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週刊 AI・ITニュース 2026年 第42号(10月12日〜18日)

先週の第41号では、AIで作ったニセの写真や動画が、なぜ見ぬきにくいのかを伝えました。今週は、AIの話がもう一段「大きく」なりました。AIが自分より賢いAIを、自分で作る日が来るかもしれない、という警告です。あわせて、止まらない個人情報の流出と、きっぷ・教科書・科学の研究で進む身近なデジタル化を取り上げます。
なにが あったのか
ロイター通信は10月15日、アメリカの大手AI企業のトップらが、AIが間もなく自分で自分の性能を高め、人間の制御を超えてしまうおそれを警告し、開発の減速に向けて異例の結束を見せたと伝えました。ふだんは激しく競い合う会社どうしです。NHKも10月14日、この「再帰的自己改善」のリスクと、人間とAIの共生をどう図るかを伝えています。
9月28日には、ノーベル物理学賞のジェフリー・ヒントン氏やヨシュア・ベンジオ氏らAI研究者22人が、AIの研究開発が自動化されて進歩が急に速まる「知能爆発」が起きた場合の影響を論じ、政府に実態の把握と制御の手段を整えるよう求める論文を公開しました(実際に起きたことを示した研究ではなく、想定にもとづく検討です)。
なぜ ニュースなのか
「再帰的」とは、くり返し自分に返ってくる、という意味です。AIがAIの研究を手伝う → もっと賢いAIができる → そのAIがさらに研究を進める……という輪が回り始めると、進歩の速さそのものが速くなっていきます。
この先にあると言われるのが「シンギュラリティ(技術的特異点)」です。AIが人間の知能をこえ、そこから先の変化を人間が予測できなくなる時点のことで、再帰的自己改善はそこへ向かう道すじの一つと考えられています。いつ来るのか、本当に来るのかは、研究者の間でも意見が分かれています。
心配されているのは、人間が中身を確かめるより速くAIが変わってしまうことです。いまのAIでも、なぜその答えを出したのかを人がすべて説明できるわけではありません(第40号の「中身が見えない」)。変化が速くなるほど、確かめる時間がなくなります。
世界に どうひびくか
各社は「まだその段階には達していない」としていますが、AIがプログラムを書く割合はすでに大きくなっています。開発を競う理由(他国・他社に遅れたくない)と、止める理由(確かめる時間がほしい)がぶつかっており、国連の場の呼びかけ(第39号)、企業の自主的な約束(第40号)、各国政府の組織づくり(第41号)と、ルールづくりが同時に進んでいます。
うちの子に どうかかわるか
子どもにとって大事なのは、こわがることではなく「便利なものほど、だれがどう確かめているか」を考える習慣です。宿題でAIを使うときも、答えを自分の言葉で説明できるかを家の決まりにすると、「中身を確かめる」練習になります。
親子で話す問い
自分よりかしこいロボットを、ロボットが作れるようになったら、人間は何をすればいいと思う?
出典:ニューズウィーク日本版(ロイター通信、2026年10月15日)、NHK「NHKニュース7」(2026年10月14日)、ビジネス+IT(2026年10月1日、9月28日公開の論文について)(2026年10月15日 確認)。
なにが あったのか
10月6日から9日には、デジタル大臣や警察庁、個人情報保護委員会など国の8機関が注意をよびかけ、その後もローソン(会員ID約215万件)、自治体の防災メールのシステム会社(最大約300万件のおそれ)、広島県警察の職員の情報と、公表が続いています。NHKが10月14日に伝えた世論調査で、個人情報の流出に「不安を感じる」と答えた人は77%にのぼりました。同じ日には、警察でも個人情報が漏えいした可能性が明らかになったと報じられました。国の研究機関が、相次ぐ不正アクセスの分析を進めていることも伝えられています(NHK)。
なぜ ニュースなのか
9月から、飲食チェーン、証券会社の委託先、大学、自治体が使うサービスなど、業種を問わず流出が続いています。入り口は、委託先など会社の外とのつながり、古いソフトのすき間、人をだますメールと、さまざまです。ひとつの会社が気をつけるだけでは防ぎきれないことが、不安の大きさにつながっています。
世界に どうひびくか
流れ出た名前や電話番号は、なりすましの電話やメールに使われることがあります。第41号のニセ警察詐欺のように、本物の情報を見せて信用させる手口があるからです。くわしい原因と一覧は「なぜ情報流出が相次ぐの?」にまとめています。
うちの子に どうかかわるか
家でできることは3つです。パスワードの使い回しをやめる、2段階認証を設定する、「お知らせ」を名乗るメールのリンクは押さず、公式のアプリやサイトから確かめる。子どものゲームや学習アプリのアカウントも同じです。
親子で話す問い
自分の名前や学校の名前を、ネットに書いてもいい場面と、書かない方がいい場面は?
