ただし、ここで踏みとどまって考えるべきは3点。① 志望者数が多くても定員が多ければ倍率は意外と安定する(その逆も然り)。② 2026年データから2027年を読むには「系列化・共学化」の地殻変動を織り込む必要がある(明大世田谷・桐蔭学園・法政千代田三番町など)。③ ベスト10は「中央値の家族の選択」であって、「我が子に合う選択」とは限らない ── とくにMARCH偏重を避ける家庭、附属を選ばない家庭、海外大進学を見据える家庭にとっては、ベスト10をなぞる発想ではむしろ機会損失です。本コラムでは、塾なら踏み込まない領域に踏み込みます。
1. まず事実 ── 共学校ベスト10と「定員」を並べてみる
志望者数だけ見せられても倍率は読めません。「志望者数 × 定員」で初めて競争の実像が見える。下表に2026年度入試の各校公式募集人員を併記します(2027年度の定員は今後発表されますが、大幅変更がない限り近い水準が予想されます)。
| 順位 | 学校名 | 系統 | メイン日 | 2026年度 定員(人) | 定員 規模感 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1位 | 渋谷教育幕張 | 進学校 | 1月(千葉) | 約215※ | 大 |
| 2位 | 明大明治 | MARCH | 2/2 | 150 (1回90+2回60) |
中 |
| 3位 | 東京農大第一 | 進学校 | 2/1 | 200 (4回構成) |
大 |
| 4位 | 市川 | 進学校 | 1月(千葉) | 約320 | 最大 |
| 5位 | 中央大附属 | MARCH | 2/1 | 150 (1回100+2回50) |
中 |
| 6位 | 芝浦工大附 | 理工系 | 2/1 | 155 (1回90+2回50+特色15) |
中 |
| 7位 | 中央大附属横浜 | MARCH | 2/1 | 約140 | 中 |
| 8位 | 法政第二 | MARCH | 2/2 | 約160 | 中 |
| 9位 | 明大付属八王子A1 | MARCH | 2/1 | 約160 (A1+A2+B) |
中 |
| 10位 | 明大付属世田谷 旧・日本学園/2026/4共学化 |
MARCH | 2/1 | 120 (1回70+2回50) |
小 |
2. 構造的偏り ── MARCH付属が10校中6校、しかし「定員総数」も最大
系統別に集計すると、構造がはっきり見えてきます。
・MARCH付属/系属: 6校(明大明治・中央大附属・中央大附属横浜・法政第二・明大付属八王子・明大付属世田谷)
・純粋な共学進学校: 3校(渋谷教育幕張・市川・東京農大第一)
・理工系大学附属: 1校(芝浦工大附)
共学志望者の6割がMARCH付属志向という極めて明確な偏り。とくに明治大学系列が3校(明大明治・明大付属八王子・明大付属世田谷)、中央大学系列が2校(中央大附属・中央大附属横浜)でランクインしており、「明治か中央か」の選択は今や中学受験の中核論点になっています。
定員総数で見るとさらに鮮明 ── MARCH付属計約880名
定員ベースで集計すると、MARCH付属6校の定員合計は約880名(明大明治150+中大附属150+中大附属横浜140+法政第二160+明大八王子160+明大世田谷120)に対し、共学進学校3校の定員合計は約735名(渋幕215+市川320+農大一200)、理工系附属155名。「人気10校の入口」全体でMARCH付属が定員でも最大シェアを占める構図です。
これは志望者がMARCHに集中するだけでなく、各校が定員でも応えており、構造的にMARCH流入が最大化していることを意味します。塾の家庭動向調査でこのレベルの定員集計を出すケースは少なく、「人気=合格しにくい」と短絡しがちですが、定員までセットで見ると印象が変わります。
なぜMARCH付属が集中するのか ── 3つの構造的要因
第一に、大学受験の早期化と難化です。私立大学の入試方式が複雑化し、一般入試の難度が上がる中、「中学受験で大学進学先を確定させたい」という家庭のニーズが高まっています。
第二に、共学トレンド。男子校・女子校志望が伝統的に強い首都圏で、共学を選ぶ家庭は「共学+大学附属」を選ぶ志向があります。
