中学受験、親がつらい日に読む1通
10月から2月まで・15の場面と、塾の言葉の訳し方
いまの状況に近いものを1つえらんでください。その日のための1通が読めます。どの手紙も、気持ちの置き場所と、今日やることを1つだけ、子どもにかける一言でできています。答えをくれる手紙ではなく、今日をなんとか終えるための手紙です。2月1日まで、何度でも戻ってきてください。
心配しなくていいんだよ
受験の秋から2月までに、親が大きくゆれる日は、だいたい3つに分かれます。どれも、たくさんの家庭が通る道です。そして、どれにも「心配しなくていい理由」があります。それぞれの手紙の下にある「どうして心配しなくていいの?」を開くと、理由が読めます。
📖 塾の言葉を、家の言葉に訳す / 📝 日曜の夜の「今週の良かったこと3つ」
模試の結果が悪かった日(中学受験の模試の結果が悪いとき)
点数や偏差値の数字を見た瞬間、胸がきゅっとなるのは、それだけ本気で向き合ってきたからです。模試は、本番のための「地図」です。いま分かったのは、本番までに直せる場所がどこか、ということです。
今日やること(1つだけ) 答案を1枚だけ一緒に開いて、「落とした問題のうち、次は取れそうなもの」を3つだけ選ぶ。全部を見直そうとしないこと。
子どもにかける一言 「ここ、次は取れそうだね」
しないほうがいいこと 結果の数字だけで、その日の会話を終えること。偏差値を、家族や子どもの前で何度も口にすること。
どうして心配しなくていいの?
判定は「運命」ではなく「確率」です。合格可能性80%の線の上にいても、5人に1人は届きません。下にいても届く子がいます。判定は「この時期に同じ点数だった人たちが、過去にどうなったか」を示す数字で、お子さんの結果を決めるものではありません。
1回の模試は、その日の写真です。6年生の模試は年に何度もあり、回ごとに上下するのは普通です。1回だけで流れを決めなくて大丈夫です。
あなたが落ち着くことが、いちばん効く声かけです。子どもは、親の「頭の良さについての考え」は読み取れないのに、「失敗をどう受け止めるか」はよく見ていることが分かっています。今日あなたが「ここから直せる」と受け止めれば、それがそのまま子どもに伝わります。
崩れたのは、本気だったからです。親が自分の価値を子どもの成績に重ねるほど、悪い結果の日に心がゆれやすいことも分かっています。誰にでも起きる心の動きなので、自分を責めなくていいんです。
根拠 模試各社の合格可能性(80%・50%)の考え方、Haimovitz & Dweck(2016, Psychological Science)、Ng ほか(2019, Child Development)
過去問が解けない日
過去問は、その学校が「本番で」解いてほしい問題です。今の時期に届いていない問題があるのは、「いま直せる場所」が見えた、ということでもあります。大事なのは点数より、何が分かれば取れたのか、です。
今日やること(1つだけ) 解けなかった問題の中から、「解説を読めば分かったもの」に印をつける。印が多ければ、伸びしろがあるということです。
子どもにかける一言 「これ、解説を読んだら分かった?」
しないほうがいいこと 合格者の最低点と、今日の点数だけを並べて比べること。
子どもが泣いた日
泣くのは、あきらめたからではなく、あきらめたくないからのこともあります。まずは、泣きやませるより先に、そばにいること。言葉は、落ち着いてからで間に合います。
今日やること(1つだけ) その日の勉強は、予定より早めに切り上げる。温かい飲みものを1杯。
子どもにかける一言 「ここまで、ほんとうによくやってるよ」
しないほうがいいこと 「泣いても点数は上がらない」のような、正しいけれど今は届かない言葉。
自分が怒ってしまった日
怒ってしまったあとに、こうして自分を責めているのは、子どものことを大事に思っているからです。直前期は、親も子も余裕がなくなる時期です。大切なのは、そのあとです。
今日やること(1つだけ) 寝る前に、一言だけあやまる。「さっきは言いすぎた。あなたががんばってるのは知ってる」。理由の説明は短くていい。
子どもにかける一言 「さっきは、ごめんね」
しないほうがいいこと あやまるときに「でも、あなたも」と付け足すこと。
どうして心配しなくていいの?
