通知表の見方ガイド|観点別評価とは・所見の読み方と声かけ例
観点別評価は、テストの点だけを見ているのではありません。「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」という3つの角度から学習状況を分けて見ています。どの角度に課題があるかがわかれば、家庭でやることが決まります。
そして、子どもへの声かけは前回からの変化に向けてください。数を数えるより、変わったところを言葉にするほうが、次の学期に効きます。
通知表を開く前に、知っておきたいこと
通知表を渡された日の夕方は、家の中の空気が少し変わります。開く前に少し身構える。あの感じは、保護者になっても消えないものです。
ここでまず整理しておきたいのは、通知表と指導要録は別のものだということです。指導要録は学校が作成し保存する公的な記録で、記載する事項は文部科学省が示しています。一方、ご家庭に渡される通知表は、法令で様式が定められた書類ではありません。記号(◎○△かABCか)も、段階の数も、欄の構成も、学校によって異なります。
そのため、このページでは「◎が何個なら安心」といった話はしません。かわりに、どの学校の通知表にも共通する「評価の考え方」を、文部科学省が公開している資料にもとづいて説明します。考え方がわかれば、手元の通知表がどの様式でも読めるようになります。
観点別評価の3観点とは(ここが本体です)
文部科学省が平成31年3月に出した通知により、観点別学習状況の評価の観点は、次の3つに整理されています。
| 観点 | 何を見ているか | 対応する学習指導要領の柱 |
|---|---|---|
| 知識・技能 | 学んだことを理解し、身につけて使えるようになっているか | 知識及び技能 |
| 思考・判断・表現 | 学んだことを使って考え、判断し、それを表現できているか | 思考力、判断力、表現力等 |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 粘り強く取り組み、自分の学習のやり方を自分で調整しようとしているか | 学びに向かう力、人間性等 |
この3つは、学習指導要領が定める資質・能力の三つの柱にそのまま対応しています。つまり「学校が育てようとしている力を、そのまま3つに分けて見ている」というのが観点別評価の正体です。
出典(一次情報):小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)/文部科学省
いちばん誤解されている「主体的に学習に取り組む態度」
3つのうち、保護者がもっとも判断に迷うのがこの観点です。「やる気の評価だろう」「手をよく挙げる子が高くなるのだろう」と受け取られがちですが、それは文部科学省が明確に否定している理解です。
先ほどの通知は、この観点について、知識及び技能を獲得したり、思考力・判断力・表現力等を身につけたりすることに向けた粘り強い取組の中で、自らの学習を調整しようとしているかどうかを含めて評価するもの、と定めています。
さらに同じ通知は、学習評価の課題として、挙手の回数や毎時間ノートをとっているかなど、性格や行動面の傾向が一時的に表れた場面を捉える評価であるような誤解が払拭しきれていない、という指摘を挙げています。つまり「手を挙げた回数」で決まるという理解は、国が是正しようとしている誤解のほうなのです。
この観点が見ているのは「元気があるか」ではなく、うまくいかなかったときに、やり方を変えて続けられるかです。間違えた問題をそのままにせず解き直す、わからないところに印をつけて質問する、前回の反省をふまえて練習の順番を変える。こうした行動が、この観点に表れます。
評定と観点別評価は、役割が違う
小学校では、第3学年以上の各教科について評定がつけられます。指導要録では、十分満足できる状況を3、おおむね満足できる状況を2、努力を要する状況を1として記入することとされています。観点別学習状況のほうは、十分満足できる状況をA、おおむね満足できるをB、努力を要するをCとして区別します。
この2つは、どちらが上位ということではなく、見る角度が違います。
| 観点別学習状況の評価 | 評定 | |
|---|---|---|
| 見方 | 分析的(どこができて、どこが課題か) | 総括的(その教科全体としてどうか) |
| 役立つ場面 | 家庭で何に手を打つかを決めるとき | 教科全体の到達状況をつかむとき |
| 関係 | 観点は、評定を決めるときの基本的な要素になります。評定の決め方そのものは各学校が定めます | |
保護者にとって使えるのは観点別のほうです。同じ「算数が2」でも、知識・技能に課題があるのか、思考・判断・表現に課題があるのかで、家でやることはまったく変わります。前者なら計算や用語の定着、後者なら文章題での説明や式の立て方、というように打ち手が分かれます。