第三に、新規系列校化の波。明大付属世田谷(旧・日本学園)が2026年4月に系列化したばかり、2027年4月には法政大学千代田三番町(旧・東京家政学院)の系属校化、桐蔭学園の中等教育学校共学化も控えています。「系列化発表後に倍率急騰」という日本学園→明大世田谷の前例(受験者51名→1,088名・倍率7.7倍)が記憶に新しく、家庭側の関心が一層集中しています。詳しくは週間ニュースまとめ(4/20〜26)をご参照ください。
3. 各校の併願パターン ── 公表データと独自コメント
四谷大塚が公表した、各校を第一志望とする受験生たちが選んでいる併願先パターンです。日程ごとに「最も多く併願されている学校」が掲載されています。
2/1:開成 / 2/1午後:広尾学園2
2/2:渋谷教育幕張2 / 2/2午後:広尾学園(医進・S)
2/3:昭和秀英2 / 2/4:市川2 / 2/5以降:広尾学園3
2/1:明大付属世田谷 / 2/1午後:国学院久我山(ST)
2/2午後:中央大附属横浜2 / 2/3:明大明治2
2/4:明大付属世田谷2 / 2/5以降:法政大学3
2/1午後:東京農大第一2(算国) / 2/2:恵泉女学園2
2/2午後:東京農大第一3(算国) / 2/3:都市大等々力2(特選)
2/4:明大付属世田谷2 / 2/5以降:国学院久我山(ST3)
2/1:早稲田 / 2/1午後:開智日本橋(特待4科)
2/2:安田学園3 / 2/2午後:東京農大第一3(算国)
2/3:昭和秀英2 / 2/4:市川2 / 2/5以降:国府台女子学院2
2/1午後:明治学院 / 2/2:明大明治
2/2午後:大妻中野3アドバンスト / 2/3:明大付属八王子A2
2/4:中央大附属2 / 2/5以降:法政大学3
2/1午後:安田学園2 / 2/2:芝浦工大附2
2/2午後:高輪(算数午後) / 2/3:成城2
2/4:明大付属世田谷2 / 2/5以降:本郷3
2/1午後:神奈川大附 / 2/2:法政第二
2/2午後:中央大附属横浜2 / 2/3:青山学院横浜英和B
2/4:法政第二2 / 2/5以降:日本大学C(AF)
2/1:中央大附属横浜 / 2/1午後:日本大学A2(AF)
2/2午後:中央大附属横浜2 / 2/3:青山学院横浜英和B
2/4:法政第二2 / 2/5以降:日本大学C(AF)
2/1午後:明治学院 / 2/2:明大明治
2/2午後:中央大附属横浜2 / 2/3:明大付属八王子A2
2/4:中央大附属2 / 2/5以降:明大付属八王子B
4. 2027年は2026年の繰り返しではない ── 系列化・共学化が崩す併願パターン
ベスト10併願パターンは「2026年までの相場」── 2027年入試は3つの破壊的変化が同時進行
四谷大塚が公表した併願パターンは、いま現在登録されている家庭の選択を集計したものです。しかし2027年入試では、以下3つの動きが従来パターンを崩す可能性が高い。
① 明大付属世田谷(旧・日本学園)の共学化2年目
2026年4月共学化した明大世田谷は、従来は男子校でした。2025年度入試(最後の男子校募集)で倍率が第1回4倍・第2回7倍・第3回11倍まで急騰し、共学化初年度の2026年度入試はさらに女子受験生の流入で倍率がさらに上昇。2027年は共学化2年目で「実態がもう少し見えてきた」段階に入り、女子の志望が安定して増えると予想されます。ベスト10の併願パターン(明大明治第一志望者が2/1に明大世田谷を併願)は、女子の流入で2/1の倍率がさらに上昇する可能性。
② 桐蔭学園中等教育学校の2027年4月共学化
桐蔭学園中等教育学校は2027年4月から男女共学化を発表しています。現在の併願パターンには登場していませんが、神奈川エリアの中央大附属横浜・法政第二の併願先として桐蔭学園が新たに台頭する可能性。神奈川MARCH付属併願の「相場感」が崩れます。
③ 法政大学千代田三番町(旧・東京家政学院)の2027年4月系属校化
今回の共学校ベスト10には登場しません(女子校のため)が、法政千代田三番町は2026年4月の四谷大塚合不合で女子校・志望者数増+159人で1位を獲得。法政付属の3校(法政中・法政第二・法政国際高)は既に共学ですが、「法政系列で固める」併願戦略の中に新たな女子向けカードが加わる影響は小さくありません。とくに法政第二(女子も受験可)の併願先選定に影響が出る可能性。
結論:2027年入試は、共学化・系列化の動きが3校同時並行で進行するため、2026年データを「そのまま使う」のは危険。秋以降の合不合(第3〜4回)では志望者動向が大きく動くため、定期的なデータ更新が必須です。詳細は週間ニュースまとめ(4/20〜26)をご覧ください。
5. ベスト10をなぞらない ── 塾が踏み込まない3つの代替案
