ホーム › 習い事 › 子どもの体を育てる › 運動神経は遺伝する?
先に答えです。体の大きさや筋肉の性質には、親から受けつぐ部分があります。トップ選手になれるかどうかの差には、遺伝の影響が大きいという研究もあります。
けれど、小学生の「運動が苦手」の多くは、まだ経験していない動きがあるだけです。投げる・跳ぶ・走るといった基本の動きは、成長するだけでは自然に身につかず、教わって練習すると伸びることが研究で確かめられています。「うちは親が運動が苦手だから」とあきらめる理由にはなりません。
医学でいう運動神経は、脳や脊髄からの指令を筋肉に伝える神経のことです。運動神経の太さや速さで、スポーツの得意・不得意が決まっているわけではありません。
ふだん「運動神経がいい」と言うときは、体を思いどおりに動かす上手さのことを指しています。この上手さは、筋肉や体格のような体の材料と、それまでに経験した動きの種類・量の、両方でできています。だから「遺伝か、練習か」は、どちらか一方ではありません。
この数字はよく「運動神経の66%は遺伝」と紹介されます。けれど、調べたのは大人の女性が、高いレベルの大会に出たかどうかです。小学生の、ボールを投げる・走る上手さの何%が遺伝かを測ったものではありません。また、遺伝の割合は「その集団の中の差」を説明する数字で、1人の子どもの運動の力の66%が生まれつき決まっている、という意味でもありません。
一流どうしの差は練習量だけでは決まらない。けれど、練習すれば、その人の中では必ず上手になる。研究者自身もそう説明しています。小学生の家庭にとって大事なのは、トップになれるかどうかより、わが子が昨日の自分より動けるようになることです。
| 中身 | 家庭でできること | |
|---|---|---|
| 遺伝の影響が大きい | 背の高さ・骨格、筋肉の性質(速く縮む筋肉が多いか)、持久力の伸びやすさ | 変えようとしない。向いている種目を広く試して、体に合うものを本人が見つける |
| 練習で大きく変わる | 投げ方・走り方・跳び方などのフォーム、ボールを目で追ってとる、リズムに合わせて動く、転び方 | 教わる・まねる・くり返す。1つの動きを週に何回か、短くくり返すと伸びやすい |
| 環境で大きく変わる | 外で遊ぶ時間、体を動かす習慣、「自分はできる」という気持ち | 家族で体を動かす時間をつくる。できたことを具体的に伝える |
ただし、1つの遺伝子の型で運動の力が決まるわけではありません。運動の力にかかわる遺伝子は数多くあり、1つ1つの影響は小さいと考えられています。
「子どもの運動の才能が分かる」とうたう検査を見かけても、検査の結果で習い事や種目をしぼる必要はありません。
苦手な子ほど、「できない動き」が決まっていることが多いです。まず、どの動きでつまずいているかを見つけ、その動きだけを短くくり返します。
| 苦手な動き | よくあるつまずき | 家での10分 |
|---|---|---|
| 投げる | 投げる手と同じ側の足が前に出る | 投げる手と反対の足を一歩前にふみ出してから投げる。新聞紙を丸めたボールを、壁に向かって10回 |
| 走る | 腕が横にふれる・足元を見る | 腕を前後にふる練習をその場で20回。前を見て、短い距離を3本。足が速くなる方法へ |
| 跳ぶ | ひざを使わず、着地でよろける | 両足で前にジャンプして、ひざを曲げてぴたっと止まる。5回を2セット |
| 捕る | ボールから目をはなす・手を出すのが遅い | やわらかいボールを近くからふんわり投げ、両手で捕る。できたら1歩ずつ下がる |
| なわとび | なわと跳ぶタイミングが合わない | なわを持たずにその場で跳ぶリズム練習、次になわを片手でまわして跳ぶ。なわとびと持久走へ |
1回に全部やらず、1日1つの動きを10分で十分です。同じ動きを週に何回かくり返し、1週間ごとに最初の日とくらべると、伸びが見えやすくなります。記録はわが家の体力手帳に残せます。
親が言わないほうがよい言葉
「パパ(ママ)に似て運動神経がないね」「うちは運動の家系じゃないから」。これを聞いた子は、やる前からあきらめる理由を手に入れてしまいます。研究が示しているのは、小学生の運動の上手さは、教わって練習すれば変わるということです。
言ってほしいのは「この前より遠くまで投げられたね」「最後まで走ったね」のような、具体的にできたことです。他の子とくらべず、昨日のわが子とくらべてください。
世界のトップ選手ほど、子どものころに複数の競技をやっていたという分析があります。苦手な子にとっても、1つの競技だけを練習するより、いろいろな動きを経験するほうが、新しい動きを覚えやすい体になります。くわしくはゴールデンエイジとは(研究でわかったこと)と習い事は1つに絞るか、いろいろやるかへ。体力テストの点の見方は新体力テストの点数計算にあります。
子ども向け:びっくり大事実! ボールを投げる、なわとびをする、さか上がりをする。こういう動きは、大きくなれば自然にできるようになるものではなく、練習してできるようになるものだと、研究で分かっています。つまり、いまできない動きは「まだ練習していない動き」なのです。
今週、苦手な動きを1つ決めて、1日10回だけやってみよう。1週間後、最初の日とくらべてみよう。
このページは医学的な助言をするものではありません。診断や治療については医療機関にご相談ください。事実は文中に示した公的機関・学会・競技団体の資料と、複数の主要報道で確かめられた範囲だけを書いています。制作 スクールコンパス編集部
体の大きさ、筋肉の性質、持久力の伸びやすさなどには遺伝の影響があります。一方で、投げる・跳ぶ・走るといった動きの上手さは、教わって練習すると伸びることが研究で確かめられています。「親が苦手だから子どもも苦手」と決まっているわけではありません。
よく引かれる「66%」は、英国の成人女性の双子を調べ、県や国の大会に出たことがあるかどうかの差のうち、遺伝で説明できる割合を見積もったものです。小学生の運動の上手さの何%が遺伝か、を測った数字ではありません。
小学生のうちの差は、それまでに経験した動きの種類と量の差が大きく出ます。基本の動きは、成長するだけでは自然に身につかず、教わって練習すると伸びることが分かっています(Loganほか、2012年)。
スポーツ医学と遺伝学の研究者の合意声明は、子どもの才能を見つける目的や、練習の中身を決める目的で遺伝子検査を使うことをすすめていません(Webbornほか、2015年)。今の知識では、検査で子どもの将来の運動の力は分からないためです。
なれます。練習で説明できる差は一部ですが、確かにあります(Macnamaraほか、2016年)。親ができる一番のことは、上手に教えることより、いろいろな動きを一緒に楽しむ時間をつくることです。