教え役を降りても、伸びは止まりません。親が不安なまま宿題を何度も手伝うと、その不安が子どもに移りやすい一方、手伝いが少ない家庭では、親の不安は子どもの成績と関係がなかったという研究があります。教えるのは塾にまかせて大丈夫です。
あやまれば、ちゃんと取り返せます。大事なのは怒らないことより、そのあとです。親子の会話が保たれている家庭では、勉強の負担が大きくても子どもが荒れにくいことが、国内の調査でも指摘されています。
根拠 Maloney ほか(2015, Psychological Science)、国内の中学受験家庭の調査(2025年)
周りと比べてしまった日
SNSや、ほかの家庭の話が耳に入ると、自分の家だけが遅れているように感じます。でも、見えているのは、ほかの家庭の「いちばん調子のいい日」だけかもしれません。比べる相手は、1か月前のわが子です。
今日やること(1つだけ) 1か月前にできなかったことで、今できるようになったことを1つ、紙に書き出す。
子どもにかける一言 「1か月前は、これできなかったよね」
しないほうがいいこと SNSや掲示板の合格情報を、夜に見ること。今夜は画面を閉じて大丈夫です。
子どもがやる気をなくした日
毎日同じ机に向かい続けると、大人でも手が止まる日があります。やる気は、なくなったのではなく、つかれて見えなくなっていることもあります。
今日やること(1つだけ) 今日は、いちばん得意な教科の、いちばん解けるプリントを1枚だけ。「できた」で1日を終える。
子どもにかける一言 「今日は、これ1枚でおしまい」
しないほうがいいこと 「このままじゃ落ちる」のような、こわさで動かそうとする言葉。
志望校を変えるか迷う日
迷うのは、子どもの将来を真剣に考えているからです。決める材料は、偏差値の数字だけではありません。その学校で過ごす6年間を、子どもが思い浮かべられるかどうかも、大切な材料です。
今日やること(1つだけ) 学校の説明会でもらった資料や、学校ページを見て、「行きたい理由」を子どもに1つだけ聞く。出願と手続きの日程は、段取り表に書き出す。
子どもにかける一言 「この学校の、どんなところがいい?」
しないほうがいいこと 親だけで決めて、あとから子どもに伝えること。
眠れない夜
夜は、不安が大きく見える時間です。朝になると、同じことでも少し小さく見えるものです。今夜は、答えを出さなくていい夜にしてください。
今日やること(1つだけ) 心配なことを紙に3つだけ書いて、「明日の朝、考える」と書き添えて、今日はおしまいにする。
子どもにかける一言 (子どもには)「おやすみ。明日もいっしょにがんばろう」
しないほうがいいこと 夜中に、受験情報や合格実績を調べ続けること。
「もうやめたい」と言った日(子どもが中学受験をやめたいと言う)
子どもの側で起きていること 「やめたい」は、受験そのものより、「今日がつらい」「このまま続く気がする」を言葉にしたものかもしれません。
この言葉が出た夜に、やめるか続けるかを決めなくて大丈夫です。言われたことをこなすだけの毎日が続くと、自分で動いている感じが消えていきます。小さなことでも自分で選べると、やる気は戻りやすくなります。
明日の一手(1つだけ) 「いちばんいやなのは何?」と聞いて、出てきたことを1つだけ紙に書く。そのうえで、明日のことを2つか3つの中から本人に選んでもらう(先にやる科目、休むのは今夜か明日の夜か、など)。やめるかどうかは、週末にもう一度話してから。
言い方の例 「やめたいって思うくらい、つらいんだね。何がいちばんいや?」
言いがちだけど逆効果 「ここまでお金をかけたのに」「あなたが行きたいって言ったんでしょ」。
「中学受験に向いてない子なのでは」と思った日
成績が上がらない、机に向かわない、すぐ泣く。そんな日が続くと、「この子は向いていないのでは」と考えてしまいますよね。けれど、成績の上下や、何日かやる気が落ちることは、受験をしている子のほとんどに起きます。それだけで向き不向きは決まりません。
