台風はなぜ9月に多いの?──上陸がいちばん多い月と、そのしくみ
・台風が発生する数がいちばん多い月 → 8月(5.7個)。9月は5.0個
・日本に上陸する数がいちばん多い月 → 9月(1.0個)。8月は0.9個
・本土への接近も、9月の1.9個が年間で最多
つまり、たくさん生まれるのは8月なのに、日本にやってくるのは9月がいちばん多い。このずれが、このページのテーマです。
台風は、どうやってできるの?
台風のもとは、日本のはるか南の、あたたかい海です。海面の水温がおよそ26〜27℃以上ある海で生まれやすいとされています。
① あたたかい海の水が太陽の熱で蒸発し、目に見えない水蒸気になって空へのぼる
② 上空で冷やされた水蒸気が水のつぶにもどり、雲になる。このとき熱を出し、その熱でまわりの空気があたためられて、上へのぼる流れがさらに強まる
③ これがくり返されて積乱雲がたくさん集まり、ぐるぐる回る大きな渦になる。中心付近の最大風速が毎秒17.2m以上になったものが「台風」
つまり台風は、海からもらった水蒸気を燃料にして動く、大きな熱のエンジンのようなものです。だから陸に上がると、燃料になる水蒸気の補給が減り、地面とのまさつも加わって、だんだん弱まります。
家で確かめるなら、氷水を入れたコップがいちばんかんたんです。しばらくすると、コップの外側に水のつぶがつきます。空気の中の見えない水蒸気が冷やされて水にもどったもので、雲ができるのと同じしくみです。
近年、日本の近くの海面水温が高い状態が続くと、台風が弱まらずに日本へ近づくことがあります。また、あたたかい空気ほど水蒸気を多くふくめるため、激しい雨の回数も増えています。くわしくは 「なぜ最近こんな大雨が増えたのか」 にまとめています。
台風は、自分では進む道を決めていません
意外に思われるかもしれませんが、台風には「日本をめざす」という意思はありません。まわりの風に流されて動いています。
ここで大事なのが、日本の南の海の上にある太平洋高気圧です。夏の日本を暑くしている、あの高気圧です。
高気圧のまわりでは、時計回りに風が吹いています。台風は、この高気圧のふちを、ぐるっと回るように進みます。だから、高気圧がどこにあるかで、台風の通り道が決まります。
8月と9月で、何が変わるのか
| 太平洋高気圧 | 台風はどう進むか | |
|---|---|---|
| 8月 | 日本の上まで大きく張り出している | 高気圧にはばまれて、日本の西(中国大陸のほう)へ向かうか、その場で迷うように動く |
| 9月 | 弱まって、東へさがる | あいた場所を通って日本列島のほうへ北上できるようになる |
8月は台風がたくさん生まれます。ところが、太平洋高気圧という大きな壁が日本の上にどんと座っているので、台風はそこに入れません。中国大陸のほうへ行くか、上空の風が弱いために複雑な動きをすることが多くなります。
9月になると、その高気圧が弱まって東へさがります。すると、南の海で生まれた台風が、高気圧のふちに沿って放物線を描くように日本付近を通るようになります。だから、生まれる数は減っているのに、上陸する数は増えるのです。
もうひとつ:偏西風に乗ると、速くなる
日本の上空には、西から東へ吹く強い風があります。偏西風といいます。
9月ごろになると、この偏西風が少し南にさがってきて、北上してきた台風がこれに乗ります。すると台風は急に速度を上げて、日本付近を駆け抜けていきます。
ニュースで「速度を上げながら北東へ進んでいます」と言うのは、これです。速く進むということは、備える時間が短いということでもあります。9月の台風で注意がいるのは、この点です。
9月の台風が、雨が多くなりやすい理由
9月には、日本のあたりに秋雨前線が停滞していることがよくあります。
台風は、南のあたたかい海から湿った空気を大量に運んできます。その空気が秋雨前線にぶつかると、前線の活動が急に強まります。
