モンテッソーリ教育とは?──おうちでできるやり方と、どんな家庭に向いているか
お子さんの年齢ごとの「今週の3つ」
1〜2歳
- ふたに穴をあけた容器に、ストローを落とす遊びを置く
- 手を洗う踏み台を置き、自分で洗えるようにする
- おもちゃを棚に6つだけ出し、残りはしまう
3〜6歳
- 子どもの高さにコップとふきんを置き、こぼしたら自分でふく
- 服を2つ出して、子どもに選ばせる
- 洗濯ばさみかトングで「うつしかえ」遊びを1つ
小学1〜3年
- 夕ごはんの1品(サラダなど)を任せる
- 「なぜ?」が出たら、答えずに図鑑で一緒に調べる
- 宿題と遊びの順番を、子どもに決めてもらう
小学4〜6年
- 週末のお出かけを、子どもに計画してもらう(行き方・お金)
- 自分の1週間の時間割を、自分で作る
- 家の仕事を1つ、まるごと任せる(洗濯物の仕分けなど)
藤井聡太さんがモンテッソーリの幼稚園に通っていたと報じられ、日本でも名前がよく知られるようになりました。けれども、「教具を買わないといけない?」「うちの子に合う?」「小学生からでは遅い?」と迷う保護者も多いはずです。このページでは、海外で実際に広く使われているおうちモンテッソーリのやり方を、年齢別に、家でそのまま試せる形でまとめました。
モンテッソーリ教育とは
20世紀のはじめ(1907年、ローマの「子どもの家」)に、イタリアの医師マリア・モンテッソーリが始めた教育法です。子どもには自分で育つ力があると考え、大人は子どもの手の届く「準備された環境」を整え、子どもが自分で選んだ活動に集中できるように見守ります。「ひとりでできるように手伝ってね」という子どもの言葉が、考え方をよく表しています。いまは世界の多くの国に園や学校があり、海外ではグーグルの創業者の2人も、モンテッソーリの学校で学んだことが自分たちの土台になったと話しています。
モンテッソーリの5つの考え方
| 考え方 | どういうことか | 家での形 |
|---|---|---|
| 準備された環境 | 子どもが自分で選び、自分で片づけられる場所と道具を用意する | 子どもの高さの棚に、道具を少しだけ。週ごとに入れかえる |
| 自由と、その範囲 | 選ぶ自由はあるが、選べる範囲は大人が決める(放任ではない) | 「どっちからやる?」と2つから選ばせる |
| 集中をじゃましない | 夢中になっているときは、ほめる・声をかけるのも待つ | 終わってから「最後までやったね」 |
| 観察してから手を出す | 大人は先回りせず、まず見る。困っている所だけを手伝う | 10秒待ってから「どこを手伝ってほしい?」 |
| 敏感期 | ある時期に、ある力を身につけたがる時期がある(秩序・言葉・数など) | 同じことをくり返したがる時期は、とことん付き合う |
効果は?研究でわかっていること・わかっていないこと
抽選を使った研究(米国)
米国ミルウォーキーの公立モンテッソーリ校は、入学を抽選で決めていました。抽選で入れた子と、入れなかった子(ほかの学校へ)を比べると、5歳では読み書き・算数・人との関わりが、12歳では作文の創造性と、人とのふるまいが上回りました(Lillard & Else-Quest、2006年、科学誌 Science)。別の地域で3年間追った研究でも、幼児期の学力と、取り組むことを楽しむ気持ちが高く、家庭の所得による差が小さくなりました(Lillard ら、2017年)。
多くの研究をまとめると
2023年に多くの研究をまとめた分析では、学力と、それ以外の力(自分を律する力・創造性など)の両方で、平均してプラスの効果が報告されています(Randolph ら、2023年)。ただし、研究の質にはばらつきがあります。
気をつけたいこと:「名前だけ」では同じ結果にならない
本来のやり方(資格のある教師、そろった教具、午前中の長い自由な作業時間、縦割りのクラス)に近い園ほど結果がよく、ほかの教材やプリントを多く足した園では差が小さくなりました(Lillard、2012年)。「モンテッソーリ」と名前がついていても、中身は園によってちがいます。