見直したほうがいいサインは、別のところにあります。(1)睡眠が毎日けずられている、(2)おなかや頭の痛み、眠れないなどの体の様子が2週間以上続いている、(3)「なぜ受けるのか」を本人が自分の言葉で1つも言えない。この3つが重なるときは、やめるかどうかの前に、受験の形を変えることを考えます。受ける学校の数をしぼる、塾の日数を減らす、公立中高一貫や高校受験に道を変える。どれも「失敗」ではなく、子どもに合う形を選び直すことです。
言い方の例 「中学受験で、いちばん楽しいのはどんなとき?いちばんいやなのは?」 答えを聞いてから、形を一緒に考えます。自分で選んだ道だと感じられるほど、子どもは続けやすくなることが、動機づけの研究(自己決定理論、Ryan・Deci 2000年)でも示されています。
言いがちだけど逆効果 「向いてないなら、やめれば?」。試す言い方は、子どもには「見放された」と聞こえます。
親のほうが「もうやめさせたい」と思った日(親の期待とプレッシャー)
毎晩、同じことでぶつかる。怒鳴ったあとの自分がいやになる。この受験が、あの子のためなのか、自分のためなのか、分からなくなった。
親が本気であるほど、模試の点が、自分への点のように見えてくることがあります。そう感じた日は、やめるか続けるかの前に、何を残したかったのかに戻ります。それに、道は「やめる」と「このまま続ける」の2つだけではありません。受ける学校の組み合わせを変える、塾の日を減らす、という道もあります。
今日やること(1つだけ) 紙に2行だけ書く。「この受験で、あの子に残ってほしいもの」と「それは、いまの毎日で残っているか」。決めるのは、週末に子どもと一緒に。
子どもにかける一言 「最近、怒ってばかりでごめん。どうしたいか、一緒に考えたい」
しないほうがいいこと 夜中にひとりで決めて、翌朝いきなり子どもに伝えること。怒ってしまう夜のことは つい怒ってしまう に、だれにも言えない気持ちは トップの聞く欄 に置いていけます。
参考 小さなことでも自分で選べるとやる気が戻りやすいことは、選ぶことと意欲の関係を41の研究でまとめた分析で、2〜4回の小さな選択で、大人より子どもで効果が大きかったと報告されています(Patall・Cooper・Robinson、米国心理学会 Psychological Bulletin、2008年)。
塾で「このままだと厳しい」と言われた帰り道
子どもの側で起きていること 先生の言葉を、子どもは「もう無理」と受け取っていることがあります。親の顔色も、よく見ています。
塾の「厳しい」は、多くの場合「いまのやり方のままだと届かないので、何かを変えましょう」という意味です(下の「塾の言葉を訳す」も見てください)。帰り道は、結論を出す場所ではありません。
明日の一手(1つだけ) 次の面談で「何を変えれば届きますか」「併願はどう組みますか」の2つを聞く、と親の手帳に書く。
言い方の例 「先生は、変えるところを教えてくれたんだね。いっしょに聞いてみよう」
言いがちだけど逆効果 車の中で、その日のうちに志望校の話を始めること。
子どもが友だちと成績を比べて落ちこんだ日
子どもの側で起きていること 同じ塾の友だちのクラスや点数は、子どもにとっていちばん身近な「ものさし」です。
比べてしまうのは自然なことです。ただ、比べる相手を「友だち」から「先月の自分」に移せると、落ちこみが「次にやること」に変わります。
明日の一手(1つだけ) 先月のテストを1枚出して、「前はできなかったのに、今はできる問題」を1問だけいっしょに探す。
言い方の例 「先月のあなたと比べたら、ここが増えてるよ」
言いがちだけど逆効果 「〇〇ちゃんはできてるのに」。親から友だちの名前を出すこと。
運動会・修学旅行と勉強がぶつかる週
子どもの側で起きていること 学校行事は、6年生にとって最後の思い出でもあります。「勉強しなきゃ」と「楽しみたい」の間で、子ども自身がいちばんゆれています。
行事の週に勉強を減らしても、それだけで結果が決まることはありません。行事を楽しめた子のほうが、翌週に集中できることもあります(編集部の考え)。
明日の一手(1つだけ) 行事の週だけの「短い予定表」を作る。やるのは計算と漢字の2つだけ、など、減らす所を先に決める。
言い方の例 「今週は楽しんでおいで。そのかわり、計算だけは毎日やろう」
言いがちだけど逆効果 「行事に出る余裕なんてないでしょ」。
スマホやゲームから離れられない夜
