中学受験と高校受験、スポーツを頑張る子はどっち?
ゴールデンエイジと研究から比べる
先に答え:研究からいえる3つのこと
- 10〜12歳に練習が減っても、それだけで将来の伸びがなくなるという根拠は弱い。「この時期を逃すと伸びない」という時期の窓には、はっきりした根拠が足りないと整理されています(Fordほか、2011年)。
- 世界の一流選手は、子どものころに「1つの競技をたくさん」ではなかった。51の研究・6,096人(うち世界トップ772人)をまとめた分析では、世界トップの選手は国内トップの選手より、子どものころにほかの競技を多くやり、メインの競技を始めたのが遅く、その練習量も少なく、最初の伸びもゆっくりでした(Güllichほか、2022年)。
- 1つの競技にしぼるのは15〜16歳以降。米国小児科学会は、けがを減らすために専門化は少なくとも15〜16歳まで待つこと、週に1〜2日休むことをすすめています(2016年の臨床報告)。
この3つを日本の受験に重ねると、中学受験は「小4〜6の練習時間が減る」、高校受験は「15〜16歳=中3〜高1の勉強の時期が、ちょうど専門化を始めてよい年齢に重なる」という形になります。研究から見ると、小4〜6に練習を減らすことは心配されているほどの損ではなく、一方で中3の中断も数か月なら将来を決めるほどではない、というのが編集部の読み方です。どちらが向くかは、競技・進む学校の部活の環境・子どもが勉強とどう付き合えるかで決まります。
ゴールデンエイジとは
日本のスポーツ指導では、9〜12歳ごろを「ゴールデンエイジ」と呼び、動きを覚えやすい時期とする考え方がよく使われます。ただ、「この年齢でやらないと二度と身につかない」という意味での時期の窓については、子どもの体の研究をまとめたFordほか(2011年)が、はっきりした根拠は足りないと整理しています。いろいろな動きを経験すること自体は、上のGüllichほかの分析とも合います。大事なのは、受験の年でも毎日体を動かす時間を残すことです(WHOは5〜17歳に1日平均60分の運動をすすめています)。
中学受験と高校受験を、運動の面で比べる
| くらべること | 中学受験(中高一貫校へ) | 高校受験 |
|---|---|---|
| 小4〜6(10〜12歳)の運動 | 塾の時間で練習が減りやすい。研究から見ると、減ること自体の損は大きくないが、体を動かす時間をゼロにしない工夫が要る | いくつもの競技や遊びを続けやすい。世界の一流選手の子ども時代の形(いろいろな競技)に近い |
| 中3〜高1(15〜16歳)の運動 | 高校受験が無いので、専門化を始めてよい年齢をそのまま練習に使える | 受験勉強の時期と重なる。数か月の中断が将来を決めるという研究は見当たらないが、競技の大事な大会と重なることがある |
| 高校・大学・プロへの道 | 中学で入った学校の部活の強さに左右される。競技が強い一貫校は限られるので、入る前に部活の実績を確かめる必要がある | 15歳の時点で、競技の強い高校を選び直せる(スポーツの推薦などの道もある) |
| けが・燃えつき | 受験と練習の両方で、小学生のうちに疲れがたまりやすい | 小学生のうちに1つの競技に早くしぼると、けがと燃えつきが増えると報告されている(米国小児科学会) |
研究を読むときの注意
ここで使った研究は、米国と欧州の選手が中心で、日本の中学受験・高校受験を直接比べたものではありません。また、体操やフィギュアスケートのように若い年齢で活躍する競技は、事情がちがうことがあります。研究は「多くの子どもに当てはまる傾向」で、目の前の子どもに何が合うかは、所属のコーチと子ども本人の気持ちを合わせて決めてください。
わが家が先に確かめること 4つの質問
いちばん近いものを選ぶと、先に確かめることと今夜の1つが出ます。答えはこの端末の中だけに残り、次に開いたときに前回の答えと並べて見られます。
塾と練習は、週に何日入る? 1週間に入れて確かめる
道を決める前に、いまの練習と、入れる予定の塾を同じ1週間に入れてみてください。「+塾」で塾の時間を足せます。「くわしく」を選ぶと、起きる時刻と帰る時刻から、寝る時刻までに残る時間が曜日ごとに出ます。小学生の睡眠は9〜12時間(厚生労働省)、1つの競技の週の時間が年齢を超えるとけがが増えたという研究(Jayanthiほか、2015年)、週に1〜2日は休む(米国小児科学会)を目安に、超えるところに印がつきます。
どちらを選んでも守ること
- 週に1〜2日は、練習も試合もない日をつくる(米国小児科学会)。
- 週の練習時間が、子どもの年齢(10歳なら10時間)を超えないことを目安にする考え方もあります(米国小児科学会の報告の著者の説明)。
- 受験の年も、毎日体を動かす時間をゼロにしない(WHOは1日平均60分)。
- 中学受験をするなら、志望校の部活の実績を入る前に確かめる。学校ページの「部活の実績と、受験までの面倒見」で見られます。
よくある質問
Q. ゴールデンエイジ(9〜12歳)に中学受験で練習が減ると、運動神経は伸びなくなる?
A. この時期を逃すと後から伸びないという「時期の窓」には、はっきりした根拠が足りないと整理されています(Fordほか、2011年)。世界の一流選手は、子どものころにメインの競技の練習量が少なく、ほかの競技も多くやっていました(Güllichほか、2022年)。練習が減っても、毎日体を動かす時間を残すことが大切です。
Q. 高校受験で中3の練習が止まるのは不利?
A. 米国小児科学会は、1つの競技にしぼるのは15〜16歳以降をすすめています(2016年)。中3〜高1はちょうどその年齢で、高校受験の勉強の時期と重なります。数か月の中断が将来を決めるという研究は見当たりませんが、競技によっては大事な大会の時期と重なるので、所属のコーチと時期を相談してください。
Q. プロや大学で活躍したいなら、早く1つの競技にしぼったほうがいい?
A. 研究の多くは逆を示しています。世界の一流選手はメインの競技を始めた年齢が遅く、子どものころは複数の競技をしていました(Güllichほか、2022年、51研究・6,096人)。米国小児科学会も、早くしぼるとけがと燃えつきが増えると報告しています。ただし研究は欧米の選手が中心で、日本の受験制度を直接調べたものではありません。
出典
- American Academy of Pediatrics, Council on Sports Medicine and Fitness (Brenner JS ほか). Sports Specialization and Intensive Training in Young Athletes. Pediatrics, 2016.
- Güllich A, Macnamara BN, Hambrick DZ. What Makes a Champion? Early Multidisciplinary Practice, Not Early Specialization, Predicts World-Class Performance. Perspectives on Psychological Science, 2022;17(1):6-29.
- Ford P ほか. The Long-Term Athlete Development model: Physiological evidence and application. Journal of Sports Sciences, 2011.
- WHO. 身体活動と座りがちな行動のガイドライン(5〜17歳は1日平均60分の中強度以上の運動), 2020.