海外で人気のおうちモンテッソーリ──年齢別のやり方
海外では、元モンテッソーリ教師のシモーヌ・デイビス(The Montessori Notebook、著書 The Montessori Toddler)や、オーストラリアのブログ How We Montessori などが、家庭でのやり方を広めてきました。共通しているのは、高い教具を買うことではなく、家の中を「子どもが自分でできる」形に変えることです。そのやり方を、日本の家に合わせて年齢別にしました。
小学生(6〜12歳):理由を知りたがり、仲間と「正しさ」を大事にする時期
モンテッソーリは6〜12歳を、「なぜ?」と理由を知りたがり、想像する力が伸び、仲間との決まりや正しさを大事にする時期と考えます。小学校の時期は、宇宙・生命・人間の歴史・文字・数の始まりという5つの大きな物語から学びを広げる「コズミック教育」を行います。
- なぜ?に、答えではなく「一緒に調べる」で返す。図鑑・地球儀・年表を、子どもが自分で取れる場所に置きます。きょうのかがくのような毎日の1問から始めても大丈夫です。
- お出かけを子どもに計画させる(ゴーイング・アウト)。行き先、電車の時間、かかるお金を子どもが調べ、親は安全だけ確かめます。モンテッソーリの小学校で、調べ学習の続きとして行う方法です。
- 自分の時間割を、自分で作る。宿題・習い事・遊びの順番を子どもが決め、1日の終わりに「できたこと」を書きます。親が全部見ている形からは、少しずつ手を引く4つの段で移ります。
- 本物の家の仕事を任せる。夕ごはんの1品、買い物の計算、洗濯物の仕分け。役に立てた経験は、自己肯定感の土台にもなります(自己肯定感とは)。
3〜6歳:自分でやりたい、が爆発する時期
- 子どもの高さに、コップ・ふきん・小さなほうきを置き、こぼしたら自分でふける形にする。
- 着がえのかごを2つ用意し、服を2つから選ばせる。
- おもちゃは全部出さず、棚に6〜8個だけ。1〜2週間ごとに入れかえる(海外のおうちモンテッソーリで「ローテーション」と呼ばれる方法)。
- 文字や数は、指でなぞれる文字カードや、実物(おはじき・お金)で。
0〜3歳:まねして、くり返したい時期
- 低いフックに上着をかける、自分で手を洗える踏み台を置く。
- 同じことを何度もくり返したがるのは、敏感期のしるし。止めずに付き合う。
- 大人がゆっくり、言葉少なく手本を見せてから、子どもに渡す。
モンテッソーリの教具とは?──家で手作りできるもの(100均でも)
教具は、モンテッソーリが子どもの観察から作った「学ぶための道具」です。ピンクタワー(大きさのちがう10個の立方体)、円柱さし、砂文字板、金ビーズなどがあります。共通する3つの特徴を押さえれば、家では手作りで十分です。
- 1つの道具で、1つのことだけを学ぶ(大きさだけ、色だけ、など)。
- まちがえたら、子どもが自分で気づける(はまらない、余る、など)。大人が「ちがうよ」と言わなくてすむ形です。
- 手でさわれる物から始めて、頭の中で考える方へ進む。
| 年齢 | 手作りの例(100円ショップの物で) | 育つこと |
|---|---|---|
| 1〜2歳 | ふたに穴をあけた容器に、ストローやチェーンを落とす(ポットン落とし) | 指先の動き、くり返す集中 |
| 2〜3歳 | 洗濯ばさみをお皿のふちにはさむ、トングでポンポンを移す | 手首と指の力(えんぴつを持つ準備) |
| 3〜6歳 | 紙やすりを文字の形に切って厚紙に貼る(砂文字板の代わり)、色の濃さをそろえるカード | 文字の形を指で覚える、見分ける力 |
| 小学生 | 紙皿を切った分数ピース、1円・10円・100円玉で位取り(金ビーズの代わり) | 分数や位取りを、目と手で分かる |
3歳未満の子には、口に入る大きさの物(直径4cm未満が目安)を使わないでください。分数や位取りでつまずいたときは、算数の単元ごとの見立ても使えます。