📌 そもそも「ベスト10併願パターン」とは何か
四谷大塚が公表したのは、「同じ学校を第一志望にしている家庭の中央値(多くの家庭の選択)」。これは強力な参考データですが、同時に「みんなが選んでいるパターン」=「我が子に最適なパターン」とは限りません。
そして、塾は構造上、「合格を最大化する併願戦略」を提示するのが本業。MARCH偏重を疑う、附属を選ばない、海外大進学を見据える ── こうしたテーマは塾のビジネスモデル(合格実績ベース)とは相性が悪く、踏み込まれません。
以下、スクールコンパス編集部から、塾が踏み込まない3つの代替家族像を提案します。「我が子はそうかもしれない」と感じたら、ベスト10併願パターンとは別の道を選ぶ価値が十分にあります。
MARCH偏重を避けて新興進学校を選ぶ家庭
── 「内部進学の安心」より「鍛え上げられる環境」を取る
ベスト10の構造を見て「うちはMARCH付属より、もう少し勉強の濃度が高い学校がいい」と感じる家庭は少なくありません。MARCH付属は内部進学率が高い反面、「大学受験を経験しないことによる学力定着の弱さ」「6年間の学習モチベーション維持の難しさ」が課題として挙がるのは事実。
代替候補:新興進学校・グローバル進学校
広尾学園・三田国際学園・開智日本橋・かえつ有明・宝仙学園理数インター・芝国際・学校マッチング診断で「進学校」「新興系」を軸に絞ると候補が見えます。これらは2010年代以降に教育改革を実施し、医学部・難関大・海外大に強い実績を作っている共学進学校群。MARCH付属の偏差値帯と部分的に重なるため、現実的な選択肢になります。
併願設計の例(明大明治レベルの学力帯の家庭):
2/1午前:広尾学園2(または三田国際MST)
2/1午後:開智日本橋(特待4科)
2/2午前:明大明治(チャレンジ)
2/3:広尾学園3
2/4:芝国際2
2/5以降:かえつ有明2 など
ベスト10では明大明治志望者が「明治系列で固める」のに対し、こちらは「進学校で固める」設計。「中学受験の偏差値で学校を絞った後、6年後の大学進路で逆転する」発想です。塾は内部進学校との偏差値比較を勧めることが多いですが、進学校志望は別軸の判断基準が必要です。
附属を選ばない家庭 ── 「固定の進路」を回避する家族の論理
── 子どもの志望は12歳時点では決められない、という前提
「6年後にどんな大学・学部に進みたいかなんて、12歳時点では決められない」── これに賛同する家庭は、附属校を意識的に避けます。明大明治に入れば明治大学、中央大附属に入れば中央大学が事実上のゴール。「将来は理学部に進みたい」と思っても、明治大学に理学部はないため外部受験を選ぶか、似た学部で妥協するかの二択になります。
附属を選ばない家庭が選ぶのは、「進学校×多様な進路実績」のある学校。渋谷教育幕張・市川・東京農大第一はこの志向と一致しますが、ベスト10にはこの3校しか共学進学校が登場していません。選択肢を広げると以下のような共学校群があります。
代替候補:進路選択の幅が広い共学進学校
渋谷教育渋谷・栄東・栄光学園(男子校だが他大進学含めて柔軟)・浦和明の星女子・洗足学園(女子校)・公文国際学園・かえつ有明・宝仙学園理数インター・東京農大第一・開智学園・専修大松戸(系列校だが他大進学が多数派)など。学校マッチング診断で「他大進学率が高い」軸でも検索できます。
併願設計の発想転換:
ベスト10併願パターンは「日程ごとの最適化」が中心ですが、附属を避ける家庭が考えるべきは「6年後に子どもが進みたい大学・学部の選択肢が今の段階で何通り残されているか」。たとえば明大明治を選ぶと事実上明治大学一択。一方、東京農大第一なら東大・国立医学部・難関私立・海外大すべて開かれています。「いまの偏差値が同じ」でも、6年後の選択肢の幅は学校で大きく違うのが事実です。
注意:附属校が悪いわけではありません。「子どもの個性が早期に明確で、内部進学のメリットが大きい」家庭にとっては最適解です。ただし「決められないから安全策で附属」という消極的選択には、長期的なリスクがあります。
海外大進学を見据える家庭 ── 「日本の大学受験」をそもそも回避する
── 中学受験の選択は、大学受験のスタートラインを決める
近年急増しているのが、「海外大進学(米国・英国・カナダ・オーストラリア)」を中学受験の段階で視野に入れる家庭。為替円安が逆風ですが、それでも家計に余裕がある層を中心に、「日本の大学受験を回避し、海外大に行ける環境」を求めるニーズは伸びています。