出典(一次情報):〔別紙1〕小学校及び特別支援学校小学部の指導要録に記載する事項等/文部科学省
なお、評定がつくのは第3学年以上です。1・2年生の通知表に評定欄がないのは、そういう理由です。
所見欄の読み方
短いことは、評価が低いことではありません
「今年の所見、去年より短い」と気にされる方は多いのですが、ここは制度の話として説明できます。先ほどの通知は、教師の勤務負担軽減の観点から、指導要録の総合所見について、要点を箇条書きとするなど記載事項を必要最小限にとどめる方針を示しています。通知表の所見も、これに沿って簡潔になっている学校があります。
つまり、所見の長短は評価の高低を表しません。読むべきは長さではなく、何が書かれているかです。
所見には「印がつけられないもの」が書かれる
ここが所見欄のいちばん大事な役割です。文部科学省の通知は、「学びに向かう力、人間性等」には、観点別学習状況の評価で見取れる部分と、観点別評価にはなじまず個人内評価等で見取る部分があることを明確にしています。そして、感性や思いやりなど、一人一人のよい点や可能性、進歩の状況を積極的に評価して伝えることが重要だとしています。
だから、所見に「友達が困っているときに声をかけていました」と書かれていたら、それは余談ではありません。記号では表せないから、文章で伝えているのです。ここは、そのまま子どもに読んで聞かせる価値があります。
所見の言い回しを読みとく
| よくある書かれ方 | 読みとり方 |
|---|---|
| 〜に取り組んでいました | 事実の記録です。取り組みの様子が見えていた、という報告として受け取ります |
| 〜が期待されます/〜するとさらに伸びます | 次の学期に向けた課題の提示です。ここが、家庭で意識すると効く場所です |
| 友達に〜していました | 記号では表せない部分の評価です。子ども本人に伝えると効果が大きい部分です |
| 自分から〜するようになりました | 変化の指摘です。前の学期と比べての進歩が見えたということです |
気になる書き方があったときは、推測で心配を膨らませず、面談で「所見の◯◯について、具体的にはどんな場面でしょうか」とうかがってください。聞き方は個人面談で聞くこと・話すことリストにまとめています。
子どもへの声かけ例8(数ではなく変化に注目する)
通知表を見たあと、最初にかける言葉はとても大事です。おすすめは、◎の数を数えないこと。数は前の学期と比べる材料にはなりますが、それを口に出すと、子どもは「数を増やすこと」を目標にしてしまいます。
かわりに、変化と、そこに至った行動に触れてください。
「ここ、前より上がってるね。自分では何が変わったと思う?」
「ここは前と同じだね。今の続け方で合ってるってことだと思う。」
「ここ、ちょっと変わってるね。難しくなってきた感じある?」
「先生が、こう書いてくれてるよ。(そのまま読む)これ、お母さんもうれしい。」
「答えは合ってるのに、どうしてそうなったかを書くところが苦手なのかもね。一緒にやってみる?」
「まちがえたところを、そのままにしないで直してみる。それだけやってみようか。」
「見せてくれてありがとう。これは今の場所を教えてくれる紙で、あなたの値打ちの紙じゃないよ。」
「1学期、よくがんばったね。まずはおつかれさま。」
⑧は逃げの言葉のようですが、実際にはいちばん効く場面があります。その日は何も分析しなくて構いません。通知表は逃げませんし、家庭で手を打つ話は翌日でも間に合います。
「テストの点はいいのに、評価が高くない」とき
保護者からいちばん多く出る疑問がこれです。単元テストはほとんど満点なのに、通知表の観点に○がついている。採点が厳しいのだろうか、と感じてしまいます。
ここは、3観点の仕組みを思い出すと説明がつきます。テストの点数が強く反映されるのは、主に「知識・技能」です。残る2つは、テスト以外の場面からも見取られます。
| 観点 | 主に見られる場面 |
|---|---|
| 知識・技能 | 単元テスト、計算や漢字の小テスト、実技の確認 |
| 思考・判断・表現 | 記述問題、ノートやワークシートの書き方、話し合いでの発言、作品や発表 |
| 主体的に学習に取り組む態度 | 学習の振り返りの記述、まちがい直しの様子、単元を通した取組の変化 |
つまり「点は取れているが、なぜそうなるかを説明する欄が空欄のまま」という状態だと、知識・技能は高く、思考・判断・表現は伸びない、ということが起こります。
文部科学省の通知も、観点別学習状況の評価の記録は毎回の授業ではなく、原則として単元や題材など内容や時間のまとまりごとに行うのが重要だとしています。1回のテストの結果だけで決まるものではない、ということです。