どんな家庭に向いている?(8問チェック)
あてはまるものを押してください。点数ではなく、「どこから取り入れるとよいか」が分かります。
よくある誤解(「モンテッソーリは怖い」と言われる理由)
| よくある心配 | 実際は |
|---|---|
| 自由にさせて、放任になるのでは | 選べる範囲(制限)は大人が決めます。「自由と制限」はセットです |
| 宗教の教育では | 宗教の教育ではありません。医師が子どもの観察から作った方法です |
| 一人で作業ばかりで、協調性が育たないのでは | 3学年ほどの縦割りクラスで、年上が年下を助ける形があります |
| 高い教具がないとできないのでは | 家では、手の届く場所づくりと本物の家事がいちばんの基本です |
| 受験や小学校の勉強に不利なのでは | 受験対策の教育ではありません。中学受験をするなら、塾と組み合わせて「自分で進める力」の土台として使う家庭が多いです |
モンテッソーリ・シュタイナー・レッジョ・エミリアのちがい
シュタイナー教育とは、オーストリアの思想家ルドルフ・シュタイナーが1919年にドイツで始めた教育で、学校は「ヴァルドルフ学校」と呼ばれます。芸術・物語・季節の行事などリズムのある生活を大事にし、文字や計算を急がず、同じ担任が長く子どもたちを受け持ちます。レッジョ・エミリアとは、第二次世界大戦のあと、イタリアの町レッジョ・エミリアで教育者ローリス・マラグッツィらが始めた幼児教育で、子どもの興味から始まるプロジェクト活動と、子どもの表現の多さを表す「子どもたちの100の言葉」という考え方で知られています。
| モンテッソーリ | シュタイナー(ヴァルドルフ) | レッジョ・エミリア | |
|---|---|---|---|
| 始めた人 | マリア・モンテッソーリ(イタリアの医師) | ルドルフ・シュタイナー(オーストリアの思想家) | ローリス・マラグッツィら(イタリアの町レッジョ・エミリア) |
| 大事にすること | 本物の道具と現実の作業、自分で選ぶこと | 芸術・物語・リズムのある生活、想像力 | 子どもの興味から始まるプロジェクト、絵や造形などさまざまな表現 |
| 文字や数 | 興味をもった時期に、具体物で | 急がず、7歳ごろから物語や絵と一緒に | 決まった順番はなく、プロジェクトの中で |
| 先生 | 見守り、環境を整える | 担任が長く同じ子たちを受け持つ | 子どもと一緒に考え、活動を記録して共有する(ドキュメンテーション) |
モンテッソーリの幼稚園・保育園・学校を選ぶとき
- 先生がモンテッソーリ教育の養成コースを修了しているか(国際的な団体 AMI・AMS や、国内の養成コース)
- 3学年ほどの縦割りのクラスがあるか
- 午前中に、子どもが自分で選んで作業する長い時間(目安2〜3時間)があるか
- 見学のとき、子どもが自分で選び、自分で片づけているか(先生の指示で一斉に動いていないか)
よくある質問
Q. モンテッソーリ教育とは何ですか?
20世紀のはじめに、イタリアの医師マリア・モンテッソーリが始めた教育法です。子どもには自分で育つ力があると考え、大人は子どもの手の届く「準備された環境」を整え、子どもが自分で選んだ活動に集中できるように見守ります。「ひとりでできるように手伝ってね」という子どもの言葉が、考え方をよく表しています。
Q. モンテッソーリ教育に効果はありますか?
米国ミルウォーキーの公立モンテッソーリ校で、抽選で入れた子と入れなかった子を比べた研究では、5歳で読み書き・算数・人との関わりが、12歳で作文の創造性や人とのふるまいが上回りました(Lillard & Else-Quest、2006年)。多くの研究をまとめた2023年の分析でも、学力とそれ以外の力の両方で、平均してプラスの効果が報告されています。ただし、本来のやり方にどれだけ近いかで結果が変わります。
