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週刊 AI・ITニュース 2026年 第39号(9月21日〜27日)
先週の第38号では、EUの委員長が演説で子どもを守る法案を「提案する」と予告したところまでを伝えました。今週は、その法案の中身が公表されました。さらに国連の会議に合わせて、AIそのものを人間がどう管理するかという呼びかけも始まりました。「子どもを守るルール」と「AIを見張るルール」。2つを並べると、世界がいま何を心配しているのかが見えてきます。
なにが あったのか
2026年9月17日、ヨーロッパ連合(EU)の欧州委員会が、子どもをオンラインの危険から守る規則案を公表しました。名前は「KIDS(キッズ)」。英語の正式名(Keeping Internet Digital Spaces Accountable and Trustworthy)の頭文字を並べると、「子どもたち」という単語になるように付けられています。
柱は2つです。
❶ 年齢による区切り。13歳未満はSNSや動画共有サービスでアカウントをつくれません。13歳と14歳は、保護者を通した制限つきのアカウントになります。
❷ 安全な設計の義務。事業者は、子どもにとって危険なつくりを最初から入れない「セーフティ・バイ・デザイン」を求められます。
対象は、SNSや動画共有サービスだけではありません。オンラインゲーム、AIの話し相手(AIコンパニオン)や会話型AI、アプリストア、スマホのOSまで含まれます。
なぜ ニュースなのか
委員長は声明で、この法案は「立証責任を逆転させる」ものだと述べました。つまり、「安全です」と示すのは利用者ではなく事業者の側になるということです。
もう1つ新しいのは、対象がアプリストアやOSにまで広がったことです。アプリ1つ1つを見張るのではなく、アプリを入れる「入口」にも決まりをかける考え方です。
欧州委員会自身も、この決まりがすぐに効くとは考えていません。先に16歳未満のSNS利用を制限したオーストラリアでは、もともとアカウントを持っていた子どもの多くが、年齢を確かめられないまま使い続けているとも説明しています。
世界に どうひびくか
これはまだ提案です。EUの加盟国と欧州議会が話し合って決めます。法律の専門家の解説では、同じような法律は成立まで平均で約2年かかり、成立しても適用は2028年より前にはならない見通しとされています。
ヨーロッパではすでに、少なくとも17か国で似た法律が準備されているとされ、EU全体の決まりにそろえることで、国ごとにばらばらになるのを防ぐねらいもあります。世界で同じアプリを出す会社は、いちばん厳しい地域に合わせて作りを変えることがあります。日本で使っているアプリの設定が変わる可能性もあります。
うちの子に どうかかわるか
日本の家庭にこの決まりがそのまま当てはまるわけではありません。そのうえで、持ち帰れる考え方があります。
子どもが使うアプリは、アプリストアの年齢の目安と、スマホ本体の保護者向けの設定(ペアレンタルコントロール)の2か所で見守れます。KIDS法案が「入口」に決まりをかけるのと同じように、家庭でも「入口」の設定を1度確かめておくだけで、アプリ1つ1つを見張る手間が減ります。
親子で話す問い
アプリそのものではなく、アプリを入れる「お店(アプリストア)」にも決まりが必要なのはなぜだと思う?
出典:欧州委員会のKIDS法案(2026年9月17日公表)。内容はIAPP「European Commission unveils EU KIDS Act」(2026年9月17日)、Wilson Sonsini(2026年9月)、Freshfields(2026年9月)の解説で確認(2026年9月24日 確認)。
なにが あったのか
9月22日から、ニューヨークの国連本部で第81回国連総会の首脳級の会合が始まりました。これに合わせて、ノルウェーのストーレ首相とフィンランドのストゥッブ大統領が、最先端のAIの管理を求める呼びかけを始めました。
呼びかけの中心は、AIは「人間の指示、監督、管理の下に置かれなければならない」という一文です。そのうえで、次のことを求めています。
❶ 企業は、義務的な検査や独立した評価を受け、評価する人がAIを十分に調べられるようにする。
❷ 各国は共通の基準をつくり、重大な事故を共同で報告し合う。
❸ 国連の加盟国は、基準を決めて確かめる国際機関をつくることを検討する。
なぜ ニュースなのか
呼びかけは、最近は高度なAIがテストの安全対策をすり抜けたり、許可なく外部のしくみにアクセスしたりする例が見られるようになったとし、技術の進み方が、危険を管理する力を上回るおそれを指摘しています。
同時に、AIの恩恵を受けられる国とそうでない国の差を広げないことも求めています。止めることだけでなく、公平に使えるようにすることもセットになっています。
世界に どうひびくか
報道時点(9月24日)で、ノルウェー、フィンランド、フランス、ドイツ、カナダ、オーストラリア、シンガポールなど22か国の首脳と、欧州委員会の委員長が賛同しています。
一方で、強いAI企業を多く持つアメリカと中国の名前は、一覧にありません。賛同者は今後も加わる形になっていますが、AIをつくる力の大きい国が加わらない約束に、どこまで意味があるかが問われています。こうした呼びかけには法律のような強制力はなく、影響力は参加する国の顔ぶれで決まります。
うちの子に どうかかわるか
「AIを人間が管理する」は、家の中では「止め方を知ってから使う」に置きかえられます。
子どもがAIのアプリを使うとき、やめ方・消し方・大人に知らせる方法の3つを、使う前に一緒に確かめておく。国どうしの話と、家庭の話は、同じ形をしています。
親子で話す問い
AIを「管理している」と言えるのは、どんなことができるときだと思う? 3つ挙げてみよう。
出典:ノルウェー政府「International call for enhanced control of AI development」(2026年9月)https://www.regjeringen.no/en/whats-new/international-call-for-enhanced-control-of-ai-development/id3173324/。賛同国の一覧はGIGAZINEの報道(2026年9月24日)による(2026年9月24日 確認)。
時事問題としては、次の形で問われる可能性があります。
❶ 語句 「2026年9月17日に欧州委員会が公表した、子どもをオンラインの危険から守る規則案の通称は何か」→ KIDS法案。「国連の全加盟国が1国1票で参加する機関は何か」→ 国連総会。
❷ 理由を書く問題 「国際的な呼びかけに、アメリカや中国が加わるかどうかが重要とされるのはなぜか。30字以内で書きなさい」→「AIをつくる力の大きい国が加わらないと、決まりが届かないから」のように書きます。
❸ 比べる問題 「アプリそのものに決まりをかける方法と、アプリストアやOSに決まりをかける方法を比べなさい」→入口に決まりをかけると一度にたくさんのアプリを見守れるが、入口を持つ一部の大きな会社に力が集まる、など両面を書けると得点になります。
日付は2026年9月17日(KIDS法案の公表)と9月22日(国連総会の首脳級会合の開始)。先週の9月16日(一般教書演説)とあわせて、「予告→公表→国際的な呼びかけ」の順で覚えましょう。
家の中で「止めるしくみ」があるものを3つ探し、止め方と、止めたあとに何が残るかを書き出してみてください。
たとえば洗濯機の一時停止(途中の水は残る)、エスカレーターの非常停止ボタン、スマホの利用時間の設定。止め方がわからないものが見つかったら、それが「使う前に確かめること」です。AIのアプリも同じです。
週刊小学生しんぶん9月25日号の「デジタルのなぜ⑤ AIに、なぜ止めるボタンがいるの?」で、しくみを学年別に解説しています。スマホやタブレットの設定を見直すときは、はじめてのスマホのページも判断材料になります。
その週のニュースだけでは分からないことは、しくみのほうから読むと早いです。どれも、親が説明できるようになることを目標に書いています。