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運動神経は遺伝する?
研究でわかった割合と、親が苦手でも子どもが伸びる理由

先に答えです。体の大きさや筋肉の性質には、親から受けつぐ部分があります。トップ選手になれるかどうかの差には、遺伝の影響が大きいという研究もあります。

けれど、小学生の「運動が苦手」の多くは、まだ経験していない動きがあるだけです。投げる・跳ぶ・走るといった基本の動きは、成長するだけでは自然に身につかず、教わって練習すると伸びることが研究で確かめられています。「うちは親が運動が苦手だから」とあきらめる理由にはなりません。

そもそも「運動神経」とは?

医学でいう運動神経は、脳や脊髄からの指令を筋肉に伝える神経のことです。運動神経の太さや速さで、スポーツの得意・不得意が決まっているわけではありません。

ふだん「運動神経がいい」と言うときは、体を思いどおりに動かす上手さのことを指しています。この上手さは、筋肉や体格のような体の材料と、それまでに経験した動きの種類・量の、両方でできています。だから「遺伝か、練習か」は、どちらか一方ではありません。

研究でわかったこと:遺伝の割合「66%」の意味

英国の成人女性の双子4,488人を調べた研究では、県や国の大会に出たことがあるかどうか(一流の競技経験)の差のうち、66%が遺伝で説明できると見積もられました。 出典:De Moor MHM, Spector TD, Cherkas LF ほか. Genome-wide linkage scan for athlete status in 700 British female DZ twin pairs. Twin Research and Human Genetics, 2007;10(6):812-820.

この数字はよく「運動神経の66%は遺伝」と紹介されます。けれど、調べたのは大人の女性が、高いレベルの大会に出たかどうかです。小学生の、ボールを投げる・走る上手さの何%が遺伝かを測ったものではありません。また、遺伝の割合は「その集団の中の差」を説明する数字で、1人の子どもの運動の力の66%が生まれつき決まっている、という意味でもありません。

スポーツの練習量と競技力の関係を調べた研究をまとめた分析では、練習量で説明できる競技力の差は18%でした。オリンピックのような一流の選手どうしでは1%でした。また、上のレベルに届いた選手が、子どものころにその競技を早く始めていたわけではありませんでした。 出典:Macnamara BN, Moreau D, Hambrick DZ. The Relationship Between Deliberate Practice and Performance in Sports: A Meta-Analysis. Perspectives on Psychological Science, 2016;11(3):333-350.

一流どうしの差は練習量だけでは決まらない。けれど、練習すれば、その人の中では必ず上手になる。研究者自身もそう説明しています。小学生の家庭にとって大事なのは、トップになれるかどうかより、わが子が昨日の自分より動けるようになることです。

子どもの基本の動き(走る・跳ぶなどの移動の動き、投げる・捕る・けるなどのボールの動き)を伸ばす取り組みを調べた研究をまとめた分析では、計画して教えた取り組みで、動きがはっきり上達していました。一方、自由に遊ぶだけのグループでは、はっきりした変化は見られませんでした。研究者は、基本の動きは成長とともに自然に身につくものではなく、教わり、練習して身につくものだとしています。 出典:Logan SW, Robinson LE, Wilson AE, Lucas WA. Getting the fundamentals of movement: a meta-analysis of the effectiveness of motor skill interventions in children. Child: Care, Health and Development, 2012;38(3):305-315.

遺伝の影響が大きいもの・練習で変わるもの

中身家庭でできること
遺伝の影響が大きい背の高さ・骨格、筋肉の性質(速く縮む筋肉が多いか)、持久力の伸びやすさ変えようとしない。向いている種目を広く試して、体に合うものを本人が見つける
練習で大きく変わる投げ方・走り方・跳び方などのフォーム、ボールを目で追ってとる、リズムに合わせて動く、転び方教わる・まねる・くり返す。1つの動きを週に何回か、短くくり返すと伸びやすい
環境で大きく変わる外で遊ぶ時間、体を動かす習慣、「自分はできる」という気持ち家族で体を動かす時間をつくる。できたことを具体的に伝える

「速い筋肉」の遺伝子の話

ACTN3という遺伝子は、速く縮む筋肉の中ではたらくたんぱく質にかかわります。短距離走などの一流選手を調べた研究では、この遺伝子の型の分かれ方が、一般の人とちがっていました。 出典:Yang N, MacArthur DG, Gulbin JP ほか. ACTN3 genotype is associated with human elite athletic performance. American Journal of Human Genetics, 2003;73(3):627-631.

ただし、1つの遺伝子の型で運動の力が決まるわけではありません。運動の力にかかわる遺伝子は数多くあり、1つ1つの影響は小さいと考えられています。

スポーツ医学と遺伝学の研究者による合意声明は、今の知識では、子どもや若い選手に、才能を見つける目的や練習の中身を決める目的で、一般向けの遺伝子検査を受けさせるべきではないとしています。 出典:Webborn N, Williams A, McNamee M ほか. Direct-to-consumer genetic testing for predicting sports performance and talent identification: Consensus statement. British Journal of Sports Medicine, 2015;49(23):1486-1491.