子どもの側で起きていること 受験期のゲームや動画は、息ぬきであると同時に、しんどさから離れる場所になっていることがあります。
取り上げると、別のところで同じことが起きがちです。時間を決めるなら、子どもと一緒に決めるほうが守られます。
明日の一手(1つだけ) 「何時まで」「どこで(リビングだけ、など)」を子どもに決めてもらい、紙に書いて冷蔵庫にはる。守れた日は何も言わない。
言い方の例 「息ぬきは大事。何時までにする?」
言いがちだけど逆効果 その場で黙って電源を切る・取り上げる。
説明会や文化祭で、行きたい学校がはっきりした日
子どもの側で起きていること 「ここに行きたい」が見えた日は、子どもの中で勉強の意味が変わる日です。
この気持ちは、次の模試の結果より長く続く力になります。今日のうちに、形に残しておくのがおすすめです。
明日の一手(1つだけ) 「行きたい理由」を子どもに3つ言ってもらい、手帳か付せんに書いて机の前にはる。
言い方の例 「どこがいちばんよかった?」
言いがちだけど逆効果 「じゃあ、もっと勉強しないとね」と、すぐ勉強の話につなげること。
親のほうが疲れてしまった日(中学受験で親が疲れた・ストレスがたまったとき)
何もしていないのに涙が出る。もう何をがんばればいいのか分からない。そう感じるのは、手を抜いたからでも、愛情が足りないからでもありません。受験の秋は、親の負担だけが増えて、「報われた」と感じる場面が少なくなる時期です。
今日やること(1つだけ) 今週の家事か用事を1つだけ、やめるか誰かに頼む。夜は、この下の「今週の良かったこと3つ」を書いて終わりにする。
子どもにかける一言 「今日はお母さん(お父さん)も早く寝るね。いっしょに休もう」
しないほうがいいこと 疲れた自分を「弱い」と責めること。
どうして心配しなくていいの?
疲れたのは、負担と報われる感覚の釣り合いが崩れているだけです。子育ての負担が長く続き、報われる場面が少ないと、誰でも燃え尽きに近づくことが分かっています。
戻れることも分かっています。母親を対象にした試験では、支えを受けた人の疲れが減り、半年後もその効果が続いていました。手当てをすれば、自分で立て直せるようになるということです。
報われないように感じるのには理由があります。良い結果は親の気持ちをあまり上げず、悪い結果だけが下げやすいことが研究で示されています。だから「良かったこと」を意識して数えることに意味があります。
あなただけではありません。受験を終えた保護者への調査でも、8割を超える人が受験期に悩みを抱えていたと答えています。
根拠 Mikolajczak & Roskam の親の燃え尽きの研究、Piotrowski ほか(オンライン集団支援の無作為化比較試験)、Ng ほか(2019, Child Development)
眠れない・食べられない日が2週間ほど続くときは、ひとりで抱えずに相談してください。相談できる窓口 →
疲れて朝起きられない日が続くとき
子どもの側で起きていること 秋は、学校と塾と模試が重なり、体の疲れが表に出やすい時期です。
朝起きられない日が続くのは、気持ちの問題だけとは限りません。まず生活の中で減らせるものを探し、それでも続くときは、かかりつけの医師や学校に相談してください(ここでは医学的な判断はしません)。
明日の一手(1つだけ) 夜の勉強を30分早く切り上げる日を、今週2日だけ作る。
言い方の例 「今日は早く寝よう。明日の朝の10分で取り返せるよ」
言いがちだけど逆効果 「気合いが足りない」。
受験期に、子どもと喧嘩しないほうがいい理由(中学受験の親子喧嘩)
ここでいう喧嘩は、意見がちがうことではありません。大きな声で責める、「だからダメなんだ」と人格まで言う、「もう知らない」と突き放す。こうした強い言葉のぶつかり合いのことです。受験期にこれを避けたほうがいい理由は、気持ちの問題だけではありません。
1. 強い言葉で叱っても、勉強も行動も良くならず、むしろ悪くなります。約1,000の家庭を追った研究では、13歳のときに親から強い言葉で叱られていた子は、その後の1年で気分の落ちこみや問題行動が増えていました。その影響の大きさは、体罰を調べた研究と同じくらいだったと報告されています。
