QRコードは、なぜ白黒のもようだけで読めるの?
レジの前で、しわの寄った紙にスマホを向ける。
ななめから向けても、少しよごれていても、ピッと鳴る。
あの白黒のもようには、絵も数字も書かれていないのに。
あのもようの、どこを読んでいるんだろう。
この読み物は、お子さんと並んで読む作りです。説明する準備はいりません。読み終わるころには、家の中のQRコードを指さして「あ、あれだ」と言えるようになります。
まず1分
白と黒は、「ある・なし」のあいず
だから、紙の上で「ある・なし」を見せるには、いちばん見分けやすい2色があればいい。それが白と黒です。
カメラは色をていねいに見ているのではなく、「明るい・暗い」だけを見ています。だから、うすぐらい店の中でも、紙がしわしわでも、読めます。
ますめを1つずつ、ぬる・ぬらない。それだけで手紙が書ける、と考えてみてください。QRコードは、そのぬり絵をコンピュータどうしでやりとりしているだけのものです。ここまでで、いちばん大きな謎は解けています。
しくみ(3分)
3つの大きな四角が、してくれていること
QRコードには、3つの角に大きな四角が入っています。あの3つだけは、データではありません。「ここにコードがあります」「こちらが上です」と知らせるための印です。切り出しシンボルといいます。
図 角にある3つの大きな四角が切り出しシンボル。この3点が見つかった時点で、コードの位置・大きさ・かたむきが決まる。残りのますめがデータの部分。
この3つがあるおかげで、読み取る側はコードをまっすぐに構えてもらう必要がありません。ななめでも、上下が逆でも、3点の位置関係から向きを計算して、頭の中でまっすぐに直してから読みます。スマホをかざす角度をあまり気にしなくていいのは、このためです。
もうひとつ、面白い決まりがあります。切り出しシンボルを線でまっすぐ横切ると、白黒の幅が「1対1対3対1対1」になります。どの方向から横切っても、この比率になるように作られています。読み取る側は、この比率を探すだけで印を見つけられます。
図 切り出しシンボルを線で横切ると、黒・白・黒・白・黒の幅が1対1対3対1対1になる。読み取り機は、この比率を手がかりに印を探している。
まだある謎
よごれても読めるのは、なぜ?
QRコードには、元のデータを復元するための情報が、はじめから余分に書き込まれています。これを誤り訂正といいます。少し欠けても、残っている部分から元の内容を組み立て直せるようになっているのです。
デンソーウェーブの公表によると、この復元の能力は4段階から選べます。全体に対する復元率の目安は、低いものでおよそ7パーセント、高いものでおよそ30パーセントです。工場のように汚れやすい場所では高いほうを、汚れにくくてデータが多い場合は低いほうを選ぶ、という使い分けをします。ただし、汚れや破損の状況によっては復元できない場合もあります。
ここで、家の中で確かめられることがあります。QRコードの真ん中に、お店のマークやイラストが入っているものを見たことはないでしょうか。あれは、誤り訂正の余力の範囲で「隠しても読める」を使っています。隠しすぎれば、当然読めなくなります。
https://www.qrcode.com/about/error_correction.html
おとなの一歩先
あの四角の形は、調べ上げて決まった
ここから先は、大人が読んで面白いところです。先にひとりで読んでおいても構いません。
切り出しシンボルが「四角」になっているのには、理由があります。開発したデンソーウェーブの公表によれば、コードの中に印を入れても、その印と似た形が近くにあれば、読み取り機は勘違いしてしまいます。だから印は、印刷物の中で「まず出てこない形」でなければなりませんでした。
開発チームは、チラシや雑誌や段ボールに印刷されている絵や文字を白黒に直して、その面積の比率をひたすら調べ上げたそうです。そうして見つけた「印刷物の中でいちばん使われていない比率」が、1対1対3対1対1でした。あの四角は、デザインの好みで決まったのではなく、数えて決まったということです。
もうひとつ。QRコードが世界中で使われるようになった理由は、技術そのものよりも、扱い方の側にあります。同社は特許を持ちながら、規格化されたQRコードについては権利行使をしないと明言しました。誰でも自由に使えるようにしたのです。1994年に発表され、開発を担当したのは原昌宏氏を含むわずか2人のチームでした。当時の課題は「情報をたくさん入れること」ではなく「速く正確に読めること」だったといいます。
速く読めるようにするために位置の印を先に置く、という発想は、じつは日常でもよく使われています。書類のいちばん上に大きな見出しを置くのも、体育館で並ぶときに先頭の子だけ位置を決めるのも、同じ考え方です。全体を細かく見る前に、基準になる点を先に決めてしまう。QRコードは、その考え方を白黒のもように落としたものだと言えます。
家で確かめられること
- 家にあるQRコードを3つ探して、3つの大きな四角がどこにあるか見る。全部同じ位置にあります。
- スマホを上下逆さまにして読んでみる。読めます。向きは3点から計算されているためです。
- 小さくちぎった紙の切れはしを、QRコードのはしのほうに少しだけ置いてみる。読めることがあります。誤り訂正が働いている場面です。
3つ目は、置く量を増やしていくと、あるところで読めなくなります。その境目が、そのコードに入っている「余力」です。
読んで終わりにしない1枚おうち実験カード(A4・印刷用・無料)。よそう・けっか・きづいたことを書いて残せます。自由研究のまとめにも使えます わかったかどうか、デジタルはかせ検定でためせますQRコードの問題は3級と2級に入っています。全30問・無料・登録不要