作文が書けない子への教え方|書き出す前に、材料を集める
やることは1つ。原稿用紙をいったん片づけて、質問しながらメモに書き出す。材料が10個たまってから、書き始めます。
書くことが決まっていない状態で原稿用紙に向かわせるのは、買うものを決めずにレジに並ばせるようなものです。固まって当然です。
1時間、1行も進まない
鉛筆を持ったまま動かない。ときどき「何書けばいいの」とつぶやく。声をかけると「わかんない」。作文の宿題が出た日の夕方、この光景は多くの家庭で繰り返されます。
ここで「とにかく書きなさい」と言っても進みません。書くことが決まっていないから、書けないのです。順番が逆になっています。
書くことは、4つの段階でできている
文部科学省が公開している国語科の系統表では、書くことの学習過程が次の順序で示されています。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| ① 題材の設定/情報の収集/内容の検討 | 何について書くかを決め、材料を集める |
| ② 構成の検討 | どの順番で書くかを考える |
| ③ 考えの形成/記述 | 実際に書く |
| ④ 推敲 | 読み返して直す |
| ⑤ 共有 | 読み合って、よいところを見つける |
出典(一次情報):教科の目標,各学年の目標及び内容の系統表(小・中学校国語科)/文部科学省
注目したいのは、記述が③にあることです。実際に書き始めるまでに、2つの段階があります。
「作文が書けない」と言うとき、多くの子は①でつまずいています。にもかかわらず、家庭では③の段階から始めようとしている。ここが噛み合っていないのです。
①材料集め:質問で引き出す
まず原稿用紙を片づけてください。かわりに、メモ用紙か付箋を出します。ここでの目標は、材料を10個書き出すことです。文にする必要はありません。単語でも構いません。
・いつのこと? どこで? だれと?
・そのとき、何をしていた?
・何が見えた? 何が聞こえた?
・においや味は? さわった感じは?
・いちばん心に残っているのは、どの場面?
・そのとき、何て言った? だれかが何か言った?
・思っていたことと、違ったところはある?
・やる前と後で、変わったことはある? メモ:答えが出たら、その言葉をそのままメモに書きます。大人が言いかえないでください。子どもの言葉のまま残すのが大切です。
コツは、感想ではなく事実を聞くことです。「どうして楽しかったの?」と聞くと「楽しかったから」で終わりますが、「そのとき何をしてた?」と聞くと場面が出てきます。
五感を聞く質問がとくに効きます。見えたもの、聞こえた音、においや味。これらは記憶に結びついているので、思い出すと言葉が一気に増えます。
②構成:メモを並べ替える
材料が集まったら、順番を決めます。付箋なら並べ替えるだけ、メモなら番号を振るだけです。
学年によって求められる構成が変わります。
| 学年 | 求められること | 家庭でやること |
|---|---|---|
| 1・2年 | 事柄の順序に沿って簡単な構成を考える | 起きた順に並べる。それで十分 |
| 3・4年 | 内容の中心を明確にし、まとまりで段落をつくる | いちばん書きたい材料に印。その周りに関係するものを集める |
| 5・6年 | 文章全体の構成や展開を考える。事実と感想、意見を区別する | 「出来事」と「思ったこと」を色分けして並べる |
低学年は、起きた順に並べるだけで構いません。凝った構成は必要ありません。中学年から、中心を決める作業が入ります。
材料が10個あっても、全部書く必要はありません。1つを大きく書いて、残りは前後の説明に使う。この形にすると、内容の中心がはっきりします。
「この中で、いちばん書きたいのはどれ?」。この一言だけで構成が決まります。
③記述:並べた順に、止まらず書く
ここで初めて原稿用紙を出します。並べたメモの順に、そのまま文にしていきます。
この段階でのルールは1つ。書いている途中で直さないことです。字を直したり、言い回しを直したりすると、そのたびに流れが止まります。直すのは④の段階です。
書き出しで迷う場合は、型を渡してください。
・その場面から始める:「ぼくは、じてん車のペダルを強くふんだ。」