「子どもの運動の才能が分かる」とうたう検査を見かけても、検査の結果で習い事や種目をしぼる必要はありません。

運動が苦手な小学生が、家でできる10分

苦手な子ほど、「できない動き」が決まっていることが多いです。まず、どの動きでつまずいているかを見つけ、その動きだけを短くくり返します。

苦手な動きよくあるつまずき家での10分
投げる投げる手と同じ側の足が前に出る投げる手と反対の足を一歩前にふみ出してから投げる。新聞紙を丸めたボールを、壁に向かって10回
走る腕が横にふれる・足元を見る腕を前後にふる練習をその場で20回。前を見て、短い距離を3本。足が速くなる方法へ
跳ぶひざを使わず、着地でよろける両足で前にジャンプして、ひざを曲げてぴたっと止まる。5回を2セット
捕るボールから目をはなす・手を出すのが遅いやわらかいボールを近くからふんわり投げ、両手で捕る。できたら1歩ずつ下がる
なわとびなわと跳ぶタイミングが合わないなわを持たずにその場で跳ぶリズム練習、次になわを片手でまわして跳ぶ。なわとびと持久走へ

1回に全部やらず、1日1つの動きを10分で十分です。同じ動きを週に何回かくり返し、1週間ごとに最初の日とくらべると、伸びが見えやすくなります。記録はわが家の体力手帳に残せます。

親が言わないほうがよい言葉

「パパ(ママ)に似て運動神経がないね」「うちは運動の家系じゃないから」。これを聞いた子は、やる前からあきらめる理由を手に入れてしまいます。研究が示しているのは、小学生の運動の上手さは、教わって練習すれば変わるということです。

言ってほしいのは「この前より遠くまで投げられたね」「最後まで走ったね」のような、具体的にできたことです。他の子とくらべず、昨日のわが子とくらべてください。

いろいろやるのが、いちばんの近道

世界のトップ選手ほど、子どものころに複数の競技をやっていたという分析があります。苦手な子にとっても、1つの競技だけを練習するより、いろいろな動きを経験するほうが、新しい動きを覚えやすい体になります。くわしくはゴールデンエイジとは(研究でわかったこと)と習い事は1つに絞るか、いろいろやるかへ。体力テストの点の見方は新体力テストの点数計算にあります。

子ども向け:びっくり大事実! ボールを投げる、なわとびをする、さか上がりをする。こういう動きは、大きくなれば自然にできるようになるものではなく、練習してできるようになるものだと、研究で分かっています。つまり、いまできない動きは「まだ練習していない動き」なのです。

今週、苦手な動きを1つ決めて、1日10回だけやってみよう。1週間後、最初の日とくらべてみよう。

このページの出典

📓 記録に残す(わが家の体力手帳)

50m走・なわとび・シャトルラン・身長・就寝時刻を、数字1つずつ入れて伸びを見ます。この端末にだけ残ります。順位づけや判定はしません。

わが家の体力手帳を開く →

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このページは医学的な助言をするものではありません。診断や治療については医療機関にご相談ください。事実は文中に示した公的機関・学会・競技団体の資料と、複数の主要報道で確かめられた範囲だけを書いています。制作 スクールコンパス編集部

❓ よくある質問

Q. 運動神経は遺伝しますか?

体の大きさ、筋肉の性質、持久力の伸びやすさなどには遺伝の影響があります。一方で、投げる・跳ぶ・走るといった動きの上手さは、教わって練習すると伸びることが研究で確かめられています。「親が苦手だから子どもも苦手」と決まっているわけではありません。

Q. 運動神経の遺伝は何%ですか?

よく引かれる「66%」は、英国の成人女性の双子を調べ、県や国の大会に出たことがあるかどうかの差のうち、遺伝で説明できる割合を見積もったものです。小学生の運動の上手さの何%が遺伝か、を測った数字ではありません。

Q. 運動神経がいい子と悪い子の差はどこから来ますか?

小学生のうちの差は、それまでに経験した動きの種類と量の差が大きく出ます。基本の動きは、成長するだけでは自然に身につかず、教わって練習すると伸びることが分かっています(Loganほか、2012年)。

Q. 子どもの運動の才能を遺伝子検査で調べられますか?

スポーツ医学と遺伝学の研究者の合意声明は、子どもの才能を見つける目的や、練習の中身を決める目的で遺伝子検査を使うことをすすめていません(Webbornほか、2015年)。今の知識では、検査で子どもの将来の運動の力は分からないためです。

Q. 親が運動が苦手でも、子どもは運動が得意になれますか?

なれます。練習で説明できる差は一部ですが、確かにあります(Macnamaraほか、2016年)。親ができる一番のことは、上手に教えることより、いろいろな動きを一緒に楽しむ時間をつくることです。