観察記録の書き方|「大きくなりました」で終わらせない3点セット
見るところを、先に3つ決めてください。
数(いくつ?何センチ?)/色(何色から何色に?)/形(どんな形に見える?)
この3点を毎回そろえるだけで、書くことは自然に決まります。感想を増やそうとせず、事実を増やす。これが観察記録のコツです。
「大きくなりました」の正体
あさがおの観察カード。ミニトマトの記録。理科の実験ノート。どれも、ほとんどの子が同じ書き方に落ち着きます。
「大きくなりました。うれしかったです。」
これを見て「もっと詳しく書きなさい」と言いたくなるのですが、詳しくとは何を書くことなのかが分かっていないのが実情です。指示が抽象的なので、動きようがありません。
必要なのは、見るところを具体的に決めてあげることです。観察は、見ようとしなければ見えません。「よく見なさい」ではなく「葉っぱは何枚?」と聞くだけで、書ける内容が変わります。
3点セット:数・色・形
毎回そろえる3点を決めておきます。これだけで、記録の質が変わります。
| 見るところ | 聞く言葉 | 書ける内容 |
|---|---|---|
| 数 | いくつある? 何センチ? | 葉が6まい。高さは15センチ。つぼみが3つ |
| 色 | 何色? 前は何色だった? | 葉はこい緑。くきの下のほうが少し赤い |
| 形 | どんな形に見える? 何かに似てる? | 葉はハートの形。つるがぐるぐる巻いている |
とくに数が効きます。数字が入ると、記録が一気に記録らしくなります。そして数字は、前回と比べたときに変化がはっきり出ます。
観察の場所に、ものさしを置いておくだけで変わります。
「はかってみて」の一言で、記録に数字が入ります。
測るのは、高さ・葉の長さ・花の大きさのどれか1つで十分。 メモ:低学年で「センチ」がまだなら、指の本数や消しゴムの個数で構いません。「消しゴム3個分」でも立派な記録です。
「前と比べて」を1行足す
3点セットが書けるようになったら、次はこれです。前回の記録と見比べて、変わったところを1つ書く。
観察記録が単なるメモではなく記録になるのは、この一行があるからです。1回だけの記述は情報ですが、比べて初めて変化が見えます。
「前は葉が4まいだったけど、今日は6まいになった。」
「先週は10センチだったのが、15センチにのびた。」
「きのうは白かったつぼみが、今日は少しむらさきになった。」
どれも数や色が入っているので、変化がはっきり分かります。
そのためには、前回の記録を横に置いて書くことが必要です。カードを重ねてしまわず、めくって見られるようにしておいてください。
絵は、上手さではありません
観察記録の絵を嫌がる子は多いのですが、多くは上手に描かなければいけないと思っているためです。実際に大切なのは、次の2点だけです。
1. 大きさが分かるようにする
絵だけでは、実物が何センチなのか分かりません。ものさしや指を一緒に描く、あるいは絵の横に「じっさいの大きさ:12センチ」と書き添える。これで記録になります。
2. 全体より、部分を大きく
植物全体を小さく描くより、気になった部分を大きく描くほうが価値があります。葉の一枚、つぼみの先、根の様子。
部分を大きく描くと、細かいところを見ざるを得ません。描く作業そのものが、観察になります。「葉のふちがギザギザしている」「葉に細い線が入っている」。描いてみて初めて気づくことが、たくさんあります。
「じょうずに描かなくていいよ。形が分かればいい」
「ぜんぶ描かなくていい。葉っぱ1まいだけ大きく描いて」
「横に、はかった長さを書いておこう」 メモ:色鉛筆を使うと、色の記録も同時にできます。ただし塗るのに時間がかかりすぎる場合は、言葉で「こい緑」と書くだけでも十分です。
条件をそろえる
正確な記録にするために、もう1つ大事なことがあります。毎回、同じ条件で見ることです。
- 同じ場所から見る。角度が変わると、大きさの印象も変わります。
- 同じ時間に見る。朝と夕方では、花の開き方も色の見え方も違います。
- 同じところを測る。高さなら地面から、葉なら同じ葉を。
これは、理科の実験でも同じ考え方です。比べたいところ以外は同じにする。この考え方が身につくと、自由研究の質が大きく変わります。
観察記録は、国語の学習でもあります
観察記録は理科や生活科の課題として出されますが、実は書く力の学習でもあります。
文部科学省が公開している国語科の系統表では、第1学年及び第2学年の書くことの言語活動例として、身近なことや経験したことを報告したり、観察したことを記録したりするなど、見聞きしたことを書く活動が挙げられています。
出典(一次情報):教科の目標,各学年の目標及び内容の系統表(小・中学校国語科)/文部科学省
つまり観察記録は、事実を正確に書く練習として位置づけられています。感想文とは違い、見たことをそのまま書く。この練習は、報告文や説明文を書く力につながります。
作文が苦手な子にとって、観察記録は入りやすい入口でもあります。書くことが目の前にあるからです。何を書くか考える必要がありません。作文全般の手順は作文が書けない子への教え方にまとめています。
そのまま使える記録の型
紙に次の項目を印刷しておくか、ノートに毎回同じ形で書かせると、迷わなくなります。
日づけ: 月 日( ) 天気: 気温: 度
見た時間: 時ごろ
【かず】 葉: まい / 高さ: センチ / その他:
【いろ】
【かたち】
【前とくらべて】
【え】(大きさが分かるように)
【ふしぎに思ったこと】 メモ:最後の「ふしぎに思ったこと」が、自由研究のテーマになります。1行でよいので、毎回書かせてください。ここから研究が始まります。
天気と気温を入れているのには理由があります。変化の原因を考える手がかりになるからです。「雨の日が続いたら急に伸びた」といった気づきは、条件を記録していないと生まれません。