・言葉から始める:「『がんばれ』。友だちの声が聞こえた。」
・気持ちから始める:「本当は、やりたくなかった。」
・いつ・どこからでよい:「日曜日、家族で山にのぼった。」 メモ:最後の型がいちばん簡単で、低学年はこれで十分です。凝った書き出しを求めると、そこで止まります。
④推敲:直すのは2つだけ
書き上がったものを見ると、直したいところがたくさん見つかります。しかし、全部直させると次から書きたくなくなります。
直すのは、次の2つに絞ってください。
- 誤字。間違った漢字、抜けた文字。
- 読み返して意味が通らないところ。主語が抜けている、文が途中で切れている。
内容や感じ方には手を入れないでください。「もっとこう書けば」は、この段階では言わないのが原則です。
系統表でも、第1学年及び第2学年の推敲は文章を読み返す習慣を付けるとともに、間違いを正したり、語と語や文と文との続き方を確かめたりすることとされています。低学年で求められているのは、この程度です。
書き上がったら、本人に音読させてください。
つっかえるところが、直すべきところです。
目で追うだけより、声に出すほうが間違いに気づけます。 メモ:この方法なら、大人が指摘しなくても本人が見つけます。指摘される回数が減るので、書くことへの抵抗も下がります。
「楽しかった」しか書かないとき
感想の言葉が乏しい場合、感想を増やそうとしないのがコツです。手前の事実を増やすと、感想は自然に細かくなります。
質問:「なにがいちばんたのしかった?」→「リレー」
質問:「リレーのとき、なにしてた?」→「バトンもらって走った」
質問:「そのときなにが見えた?」→「まえの人のせなか」
質問:「なにが聞こえた?」→「がんばれって声」
アフター:「リレーで、ぼくはバトンをもらって走った。前の人のせなかが見えた。『がんばれ』という声が聞こえた。たのしかった。」
感想の言葉は「たのしかった」のままでも構いません。その手前が増えたことで、伝わる文章になっています。低学年ではこれで十分です。
字数が埋まらないとき
原稿用紙2枚、といった指定があると、内容より量が気になります。しかし量を求めても文章は伸びません。伸ばすなら、材料を増やすほうが確実です。
| 増やす方法 | やり方 |
|---|---|
| 場面を細かくする | 「その前は何してた?」「そのあとどうなった?」 |
| 会話を入れる | 「そのとき、なんて言った?」「だれかが何か言った?」 |
| 五感を足す | 「何が見えた?」「どんな音がした?」 |
| 気持ちの変化を書く | 「はじめはどう思ってた?」「終わったあとは?」 |
とくに会話を入れるのが効きます。かぎかっこの中身は、それだけで行が進みますし、場面が生き生きします。「そのとき、なんて言った?」の一言で、原稿用紙が数行埋まります。
題材そのものが合っていない可能性があります。書くことが少ない出来事を選んでしまうと、どう工夫しても伸びません。
題材を変えてよいか、先に確認してください。「他に書けそうなことある?」と聞いて、材料が多いほうを選び直すほうが早いことがあります。
作文が嫌いになってしまったとき
作文の時間になると机から離れる、書くと言っただけで不機嫌になる。ここまで来ている場合、手順の話より前に、書くことへの抵抗を下げる必要があります。
短いものから戻す
原稿用紙をやめて、3行だけ書くところから始めてください。日記でも、その日にあったことでも構いません。3行なら終わりが見えます。
目的のある文章にする
宿題としての作文ではなく、誰かに読んでもらう文章にすると変わることがあります。祖父母への手紙、家族へのメモ、好きなものの紹介。読む相手がいると、書く理由が生まれます。
直さない期間をつくる
しばらくの間、誤字も直さずに受け取ってください。書いたら受け取ってもらえるという経験を先に積むほうが、結果的に早く回復します。直すのは、書けるようになってからで間に合います。
親はどこまで手伝ってよいか
気になるところだと思います。線引きは、言葉を出したのが誰かにあります。
| やってよい | やらないほうがよい |
|---|---|
| 質問して材料を引き出す | 書く内容を大人が決める |
| 順番を一緒に考える | 文をそのまま口述する |