その結果、台風本体がまだ遠くにあるのに、もう大雨が降っているということが起こります。「まだ来ていないから大丈夫」が通じないのが、9月の台風のこわいところです。
台風は「中心が来たときがいちばん危ない」とはかぎりません。
中心から離れた場所で、先に大雨になることがあります。
天気予報で見るのは、台風の位置だけでなく、自分の住んでいる場所の雨と風の予想です。
地方によって、来やすい時期がちがいます
気象庁の平年値では、9月の接近数はどの地方でも多くなりますが、少しずつ差があります。
| 地方 | 9月の接近数 | 年間 |
|---|---|---|
| 沖縄 | 1.9 | 7.7 |
| 九州南部・奄美 | 1.3 | 4.3 |
| 関東甲信 | 1.2 | 3.3 |
| 東海 | 1.2 | 3.5 |
| 近畿・中国 | 1.1 | 3.4/3.0 |
| 四国・北陸 | 1.0 | 3.3/2.8 |
| 東北 | 0.9 | 2.7 |
| 北海道 | 0.7 | 1.9 |
沖縄は7月・8月にも多く、年間を通して備えが必要な地域です。いっぽう本州は、9月に集中します。関東・東海では、9月の接近数が年間の3分の1以上を占めます。
数値は気象庁「台風の平年値」(1991〜2020年の30年平均)。接近とは、台風の中心が気象官署から300km以内に入った場合をいいます。
家でできる備え
台風は、地震とちがって数日前から来ることが分かります。これは大きな利点です。準備の時間があるということだからです。
学校が休みになるかどうか
台風のとき、学校が休みになるかどうかの決め方は、市区町村や学校によってちがいます。
多くの学校では、警報の種類(暴風警報・大雨警報など)と、それが出ている時刻を基準にしています。「午前7時の時点で暴風警報が出ていたら休校」といった形です。
この基準は、入学時や年度はじめに配られるプリントに書かれています。台風が近づいてから探すと見つかりません。いま、一度確認して、冷蔵庫などに貼っておくのがおすすめです。
調べ学習に使うなら
台風は、2学期の調べ学習に向いたテーマです。理由は3つあります。
- 数字が公開されている(気象庁のサイトに、1951年からの記録があります)
- 自分の住む地方のデータが取れる(地方別の接近数)
- 身の回りとつながる(休校の基準、ハザードマップ、家の備え)
おすすめのまとめ方は、「発生数が多い月」と「上陸数が多い月」がちがうことを、グラフで並べることです。このページの最初に出した数字を、棒グラフにするだけで、なぜという問いが生まれます。そこから太平洋高気圧の話につなげると、1枚の新聞になります。
書き方は、小学生新聞の書き方のページに、見出しの決め方から書いてあります。
よくある質問
Q. 台風は9月がいちばん多いのですか?
日本への上陸数でいえば、9月がいちばん多い月です。気象庁の平年値(1991年から2020年の30年平均)では、9月の上陸数は1.0個で、8月の0.9個を上回り年間で最多です。ただし台風が発生する数でいえば、8月の5.7個がいちばん多く、9月は5.0個です。発生が多い月と、上陸が多い月はずれています。
Q. なぜ発生が多い月と上陸が多い月がずれるのですか?
台風の進む道が、太平洋高気圧のふちに沿って決まるためです。8月は太平洋高気圧が日本の上まで大きく張り出しているため、台風は日本に入れず、西へ向かったり複雑な動きをしたりします。9月になると高気圧が弱まって東へさがるので、あいた場所を通って台風が日本列島のほうへ北上できるようになります。
Q. 9月の台風は、なぜ雨が多いのですか?
9月は秋雨前線が日本付近に停滞していることが多く、台風が南の海から運んでくる湿った空気が前線の活動を強めるためです。そのため、台風本体がまだ遠くにあるうちから大雨になることがあります。台風の位置だけでなく、自分の住んでいる場所の雨と風の予想を見ることが大切です。