自由研究につなげる
観察記録を続けていると、必ず「なぜだろう」が出てきます。それが自由研究のテーマになります。
| 観察で出た疑問 | 研究のテーマ |
|---|---|
| 日なたのほうが早く伸びた気がする | 日光の当たり方で成長は変わるか |
| 水をやりすぎた日、元気がなかった | 水の量と育ち方の関係 |
| 朝と夕方で花の開き方が違う | 時間による花の変化 |
ここで大事なのが、条件をそろえるという先ほどの考え方です。日光の影響を調べるなら、水の量や土は同じにする。この設計ができると、研究として成立します。
まとめ方には、レポートの形にする方法と、新聞の形にする方法があります。どちらも当サイトにテンプレートを用意しています。
書くことが見つからない日
毎日観察していると、「今日は何も変わっていない」という日が必ずあります。ここで手が止まる子は多いのですが、変化がないことも立派な記録です。
そのまま「変わりませんでした」と書いてよいのですが、それだけで終わらせないための手があります。
・数はどう? 葉の枚数は本当に同じ? 数えてみる
・まわりはどう? 土の様子、虫がいるか、日の当たり方
・触ってみると? 葉のかたさ、くきの太さ
・においは? 近づいてかいでみる
・天気は? 昨日と今日で気温や天気はどう違った? メモ:「変わっていない」と思っても、数えたり触ったりすると違いが見つかることがよくあります。見る角度を変えるだけで、書くことは出てきます。
それでも本当に変化がなければ、「3日間、葉の数は6まいのまま」と書けば十分です。変化していない期間があったことも、あとで見返すと意味のある情報になります。
写真と組み合わせる
近年は、スマートフォンで写真を撮って記録に添える方法も使えます。ただし、写真だけで済ませないことが大切です。
写真は正確ですが、撮る人が何を見たかは写りません。絵を描く作業には、どこを見るかを選ぶという過程があり、そこが観察の中身になります。
| 得意なこと | 苦手なこと | |
|---|---|---|
| 写真 | 全体を正確に残す。あとで見返せる | どこに注目したかが残らない |
| 絵 | 注目した部分が分かる。描く過程が観察になる | 時間がかかる。正確さは劣る |
おすすめは両方を使うことです。全体は写真で残し、気になった部分だけ絵に描く。この組み合わせなら、時間もかからず記録としても充実します。
学校の宿題として提出する場合は、写真の可否を確認してください。手書きの絵を求められることもあります。
やってしまいがちなこと3つ
学年による違い
1・2年生:生活科であさがおなど
この学年は、数える・測る・色を言うといった事実の記録ができれば十分です。理由や考察は求められません。「葉が6まい」「高さは消しゴム3個分」。これで立派な観察記録です。
ひらがなが中心なので、書く量そのものが負担になります。絵を大きく、文は短く。この配分にしてください。
3・4年生:理科が始まる
3年生から理科が始まり、観察の対象が広がります。ここから条件をそろえるという考え方を意識させると、その後の実験がやりやすくなります。
また、この学年では予想を書く欄を足すのがおすすめです。「明日はどうなっていると思う?」を先に書いておき、次の観察で答え合わせをする。この往復が、理科の考え方の土台になります。
5・6年生:考察を書く
高学年では、記録に加えてなぜそうなったかを考えることが求められます。事実と、そこから考えたことを分けて書くのがポイントです。
「葉が黄色くなった」は事実。「水が足りなかったからだと思う」は考察。この2つを混ぜずに書けると、レポートの質が上がります。これは国語の系統表で第5学年及び第6学年に示されている事実と感想、意見とを区別して書くことと同じ考え方です。
よくある質問
Q. 「大きくなりました」しか書けません。
何を見ればよいかが決まっていないことが原因です。見るところを先に3つ決めてください。数、色、形の3点セットです。いくつあるか、何センチか、何色から何色に変わったか、どんな形に見えるか。この3つを毎回そろえると、書くことが自然に決まります。感想を増やそうとするより、事実を増やすほうが早く進みます。
Q. 絵が下手で嫌がります。
観察記録の絵は、上手さを求めるものではありません。大切なのは、大きさが分かるように定規や指などの目印を一緒に描くことと、全体ではなく気になった部分を大きく描くことです。全体を小さく描くより、葉の一枚を大きく描くほうが記録として価値があります。上手に描けないと感じている子には、この2点を伝えるだけで負担が下がります。
Q. 観察記録は理科の宿題ですか?国語ではないのですか?
両方の性格を持っています。文部科学省が公開している国語科の系統表では、第1学年及び第2学年の書くことの言語活動例として、身近なことや経験したことを報告したり、観察したことを記録したりするなど、見聞きしたことを書く活動が挙げられています。つまり観察記録は、書く力の学習でもあります。事実を正確に書く練習として、作文や報告文にもつながります。
Q. 毎日書くのが続きません。
毎日である必要はありません。変化が見えるのは数日おきなので、間隔をあけたほうが違いがはっきりして書きやすくなります。学校から毎日の指示が出ている場合はそれに従いますが、家庭の自由研究などであれば、日を決めて週2回程度にするほうが続きます。むしろ大切なのは、前回と同じ場所・同じ時間に見ることです。条件をそろえると、変化が正確に分かります。
今日からの5ステップ
- ☑ 観察の場所に、ものさしを1本置いた
- ☑ 「いくつ?」「何色?」「どんな形?」と聞いた
- ☑ 前回の記録を横に置いて書かせた
- ☑ 絵は部分を大きく、大きさの目印つきで描かせた
- ☑ 「ふしぎに思ったこと」を1行書かせた