2. 「愛しているから、分かってくれる」は通じません。同じ研究で、ふだんの親の温かさや愛情があっても、強い言葉の影響は小さくならなかったことが分かっています。ときどきでも同じです。ふだん仲がいい家庭ほど、ここは見落としやすいところです。
3. 喧嘩のあとは、覚えたことを思い出しにくくなります。強いストレスを受けると体からホルモンが出て、その間は覚えたことを思い出す力が落ちることが、人を対象にした実験で確かめられています。喧嘩のすぐあとに机に向かわせても、頭に入りにくいのはこのためです。入試の前の日や当日の朝は、特に気をつけたいところです。
4. 子どもは、親が失敗をどう受け止めるかを見ています。点数をめぐって責めると、子どもは「失敗はこわいもの」「自分の力は変わらない」と受け取りやすくなります。逆に「ここから直せる」と受け止める親の子は、力は伸ばせると考えやすいことが分かっています。
5. 受験は2月で終わりますが、親子の関係はそのあとも続きます。中学からの6年間、子どもが困ったときに最初に話す相手でいられるかどうかは、この時期の言葉で決まることがあります(ここは編集部の考えです)。
ぶつかりそうになったら
・その場を5分だけ離れる。水を1杯飲んでから戻る。
・その日の勉強は早めに切り上げる。今日は覚えにくい日なので、取り返すのは明日でいい。
・教える役は塾に返す。家では丸つけだけ、タイマー係だけ、のように役を1つにする。
・言いすぎたら、寝る前に短くあやまる(自分が怒ってしまった日の手紙)。
もう喧嘩してしまった方へ。それで全部が決まるわけではありません。あやまって、また会話を始められれば大丈夫です。いま、ここを読んでいること自体が、お子さんを大事にしている何よりのしるしです。
根拠 Wang & Kenny(2014, Child Development, 976家庭)、de Quervain ほか(2000, Nature Neuroscience)、Haimovitz & Dweck(2016, Psychological Science)
家で「教える役」を手放してよい理由
毎晩の丸つけや解き直しを、親が全部見ている家庭は多いと思います。けれど、疲れているときほど、その時間は親子どちらにとっても苦しくなりがちです。
なぜ:アメリカで小学1・2年生とその親を1年追った研究では、算数に不安を感じている親が宿題をよく手伝うほど、子どもの算数の伸びが小さく、子ども自身の算数への不安も強くなっていました。手伝う回数が少ない家庭では、親の不安と子どもの成績のあいだに関係は見られませんでした。教え方のうまさより、そばで感じる焦りが伝わる、ということです。
今週やること(1つ):「見る・教える」のうち1つだけを手放します。丸つけは子どもにまかせる、塾の宿題の質問は塾の先生に回す、成績表を見るのは週1回にする、のどれか1つです。
そのまま言える言葉:「最近、口を出しすぎてたね。今週は丸つけは任せるよ。困ったら呼んでね」。
2週間後の見分け方:家で受験の話をしない時間が、親子のどちらにとっても少し楽に感じられたら、合っています。
📖 塾の言葉を、家の言葉に訳す
塾の先生の言葉は、短い分だけ、家で重く受け取ってしまうことがあります。よく使われる言葉を、ふつうの言葉と「次に親がすること」に訳しました。言葉の使い方は塾や先生によってちがうので、迷ったら先生に「それは、具体的にはどういうことですか」と聞いてください。以下は編集部の見解です。
| 塾の言葉 | 家の言葉に訳すと | 次に親がすること |
|---|---|---|
| チャレンジ校 | いまの模試の結果だけで見ると、合格の可能性はまだ高くない学校。「行ってはいけない学校」ではありません。 | その学校を受けるなら、同じ入試日程の中で「実力相応校」「安全校」をどう組むかを、塾の先生といっしょに決める。 |
| 実力相応校 | いまの力で、合格の可能性がおよそ半分前後と見られている学校。 | 過去問を解いて、合格者の最低点との距離を家で数字で確かめる(最低点は過去問集に載っています)。 |
| 安全校(おさえの学校) | いまの力なら、合格の可能性が高いと見られている学校。 | 「合格したら本当に通いたいか」を、子どもと一緒に確かめておく。行きたくない学校は、安全校になりません。 |
