スクールコンパスことば大辞典 > 語彙をふやす

「やばい」しか言わない子の
語彙をふやす

読む本が決まらないなら。「読書」ではなく「いま笑いたい」「こわい話が読みたい」から入ると、子どもが自分で選びます。本棚コンパス(学年とテーマで選ぶ) 3つの質問で選ぶ みじかい話から

読書週間は10月27日から11月9日です。読書カードが白いまま何日も過ぎて、こちらが焦って「本読んだ?」と聞き、ますます開かなくなる。その2週間にできることを書きました。読書週間に、本を読まない子とどうするか →

「どうだった?」と聞くと「ふつう」。感想を聞くと「やばい」。作文は「楽しかったです」で終わる。

語彙が少ないのではありません。気持ちを表す言葉に、出会っていないだけです。小学校で習う漢字には、気持ちに関係するものがあまりありません。習っていない言葉は書けないので、知っている範囲で終わります。

ふつうの辞典は「正しい言葉」から引きます。このページは逆です。子どもがいま使っている言葉から引きます。

🔁 子どもの言葉から引く

大事なのは、同じ「やばい」でも場面で変える言葉がちがうことです。よかったときと、こまったときで、正反対の意味に使われています。

いま使っている言葉その場面なら、こう言える
やばいよかったときすばらしい/見事だ/圧巻だった/胸がすく/鳥肌が立った

「やばい」の中でいちばん多い使い方。ここを1語変えるだけで作文が変わる。

やばいこまったときまずい/危うい/取り返しがつかない/冷や汗が出た

同じ「やばい」でも正反対。どっちの意味かを聞くだけで、子どもは考える。

やばい数や量が多いときおびただしい/けたはずれ/尋常じゃない/数えきれない
エグい程度がはげしいとき強烈だ/容赦ない/すさまじい/情け容赦がない
すごいほめるとき見事だ/目を見張る/舌を巻く/頭が下がる

「すごい」は便利すぎて、何がすごいのかが消える。

うざいじゃまなときわずらわしい/しつこい/気が散る/落ち着かない

人に向けて言うと相手を傷つける。物や状況になら使える言いかえ。

ビミョー決めかねるときしっくりこない/今ひとつ/決めかねる/判断がつかない
まじ本当かと聞くとき本当に/確かに/冗談ではなく/うそでしょう
だるい気が進まないときおっくうだ/気が重い/体が重い/気乗りしない

「だるい」を言いかえられると、体調と気分を分けて言えるようになる。

むかつくはらが立つとき腹が立つ/納得がいかない/理不尽だと思う/やりきれない

「むかつく」だけだと、なぜ怒っているかが自分でも分からなくなる。

かわいいいいなと思うとき愛らしい/ほほえましい/いじらしい/けなげだ
ふつうとくに感想がないときこれといって/目立ったところはない/悪くはない

「どうだった?」に「ふつう」で返る家は、ここから始めると変わる。

⚠️ 「言いかえなさい」と言っても、ふえません

上の表を子どもに見せて「これからはこう言いなさい」と言っても、明日には元に戻ります。注意されて覚えた言葉は、使わないからです。

語彙がふえるのは、親が使って、子どもが真似したときだけです。順番はこうです。

❶ 子どもが「やばい」と言ったら、「いい意味の? こまった意味の?」とだけ聞く。答えるために、子どもは考えます。
❷ 親が1日1語だけ、言いかえの言葉を会話の中で使う。教えるのではなく、ふつうに使う。
❸ その1語を、1週間使い続ける。10語を教えるより、1語を10回使うほうが残ります。

「本を読ませればいい」とよく言われます。読めば出会いますが、読んだだけの言葉は自分では使えません。口に出したときに、はじめて自分の言葉になります。だから家の会話がいちばん効きます。

🗣 親が使うための、気持ちのことば

子どもに教える前に、親のほうが6つ言えるかを確かめてみてください。ここが親の側でも止まっていることは、めずらしくありません。

ふだんの言い方言いかえの候補
うれしい喜ばしい/心がはずむ/胸がいっぱいになる/ありがたい/こみ上げる/晴れがましい
かなしい切ない/やるせない/胸が痛む/いたたまれない/さみしい/打ちひしがれる
おこる腹が立つ/いらだつ/憤る/かっとなる/むっとする/気色ばむ
こわいおそろしい/不安だ/心細い/身がすくむ/ぞっとする/気が気でない
たのしいおもしろい/夢中になる/わくわくする/心おどる/時間を忘れる/飽きない
つかれたくたびれた/へとへとだ/息が上がる/力が抜ける/ぐったりする/やり切った

今日の夕食で、この中から1つだけ使ってみてください。子どもに向けてでなくてかまいません。 「今日は仕事がやり切った感じだったよ」でいい。説明しないでください。説明した瞬間に、勉強になります。

✏️ 作文が「楽しかったです」で終わるとき

作文で書けないのは、語彙の問題だけではありません。「楽しかった」で本人は言い切れているつもりだからです。

聞くことは1つです。「そのとき、体のどこが動いた?」  胸がドキドキした。足が勝手に走った。顔がゆるんだ。声が出た。 体のことは、子どもでも思い出せます。そこから書くと、自然に言葉が変わります。

📚 言葉を1つずつ見る

言いかえの候補は、その場面でよく使われる言い方を並べたものです。どれが正解ということはありません。国語辞典で意味を確かめてから使ってください。このページは2026年9月9日に作りました。

🧩 ことばの力は、1つのページでは育ちません

語彙・作文・読解・音読・文章題は、別々の悩みに見えて、じつは同じところでつまずいています。言いたいことがあるのに、言える言葉を持っていない。だから作文が「楽しかったです」で終わり、文章題の場面が読み取れず、音読が声だけになります。

いま困っているところから入ってください。どれも、家で親ができることだけを書いています。