Q. 台風はなぜ速く進むようになるのですか?
日本の上空には西から東へ吹く偏西風という強い風があります。9月ごろになるとこの偏西風が南にさがってきて、北上した台風がこれに乗るため、速度を上げて日本付近を通過します。進むのが速いということは、備える時間が短いということでもあります。
Q. 台風のとき、学校は休みになりますか?
決め方は市区町村や学校によって異なります。多くの学校では、暴風警報などが出ている時刻を基準にしていますが、基準そのものは学校ごとに違います。年度はじめに配られる文書に書かれていることが多いので、台風が近づく前に確認しておくことをおすすめします。
Q. 家では何を備えればよいですか?
台風は数日前から来ることが分かるので、順番に準備できます。2〜3日前に市区町村のハザードマップで自宅周辺の危険を確認し、前日に植木鉢や自転車など飛ぶものをしまい、お風呂に水をため、スマートフォンを充電しておきます。当日は外に出ず、用水路や川の様子を見に行かないことが大切です。
次にやること
📰 2026年9月の実例(小学生しんぶん 9月11日号から)
このページで説明した「9月の台風は、前線と組んで雨が長引きやすい」が、2026年9月に実際に起きました。台風24号から変わった熱帯低気圧が暖かく湿った空気を送りこみ、本州付近にとどまる秋雨前線の活動が活発になったためです。
9月8日、名古屋市千種区で1時間に104.5ミリの雨が観測され、観測史上1位を更新しました。降り始め(3日7時)から9日5時までの雨量は284.0ミリで、平年の9月1か月分(231.6ミリ)をすでに超えています。9月9日4時56分には、関東甲信・東海・近畿・四国に線状降水帯の半日前予測が発表されました。
雨の「1ミリ」は、1平方メートルあたり1リットルです。1時間104.5ミリは、1平方メートルに104.5リットルの水が1時間で落ちてくる量です。
📰 2026年9月の実例(小学生しんぶん 9月18日号から)
気象庁によると、9月16日21時、マリアナ諸島で大型の台風25号(ドゥージェン)が発生しました。18日ごろ小笠原諸島に近づき、19日からの5連休中に東日本へ接近するおそれがあるとされています(16日時点の予報。進路には幅があります)。名前は中国が提案した「つつじ」の意味です。
台風の「大型」は強風域(風速15m/s以上)の半径で決まる大きさの階級、「強い」「非常に強い」は最大風速で決まる強さの階級で、別の尺度です。予報図の予報円は中心が入る確率70%の範囲、暴風警戒域は暴風域に入るおそれがある範囲です。予報円が大きいのは台風が大きいからではなく、進路の予想にばらつきがあるためです。
📰 2026年9月の実例(小学生しんぶん 9月25日号から)
9月18日号で「5連休中に東日本へ接近するおそれ」と書いた台風25号は、関東の南の海上を北東へ進みました。このページの「9月の台風が、雨が多くなりやすい理由」のとおり、台風が近づく前から雨が降りつづき、19日からの総雨量は伊豆諸島で800ミリ、静岡県で500ミリ、千葉県で450ミリを超えました。21日12時40分には、東京都大島町にレベル5の土砂災害特別警報が出ています(国土交通省、21日18時30分時点の資料)。千葉県と神奈川県では亡くなった方や行方不明の方が出ました。
9月23日21時には、フィリピンの東で台風26号が発生しています(日本気象協会の解説による)。
9月25日号では3学年とも、この台風をきっかけに科学コーナーで「台風はどうやってできるのか」「なぜ最近は大雨の被害が多いのか」を取り上げました。
あわせて読みたい
出典:気象庁「台風の平年値」(1991〜2020年の30年平均)。発生数・接近数・上陸数および地方別の接近数は同ページによります。2026年8月13日確認。台風時の休校の基準は学校ごとに異なるため、学校からの文書をご確認ください。