| 「併願を考えましょう」 | 第一志望をやめましょう、という意味ではなく、「受ける学校の組み合わせを先に決めておきましょう」という意味で使われることのある言葉です。 | 入試の日付と合格発表・手続きの締切を1枚の表に並べる(下の「わが家の入試カレンダー」で作れます)。 |
| 「このままだと厳しい」 | 「いまのやり方を続けるだけでは届かないので、何かを変えましょう」という意味で使われることのある言葉です。 | 次の面談で「何を変えれば届きますか」を具体的に聞く。「無理ですか」とは聞かない。 |
| 「伸びしろがある」 | まだ点に結びついていない分野が残っている、という意味で使われることのある言葉です。ほめ言葉にも、課題の指摘にも使われます。 | 「伸びしろは、どの単元ですか」と、名前を1つ聞く。 |
| 志望校判定(80%・50%・20%など) | 模試の結果から見た「合格の可能性の目安」です。どの数字で線を引くかは、模試の主催ごとにちがいます。1回の判定で決まるものではありません。 | 判定の文字より先に、同じ模試の「前の回」と比べて、どの教科が上がり下がりしたかを見る。 |
判定の読み方は 中学受験の後期模試2026、入試の日付の並べ方は わが家の入試カレンダー にくわしく書いています。
📝 日曜の夜の「今週の良かったこと3つ」
日曜の夜に5分だけ、今週の良かったことを3つ書きます。点数のことでなくてかまいません(「毎朝自分で起きた」「弟にやさしかった」も立派な1つです)。書いたものはこの端末に週ごとにたまり、2月に「受験の記録」として1枚の手紙の形で印刷できます。
今週の良かったこと
記録はこの端末に自動で残ります(名前やメールの登録はいりません)。
12月1日からの、毎日の1通
前受けの学校で、ご縁がなかった朝
子どもの側で起きていること 「本番もだめかもしれない」と、1回の結果を全部に広げて受け取っていることがあります。
前受けは、会場の空気や時間の使い方を体で知るための回でもあります。結果の数字より、どの教科のどこで時間が足りなかったかのほうが、本番に役に立ちます。不安が大きいときは、わが家の現在地で、過去問の得点と合格者の最低点の距離を、事実として一度書き出してください。
明日の一手(1つだけ) 答案や問題を見て、「時間が足りなかった大問」を1つだけ子どもと確かめる。本番までの練習は、その1つにしぼる。
言い方の例 「今日わかったことが1つあるね。本番までにそこだけ直そう」
言いがちだけど逆効果 「ここに落ちるなら本命は無理」。前受けの結果で、志望校の話を始めること。
2月1日の前の夜
子どもの側で起きていること 緊張して眠れないのは、ふつうのことです。子どもは親の落ち着きを見て、自分の状態を決めています。
前の夜にできることは、ほとんど終わっています。新しい問題を解くより、持ち物と朝の段取りを確かめて、いつもの時間に布団に入るほうが、翌朝の頭が動きます。当日の段取りは「もしも」の段取り表に書いたとおりに。
明日の一手(1つだけ) 受験票・えんぴつ・時計・上着を、玄関にならべて一緒に指差しで確かめる。そのあとは勉強の話をしない。
言い方の例 「ここまで来たね。あしたは、いつもどおりでいいよ」
言いがちだけど逆効果 「絶対に受かってね」「今夜もう1回だけ復習しよう」。
合格と不合格が、同じ日にとどいた夜
子どもの側で起きていること うれしい気持ちと、くやしい気持ちが、同じ夜にいっしょに来ます。どちらを見せていいか、子どもは親の顔で決めます。
合格は合格として、先に言葉にしてください。不合格の学校のことは、その夜に理由を探さなくてかまいません。翌日以降の受験が残っているときは、合格発表の日にかける言葉と段取り表にしたがって、次の1校の準備だけをします。
明日の一手(1つだけ) 合格した学校の手続きの締切を、段取り表に書き写す。残りの受験があれば、その朝の段取りだけ確かめる。
言い方の例 「受かったね。ここまでがんばったからだよ」
言いがちだけど逆効果 「でも、あっちは落ちたね」と、同じ一言の中で並べること。
進学先を決める週
子どもの側で起きていること 受かった学校の中から選ぶのは、子どもにとって初めての大きな決定です。「親の顔を見て答える」ことが起きやすい時期です。
