小学生のスマホデビュー
買う前に決める7つと、渡す日の30分
クラスの半分は持っているらしい、と本人が言う。
本当かどうかは分からない。
持たせない理由も、持たせる理由も、どちらもうまく言葉にならない。
気がつくと、話し合いではなく交渉になっている。
「いつから」ではなく「何のために」から始める
持たせる目的を、家庭の言葉で1つ書いてください。留守番中の連絡、習い事の行き帰りの安全、共働きで帰宅時刻を共有したい、離れて暮らす祖父母と話す。どれも十分な理由です。
目的が1つ決まると、必要なものが絞れます。連絡が目的なら通話とメッセージだけあればよく、動画とゲームは目的外の機能になります。目的外の機能をどう扱うかを最初に決めておけば、あとから「そんなつもりじゃなかった」が起きません。
逆に、目的が「みんな持っているから」しか出てこない場合は、まだ決める段階ではありません。それは持たせない理由にはなりませんが、ルールを作れないという意味では致命的です。何のためかが決まっていないものに、きまりは作れません。
買う前に決める7つ
| # | 決めること |
|---|---|
| 1 | 目的。上のとおり、1つだけ。紙に書いて、渡す日に本人にも見せる。 |
| 2 | お金の出どころ。本体代・通信費を誰が払うのか。お小遣いから一部を出す設計にするかどうか。ここを曖昧にすると、あとで「誰のものか」の争いになります。 |
| 3 | 課金の扱い。アプリ内課金を一切できなくするのか、上限つきで許すのか、その都度相談にするのか。3択のどれかを先に決める。決済情報を端末に残すかどうかも同時に決めます。 |
| 4 | 置き場所と充電場所。子ども部屋に持ち込むかどうか。ここは、あとから変えるのがいちばん難しい項目です。最初は居間で充電にしておき、緩めるのは簡単、締めるのは困難、という順序で考えてください。 |
| 5 | 連絡してよい相手の範囲。家族だけか、クラスの友だちまでか。範囲を先に決めておくと、知らない人から連絡が来たときに「範囲の外だ」と本人が判断できます。 |
| 6 | 写真の扱い。自分の顔、友だちの顔、家の中、制服。撮ってよいもの・送ってよい相手を、具体的な場面で決めます。ここは抽象的なルールが最も効かない領域です。 |
| 7 | 見直す日。3か月後の日付をカレンダーに入れる。ルールは変えられるものだと最初に示しておくと、破る動機が減ります。 |
図 7項目の関係。目的が1つに決まると、まわりの6つは自動的に絞れます。順番を逆にすると、どれも決まりません。
契約のときに確認すること
18歳未満が使う端末について、フィルタリングに関する事業者の義務は法令で定められています。ただし、具体的にどのサービスが提供され、何が制限され、どうすれば解除できるのかは、事業者と端末によって異なります。販売店で必ず確認してください。
確認する項目は次のとおりです。
- フィルタリングのサービス名と、標準で何が制限されるか。
- アプリごとの制限ができるか。できる場合、設定は誰が変更できるか。
- 解除や設定変更に、保護者の操作やパスワードが必要か。子どもが自分で外せる状態になっていないか。
- アプリの追加に、保護者の承認を挟めるか。
- 利用時間の制限機能があるか。あるなら、時間帯で分けられるか。
- 紛失したときの位置の確認、遠隔でのロックや消去ができるか。手順は誰が実行するのか。
- 課金の上限設定と、決済方法の紐づけをどうするか。
渡す日の30分
買った日にそのまま手渡すと、ルールの話は「もらったあと」になります。この順番だと、ルールは制限としてしか受け取られません。渡す前に30分だけ時間を取ってください。
| 順番 | やること |
|---|---|
| はじめの10分 | 目的(決めた1つ)を本人に伝える。「何のために買ったか」を先に共有します。ルールの話はまだしません。 |
| 次の10分 | 7項目を一緒に紙に書く。親が読み上げて子どもが書くと、内容が本人の中に残ります。書き終えたら両方がサインします。 |
| 最後の10分 | 「こまったときに言うこと」だけを、時間をかけて話す。次の節の台詞をそのまま使ってください。ここが30分の本体です。 |
取り上げを、罰にしない
これがこのページでいちばん伝えたいことです。
取り上げが罰として機能している家庭では、トラブルが起きたときに子どもは隠します。知らない人から連絡が来た、変な画面が出た、友だちとのやりとりでもめた、間違えて課金してしまった。こうしたことを言えば取り上げられる、と学習しているからです。結果として、いちばん早く知らせてほしい出来事が、いちばん遅く届きます。
ですから、2つを切り分けて決めておきます。時間や場所のきまりを破ったときの対応と、こまったことを報告してきたときの対応です。前者は決めた運用どおりでよい。後者は、何を報告してきても叱らないと先に約束する。この約束は親の側の約束であり、渡す日に口に出して伝える必要があります。
知らない人から連絡が来た、変な画面が出た、間違えてお金を払ってしまった、友だちとうまくいかなくなった。どれでもです。
言ってきたことで、おこったり取り上げたりはしません。これは約束します。
かわりに、時間や置き場所のきまりは守ってください。それは別の話として決めてあります。
最初の1か月に、たいてい起きること
- 通知が止まらない。最初の週に、通知の設定を一緒に見直します。ここを放置すると、集中が切れる原因が端末そのものではなく通知になります。
- 寝る前に手放せない。置き場所を居間にしていれば構造的に起きません。子ども部屋にしてしまった場合は、ここで戻すのは難しくなります。だから4番を先に決めます。
- 友だちのグループに入る話が出る。5番で決めた範囲に照らして判断します。その場で決めず、一度持ち帰る運用にしておくと親子ともに楽です。
- 3か月目に、決めたルールが実態と合わなくなる。正常です。7番の見直し日は、そのために設定しています。
7つのうち、1番の「目的」の1行だけを書く。紙でも、スマホのメモでもかまいません。
残りの6つは、目的が決まってからのほうが速く決まります。今日は買うかどうかを決めなくて構いません。目的の1行があるだけで、次の話し合いが交渉ではなくなります。
よくある質問
Q. 何年生から持たせるべきですか。
A. 学年で決まる正解はありません。目的が1つ言えるかどうかで判断してください。
Q. フィルタリングは必ず必要ですか。
A. 18歳未満が使う端末について、事業者の義務は法令で定められています。具体的な内容と設定方法は事業者・端末で異なるため、契約時にご確認ください。
Q. キッズケータイと悩んでいます。
A. 目的が連絡だけなら、目的外の機能が少ないほうが運用は簡単です。ただし本人が学年とともに不満を持つ可能性はあります。上の1番と7番(目的と見直し日)を決めていれば、途中で切り替える判断もしやすくなります。
Q. おすすめの機種を教えてください。
A. 推奨はしていません。確認する項目のリストのほうが、長く役に立つと考えています。