| 子どもが言った言葉をメモに書く | 大人の言葉に言いかえる |
| 誤字を教える | 内容を書き直させる |
質問して引き出すことも、順番を一緒に考えることも、学習過程の中で本来行われる活動です。手伝いではなく、支援の範囲です。
逆に、大人が内容を決めて口述させると、それは本人の作文ではなくなります。子どもが言った言葉をそのまま書く。この一線を守れば、手伝ってよい範囲は広く取れます。
やってしまいがちなこと3つ
学年が上がると、求められることが変わる
3・4年生:段落と、理由
この学年から、段落が入ってきます。系統表では、書く内容の中心を明確にし、内容のまとまりで段落をつくったり、段落相互の関係に注意したりして文章の構成を考えることとされています。
家庭では「話が変わるところで行を変える」と伝えれば十分です。また、自分の考えとそれを支える理由や事例との関係を明確にすることも示されているので、「なぜそう思ったの?」を1回聞くだけで、書ける内容が変わります。
5・6年生:事実と感想を分ける
高学年では、事実と感想、意見とを区別して書くことが求められます。ここは意識しないとできません。
メモの段階で色を分けるのがおすすめです。あったことは青、思ったことは赤。並べたときに、どちらかに偏っていれば見て分かります。
また、引用したり図表やグラフなどを用いたりして書き表し方を工夫することも示されています。調べたことを書く作文では、どこから引用したかを書く習慣をこの時期につけておくと、中学以降で効いてきます。
読書感想文にもそのまま使えます
ここまでの手順は、読書感想文でも同じです。材料集め、順番決め、記述、推敲。違うのは、材料が「自分の体験」ではなく「本を読んで心が動いた場面」であることだけです。
読書感想文には専用のテンプレートを用意しています。5つのブロックにメモを埋めるだけで構成が決まる形なので、材料集めの部分がさらに簡単になります。
また、系統表の言語活動例では、第1学年及び第2学年に観察したことを記録する活動が挙げられています。理科の観察記録も、実は作文の練習の一部です。書き方は観察記録の書き方にまとめています。
よくある質問
Q. 原稿用紙を前にして、何も書けずに固まってしまいます。
書く力の問題ではなく、書く材料が集まっていないことが原因であることが多くあります。学習指導要領の系統表でも、書くことの学習過程は題材の設定と情報の収集から始まり、構成の検討を経て記述に至る流れで示されています。つまり書き始める前に2つの段階があるということです。まず原稿用紙を片づけて、質問しながらメモに材料を書き出すところから始めてください。
Q. 「楽しかった」「おもしろかった」しか書きません。
感想の言葉を増やそうとするより、その手前の事実を引き出すほうが早く進みます。いつ、どこで、誰と、何をしたか。何が見えて、何が聞こえたか。こうした具体的な事実が増えると、感想は自然に細かくなります。「どうして楽しかったの?」と理由を聞くより、「そのとき何をしていたの?」と場面を聞くほうが、言葉が出てきやすくなります。
Q. 親が手伝うと、本人の作文ではなくなりませんか?
書く内容を大人が決めたり、文をそのまま口述したりすると本人のものではなくなります。しかし、質問して材料を引き出すことや、順番を一緒に考えることは、学習過程の中で本来行われる活動です。線引きは、言葉を出したのが誰かにあります。大人が質問し、子どもが答えた言葉をそのまま書く。この形なら、本人の作文です。
Q. 書いたものを、どこまで直させてよいですか?
誤字と、読み返して意味が通らないところに絞ってください。内容や感じ方には手を入れないほうがよいです。学習指導要領の系統表でも、第1学年及び第2学年の推敲は文章を読み返す習慣を付け、間違いを正したり語と語や文と文との続き方を確かめたりすることとされています。全体を書き直させると、次に書くこと自体を嫌がるようになります。
今日からの5ステップ
- ☑ 原稿用紙をいったん片づけた
- ☑ 質問して、材料を10個メモに書き出した
- ☑ 子どもの言葉をそのまま書いた(言いかえない)
- ☑ 「いちばん書きたいのはどれ?」で中心を決めた
- ☑ 直すのは誤字と、意味が通らないところだけにした