手続きの締切と入学金の期限は、学校ごとにちがいます(学校ページと募集要項で確認)。決める材料は、説明会や文化祭で見たこと、通学の時間、子どもが6年間を思い浮かべられるかどうかです。
明日の一手(1つだけ) 行った記録(説明会・文化祭)を印刷して、学校ごとに「いいと思ったこと」を子どもに1つずつ言ってもらう。
言い方の例 「どっちに行っても応援するよ。いいところを1つずつ教えて」
言いがちだけど逆効果 親が先に「こっちがいいと思う」と言ってから、子どもに聞くこと。
受験が終わった翌週
子どもの側で起きていること 緊張が切れて、気持ちが急に落ちたり、何もしたくなくなったりすることがあります。受かった子にも、思うようにいかなかった子にも起きます。
しばらくは、寝る・遊ぶ・友だちと会うことを優先してかまいません。塾の荷物の片づけは、子どもが自分でやりたくなったときに。
明日の一手(1つだけ) 「受験のあいだ、がまんしていたこと」を子どもに3つ聞いて、1つをこの週末にやる。
言い方の例 「本当によくがんばったね。今週は何がしたい?」
言いがちだけど逆効果 すぐに「中学の勉強の先取り」を始めること。
受験をしない家庭の、12〜2月の1枚
クラスの何人かが受験をする年は、受験しない子にも空気が伝わります。「うちはしないの?」と聞かれたり、休み時間の話題に入れなかったりすることがあります。
やること(1つだけ) 3学期のうちに、この1年でできるようになったことを1つ、子どもと紙に書く。比べる相手は、クラスの友だちではなく、1年前の自分です。
言い方の例 「受験する子も、しない子も、それぞれの道をがんばってるんだよ」
言いがちだけど逆効果 受験する家庭のうわさ話を、子どもの前ですること。
毎日の1通
これまでの1通を読む
当日にあわてないために
「もしも2月1日がだめだったら」「発熱したら」「大雪だったら」。その場で決めることを減らすと、親は落ち着いて子どもの顔を見られます。→ 中学受験「もしも」の段取り表
この手紙は、スクールコンパス編集部が書いたものです。体験談ではありません。医学的な診断や治療の代わりにはなりません。
手を動かしながら子どもへの言葉を考えたい日は、合格祈願のお守りを手作りする(型紙と、中に入れる言葉)もどうぞ。
受けた学校すべての結果が思うようにいかなかったときは、中学受験で、すべての学校とご縁がなかったあとで(その日の夜・2月中にすること・公立中学での3年間)へ。
前の日・当日の朝・LINEで送る言葉は 受験生への応援メッセージ(プレッシャーにならない一言) にあります。
よくある質問
子どもが「中学受験をやめたい」と言ったら、どうすればいいですか?
その場でやめるかどうかを決めず、「何がいちばんいや?」と聞いて、出てきたことを1つだけ紙に書きます。明日のことを2つか3つの中から本人に選んでもらい、やめるかどうかは週末にもう一度話します。「ここまでお金をかけたのに」は逆効果です。
中学受験で、親がストレスで疲れてしまいました。
親が疲れるのは、それだけ毎日向き合っているからです。まず親の睡眠を守り、1週間のうち1日は受験の話をしない時間をつくります。気持ちを置いていける場所として、このページの「受験の記録」や、スクールコンパスの子育ての相談室も使えます。
過去問の点数が取れないとき、どうすればいいですか?
過去問は、合格者の最低点との距離を測る道具で、最初から取れる子は多くありません。点数より、時間が足りなかった問題と、解き方を知っていたのに落とした問題を分けて記録します。落とした問題が減っていけば、点数はあとからついてきます。
中学受験に向いてない子の特徴はありますか?
成績の上下や、何日かやる気が落ちることだけでは決まりません。見直したほうがいいのは、睡眠が毎日けずられている、体の不調が2週間以上続く、受ける理由を本人が言えない、が重なるときです。そのときは、学校の数をしぼる、塾の日数を減らすなど、受験の形を変えることから考えます。
中学受験で、親ができることは何ですか?
教えることより、子どもの体と気持ちの土台を守ることです。睡眠と食事を整え、予定を1まいにまとめ、子どもの前で判定や偏差値の話をしないこと。つらい日に、子どもの気持ちを先に聞くことです。