Q. おうちモンテッソーリは何から始めればいいですか?
教具を買う前に、子どもの手が届く高さに、子どもの道具を少しだけ置くことから始めます。服をかける低いフック、自分で取れるコップ、本物の家事(洗濯物をたたむ、野菜を洗う)を任せることが、海外のおうちモンテッソーリでもいちばん基本の形です。小学生なら、自分で時間割を決める、お出かけを計画させる、などに広げます。
Q. モンテッソーリ教育は小学生でもできますか?
できます。モンテッソーリは6〜12歳を「理由を知りたがり、仲間と正しさを大事にする時期」と考え、宇宙・生命・人間の歴史などの大きな物語から学びを広げる「コズミック教育」を行います。家では、なぜ?に一緒に調べて答える、子どもが計画するお出かけ、家の仕事を任せる、が取り入れやすい形です。
Q. モンテッソーリ教育が向いている家庭は?
子どもが自分でやりたがるのを親が待てる家庭、結果より取り組む過程を見たい家庭、家の中に子どもが自分で使える場所を少し作れる家庭に向いています。忙しい共働きの家庭でも、朝の支度や家事の一部を子どもに任せる形なら取り入れられます。このページの8問チェックで確かめられます。
Q. モンテッソーリ教育が「怖い」と言われるのはなぜですか?
「自由にさせて放任になるのでは」「宗教では」「協調性が育たないのでは」という心配からです。実際には、選べる範囲(制限)を大人が決めたうえでの自由で、宗教の教育ではなく、異年齢のクラスで年上が年下を助ける形があります。合う・合わないは子どもによるので、園や学校は見学して確かめます。
Q. モンテッソーリ教育のデメリットは?
合う・合わないが子どもによること、園や学校によって中身の質に差があること、認可外の園では費用が高いことがあること、小学校の一斉授業とのちがいに戸惑う子がいること、親が「待つ」ことに時間と根気がいること、が挙げられます。家でできる部分(自分で取れる場所づくり、本物の家事)から始めると、デメリットを小さくできます。
Q. モンテッソーリの教具は手作りできますか?
できます。1つの道具で1つのことだけを学ぶ、まちがえたら子どもが自分で気づける、の2つを守れば、100円ショップの物で作れます。洗濯ばさみ・トング移し・紙やすりの文字・紙皿の分数ピースなどが手作りしやすい例です。3歳未満の子には、口に入る大きさの物を使わないでください。
Q. レッジョ・エミリアとは?
第二次世界大戦のあと、イタリアの町レッジョ・エミリアで教育者ローリス・マラグッツィらが始めた幼児教育です。子どもの興味から始まるプロジェクト活動、絵や造形などさまざまな表現、活動を記録して共有するドキュメンテーションが特徴で、「子どもたちの100の言葉」という考え方で知られています。
Q. モンテッソーリとシュタイナーのちがいは?
モンテッソーリは本物の道具と現実の作業を通して、子どもが自分で選んで学ぶことを大事にします。シュタイナー(ヴァルドルフ)教育は、芸術・物語・リズムのある生活を大事にし、文字や計算を急がず、担任が長く同じ子たちを受け持ちます。どちらも子どもの発達の段階を大切にする点は共通です。
このページで使っている資料
- Lillard, A. & Else-Quest, N. (2006). Evaluating Montessori education. Science, 313(5795) 原文
- Lillard, A. S. ほか (2017). Montessori preschool elevates and equalizes child outcomes: A longitudinal study. Frontiers in Psychology, 8 原文
- Randolph, J. J. ほか (2023). Montessori education's impact on academic and nonacademic outcomes: A systematic review. Campbell Systematic Reviews, 19(3) 原文
- Lillard, A. S. (2012). Preschool children's development in classic Montessori, supplemented Montessori, and conventional programs. Journal of School Psychology, 50(3) 原文
- Davies, S. (2019). The Montessori Toddler./How We Montessori(Kylie D'Alton のブログ)
- 国際モンテッソーリ協会(AMI)、アメリカ・モンテッソーリ協会(AMS)の解説