯を確認します。
| カテゴリ | 偏差値の目安 | 理想の校数 | 役割 |
|---|---|---|---|
| 🔥 チャレンジ校 | 現在の偏差値+5〜+10 | 2〜3校 | モチベーションの源泉。「ここに行きたい」が原動力 |
| 🎯 実力相応校 | 現在の偏差値±3 | 4〜5校 | メインの受験校。最も入念に過去問対策する |
| 🛡️ 安全校 | 現在の偏差値−5〜−10 | 2〜3校 | 「どこにも受からなかった」を防ぐ保険 |
安全校選びのポイントは「偏差値は低いが、校風や教育内容が良い学校」を見つけること。偏差値だけでは見えない魅力を持つ学校はたくさんあります。学校マッチング診断で、偏差値以外の軸でも探してみてください。
6. 「10校に絞る」ワークシート
以下のワークシートを使って、手持ちの候補校を整理してください。
7. GWの学校訪問計画:3日で6校モデル
10校に絞ったら、GW中に最低6校は訪問しましょう。
| 日程 | 訪問校 | 目的 | チェックポイント |
|---|---|---|---|
| Day 1 | チャレンジ校 2校 | モチベーションの源泉 | 生徒の表情、校舎の雰囲気、「ここに通いたい」と子どもが目を輝かせるか |
| Day 2 | 実力相応校 2校 | 「ここもいい」を見つける | 先生の対応、部活動の様子、通学路の安全性 |
| Day 3 | 安全校 2校 | 「万が一」の安心を作る | 「この学校にも良いところがある」と親子で思えるか |
💬 先輩保護者の声:
「安全校として見に行った学校が、実は子どもにとって一番合っていた。偏差値が低いから行きたくないと思っていたけど、実際に見たら先生の目が生き生きしていて、生徒が本当に楽しそうだった。結果的にその学校に通っていますが、大正解でした。」(中1・女子の保護者)
8. 学年別・今の時点で持つべき志望校数
新小4〜小5前半:15〜20校「広く浅く」
気になる学校はどんどんリストに入れる時期。文化祭や体育祭に子どもを連れて行き、「この学校どう思った?」と反応を見る。子どもの「なんか好き」「なんか違う」という感覚は、偏差値より正確な判断基準です。
小5後半〜小6春:10校「深掘り」
今回のコラムの段階です。「深掘りする候補」を10校に絞ります。説明会・過去問閲覧・先輩保護者の話——この3つを10校で行います。
小6夏〜秋:5〜7校「過去問対策」
過去問を解く学校を5校程度に絞ります。1校あたり3〜5年分を2〜3周するため、5校でも相当な量です。
小6冬:4〜6校「最終決定」
12月の面談で最終確定。1月校の選定も含めて、実際に出願する学校を決めます。
9. よくある失敗パターン5つ
偏差値が合っていても、校風が合わなければ6年間が苦しい。偏差値は「入口のフィルター」であり、最終判断基準ではありません。
「うちの子なら受かるはず」は親の願望。安全校を馬鹿にする空気が家庭にあると、不合格が続いた時に子どもの居場所がなくなります。
「○○中は面倒見がいいらしい」——伝聞情報はバイアスの塊。必ず自分の目で確認してください。
「あなたはまだ子どもだから親が決める」——これは最悪。入学後に「自分で選んだ」という意識がないと、困難に直面した時に「親のせいだ」になります。
「片道90分でも、電車で勉強すればいい」——中学生に毎日3時間の通学は過酷すぎます。疲労で部活も勉強も中途半端になるリスク大。
10. 「捨てる」のではなく「順番を決める」
最後に大切なことを1つ。
「10校に絞る」と言いましたが、正確には「今は深掘りしない学校を決める」です。候補から完全に消す必要はありません。リストの下の方に残しておいて、夏以降に状況が変わったら引き上げることもあります。
実際に、6年生の秋に偏差値が急伸して、春には候補にも入っていなかった学校を受験して合格するケースは珍しくありません。逆に、第一志望だった学校を秋に外して、第二志望に集中した結果、より良い受験になったケースもあります。
重要なのは、「全部を同じ深さで追いかけることをやめる」ことです。20校を均等に追うと、どの学校も中途半端になります。10校を深く知ることで、本当に「うちの子に合う学校」が見えてきます。
「志望校の選び方3つのポイント」も合わせて読むと、判断軸がさらに明確になります。