この場合、MARCH付属は事実上選択肢から外れるのが普通です(明治・中央・法政は海外大進学実績もありますが、教育プログラムの主軸はあくまで内部進学)。
代替候補:海外大進学に強い共学校
渋谷教育幕張・渋谷教育渋谷(両校とも海外大進学者が毎年多数)・広尾学園・三田国際学園・開智日本橋・学校マッチング診断で「海外大進学」「英語教育充実」軸で検索できます。
選択基準(ベスト10にない視点):
・IB(国際バカロレア)プログラム認定校か:海外大の出願では、IBディプロマ(DP)を取得していると有利。日本の大学進学にも使えるダブルトラック。
・SAT・TOEFL・IELTSの校内対策:これらの試験対策が学校カリキュラムに組み込まれているか。塾通いに依存しない環境かどうか。
・過去5年の海外大進学実績:単発ではなく継続的に進学実績があるか(学校公式サイトに公開されているのが普通)。
・カウンセリング体制:海外大出願は出願時期・推薦状・エッセイ・課外活動が複雑で、専門カウンセラー在籍が必須レベル。
併願設計の例:1月渋幕→2/1午後広尾学園2→2/2渋幕2→2/2午後広尾医進・S→2/3渋谷教育渋谷→2/4市川2→2/5以降三田国際MST3。これはベスト10の「渋幕第一志望者」併願パターンに似ていますが、2/3に渋渋を組み込み、「海外大進学最強2校」(渋幕・渋渋)を両方狙うのが独自設計。
注意:海外大進学は学費負担が極めて大きく(年間500〜800万円規模)、家計の長期計画が必須。中学受験の段階で家族でこの選択肢を真剣に議論しておくことが、子どもの将来選択肢を広げる前提条件です。塾はビジネス上「日本の大学受験」が前提のため、この相談には乗りにくいテーマ。
6. データの限界 ── ベスト10で見えていないこと
四谷大塚の公表データは極めて貴重ですが、いくつか前提を理解した上で活用する必要があります。
限界1:4月時点のデータである
第1回合不合判定テストは4月12日実施。これはまだ受験勉強の入り口で、志望校が確定していない家庭が多い段階のデータです。9月・10月の第3〜4回合不合では志望校登録が大きく動くのが通例。「4月時点で人気がある」≠「最終的な実倍率が高くなる」とは限りません。
限界2:「四谷大塚生」の動向である
合不合判定テストは四谷大塚系列の塾生が中心。SAPIX・日能研・早稲田アカデミー・グノーブルなどの生徒は別の母集団で別の動向を持っています。SAPIX生主流の最難関志向、日能研生主流の中堅幅広志向とはランキングがズレることがある点も意識を。
限界3:「第一志望者数」と「合格しやすさ」は別
第一志望者数が多い学校は競争が激しい一方、定員も多いので必ずしも倍率が極端に上がるわけではありません。本コラム冒頭の表に示した通り、市川(定員約320名)と明大世田谷(定員120名)では、同じ「ベスト10入り」でも実倍率の構造がまったく違います。「人気=合格しにくさ」と短絡しないことが重要です。
限界4:地殻変動を織り込めていない
4章で詳述した通り、2027年入試は明大世田谷共学化2年目・桐蔭学園共学化・法政千代田三番町系属校化が同時進行。過去データでは捉えきれない動きが起きるため、秋以降の合不合データの更新を必ず追ってください。
7. 何を持ち帰るか
🎯 スクールコンパスからのメッセージ
四谷大塚のベスト10併願パターンは、「中央値の家族がどう動いているか」を知る最高のデータです。ですが、それは出発点にすぎません。
本当に大切なのは、「我が子はどんな校風が好きで、どんな大学進学を目指し、どんな入試科目が得意で、6年間でどう成長してほしいか」を起点に、ベスト10とは違う独自の併願設計を組むこと。
定員データを併せて見れば「人気=合格困難」の単純構造ではないことが分かり、系列化・共学化の地殻変動を織り込めば「2026年データ=2027年予測」ではないことも分かります。そして、MARCH偏重を避ける家庭・附属を選ばない家庭・海外大進学家庭にとって、ベスト10をなぞる発想はむしろ機会損失です。
塾は合格実績ベースの提案を行うのが本業のため、これらの代替案には踏み込みません。だからこそ、家庭の側でこうした視点を持つことが、データに振り回されない受験戦略の出発点です。スクールコンパスは「正解の合格戦略」ではなく「我が子に合った人生設計」をご家庭が見つけるサポートを目指します。
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