この差が見えたときの家庭での手当ては、はっきりしています。答えのあとに「どうしてそうなったか」を一言書かせる。それだけで、思考・判断・表現に必要な習慣が動きはじめます。
学年によって、通知表の見方は変わる
1・2年生:評定欄がなく、所見の比重が大きい
小学校で評定がつくのは第3学年以上です。1・2年生の通知表に評定がないのはそのためで、不足しているわけではありません。この時期は観点別の記号と、所見の文章が主な情報になります。
低学年でいちばん見ておきたいのは、学習の記号よりも生活面の記述です。学校生活の土台ができているかどうかが、その後の学習の伸びを左右します。所見に書かれた生活の様子は、そのまま家庭で意識する材料になります。
3・4年生:観点ごとの差が見えはじめる
学習内容が抽象的になり、教科の中で観点ごとの差が出はじめる時期です。同じ教科でも、知識・技能はできているのに思考・判断・表現が伸びない、といったパターンが見えてきます。
ここが観点別評価をいちばん活用できる学年です。教科単位で「算数が苦手」と捉えるのではなく、どの観点でつまずいているかを見て、家庭での取り組みを1つに絞ってください。
5・6年生:変化の方向を読む
高学年になると、記号そのものより前の学期からの動きが重要になります。下がった観点があるとき、それが学習内容の難化によるものか、取組み方の変化によるものかで、対応がまったく変わります。
ここは家庭だけで判断せず、面談で確認するのがおすすめです。「この観点が下がったのは、どのあたりの学習でしょうか」と聞けば、先生は具体的に答えられます。中学校に向けて、どの力を残しておくかという視点でも話が広がります。
やってしまいがちなNG3
通知表を受け取ったあと、家庭でやること3つ
- 前の学期の通知表と並べる。変化があった観点だけに印をつけます。5分で終わります。
- 課題のある観点を1つだけ選ぶ。全部やろうとすると続きません。次の学期に手を打つのは1つで十分です。
- 面談で聞きたいことをメモに足す。「所見の◯◯は、どんな場面でしたか」「思考・判断・表現を伸ばすには家で何ができますか」など、その場で書いておきます。
通知表は保管しておいてください。2年分並べると、記号1つ1つより、その子の伸び方の癖が見えてきます。どの教科で波が出やすいか、どの観点が安定しているか。これは、その学期だけを見ていては気づけない情報です。
よくある質問
Q. 観点別評価の3観点とは何ですか?
文部科学省の平成31年3月29日付通知により、観点別学習状況の評価は「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点に整理されています。これは学習指導要領が定める資質・能力の三つの柱、すなわち「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」に対応するものです。ただし各学校が実際に用いる観点名や記号、段階数は設置者が定めるため、通知表の表記は学校により異なります。
Q. 「主体的に学習に取り組む態度」は、やる気や挙手の回数で決まるのですか?
そうではありません。文部科学省の通知は、この観点を、知識及び技能を獲得したり思考力・判断力・表現力等を身に付けたりすることに向けた粘り強い取組の中で、自らの学習を調整しようとしているかどうかを含めて評価するものとしています。むしろ同じ通知は、挙手の回数や毎時間ノートをとっているかなど、性格や行動面の傾向が一時的に表れた場面を捉える評価だという誤解が払拭しきれていない、という課題を挙げています。
Q. 所見欄が短いのですが、評価が低いということでしょうか?
そうとは限りません。文部科学省の通知は、教師の勤務負担軽減の観点から、指導要録の「総合所見及び指導上参考となる諸事項」について、要点を箇条書きとするなど記載事項を必要最小限にとどめる方針を示しています。所見の長さは評価の高低を表すものではありません。書かれている内容そのものを読み、気になることがあれば個人面談で直接うかがうのが確実です。
Q. 評定と観点別評価は、どちらを重く見ればよいですか?
どちらか一方ではなく、役割が違うものとして両方を見ます。観点別学習状況の評価は学習状況を観点ごとに分析的に把握するもので、評定は各教科の学習状況を総括的に評価するものです。文部科学省の通知も、双方の特長を踏まえて活用することが重要だとしています。家庭で手を打つ材料になるのは、どの観点に課題があるかが見える観点別評価のほうです。
通知表を開いたら、この順で
- ☑ まず所見を読む(記号より先に)
- ☑ 前の学期と並べて、変化のあった観点に印をつける
- ☑ ◎や○の数は数えない
- ☑ 子どもには、よかったところから伝える
- ☑ 次の学期に手を打つ観点を1つだけ決める
- ☑ 面談で聞きたいことをメモに足す