出典:NHKニュース(2026年10月14日)(2026年10月15日 確認)。
なにが あったのか
JR東日本など鉄道7社が、2027年春から券売機の磁気のきっぷをQRコードのきっぷに切りかえると発表しました。文部科学省は、デジタルの形をふくむ教科書にのせる動画を1本3分程度とし、総時間にも上限を設ける案を示しました(時事通信)。大阪大学やNASAなどは、アミノ酸の右手型・左手型をAIで1分子ずつ識別する方法を発表しました。
なぜ ニュースなのか
3つに共通するのは、デジタルを「どこまで使うか」を決める話だということです。きっぷは、こわれやすい機械を減らすためにデジタルへ。教科書は、動画に頼りすぎないように上限を。研究は、人の目では追いきれない小さな変化をAIで読み取ります。使う・使わないではなく、どこで使うかが問われています。
世界に どうひびくか
QRコードは1994年に日本で生まれ、汚れても読める「誤り訂正」のしくみと、特許を開放したことで世界に広がりました。日本発の技術が、生まれた国の駅に戻ってくる形です。
うちの子に どうかかわるか
駅に行ったら、今の磁気のきっぷの裏を見せてあげてください。なくなる前のものを見ておくと、変化がニュースではなく「自分の体験」になります。QRコードは、知らない人が貼ったものを読まない約束もあわせて。
親子で話す問い
学校で、動画で学ぶのがいいことと、自分でやってみた方がいいことは何だろう?
出典:鉄道7社の発表(2026年10月13日)を伝えたImpress Watch・ASCII、時事通信(2026年10月13日)、読売新聞(2026年10月14日)(2026年10月15日 確認)。
なにが あったのか
アメリカの電気自動車メーカーテスラは、アメリカ時間の10月15日夜(日本時間16日朝)、テキサス州マクレガーにあるスペースX(宇宙ロケットの会社)の試験場で、新しいスポーツカー「ロードスター」を公開しました。車は、半分だけの「さかさまのジェットコースター」のような坂を、床にすいつくようにして走り上がり、さかさまの向きで飛び出し、空中で向きを直して4つのタイヤで着地しました。止めてある車やトラックの上を短く飛びこえる「ショートバースト飛行(短い時間だけの飛行)」も見せています。このときは人は乗っておらず、遠くから操作していました。
イーロン・マスク社長は、生産を2028年に始めると話しました。ロードスターは2017年11月に予告されてから、発売の予定が何度ものびてきた車です。
なぜ ニュースなのか
飛ぶしくみは、ぎゅっとおしこめた空気を、ノズル(ふき出し口)から勢いよくふき出すことです。燃料を燃やさないので「コールドガス(冷たいガス)スラスター」とよばれ、スペースXが宇宙でロケットの向きを細かく変えるのに使っている技術です。空気を後ろにふき出すと、車は反対の前や上へおされます。ふくらませた風船の口をはなすと、風船が飛んでいくのと同じしくみです。
4年生の理科「とじこめた空気」では、おしちぢめた空気ほど、強くおし返すことを学びます。その力を、うんと大きくして車を動かしているのです。
世界に どうひびくか
ただし、ここで見せたのは特別な場所での実演です。アメリカの航空の役所(FAA)に届けて、会場のまわりを飛行機が飛べない区域にしたうえで行われました。飛べる車がふつうの道路を走ってよいのか、だれが運転してよいのかといった決まりについて、テスラはまだ説明していません。2017年に発表された値段は、基本の車で20万ドル(日本円で3,000万円ほど)でした。
テスラは車の売れゆきが2年続けて落ちていて、人の形をしたロボット「オプティマス」など、ロボットとAIに力を入れています。ニュースの見出しに「空飛ぶ車」とあっても、「発表」「実演」「発売」はそれぞれちがうことを、ここで覚えておきましょう。
空飛ぶ車は、むかしから子どもの夢でした。じつは「空飛ぶ車」には2つの方向があります。テスラは空気の反動で一瞬うくスポーツカー。日本などで開発が進む「空飛ぶクルマ」は、電気でプロペラを回して垂直に離着陸する機体(eVTOL)です。2025年の大阪・関西万博では、SkyDriveの機体が、パイロットを乗せずに高さ4メートルほどを3分間飛ぶデモ飛行を行い、大阪港の離着陸場でも飛びました(2025年7月31日〜9月23日)。どちらも、どこを飛んでよいか・だれが運転してよいかという決まりづくりが、これからの大きな課題です。1989年の映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』に出てくる「2015年の未来」では、車が空を飛んでいました。映画の未来はもうすぎましたが、本物の空飛ぶ車は、いまようやく形が見えてきたところです。くわしくは「空飛ぶ車って、もう乗れるの?」にまとめています。
うちの子に どうかかわるか
家で、風船ロケットを作ってみてください。部屋の両はしに糸をはり、ストローを通しておきます。ふくらませた風船の口を指でおさえたまま、セロハンテープでストローにはりつけ、指をはなすと、風船は空気をふき出した向きと反対へ走ります。風船を大きくふくらませたときと、小さいときで、進むきょりをくらべると、「おしこめた空気が多いほど、強くおす」ことが体でわかります。
親子で話す問い
空を飛べる車がふつうに売られるようになったら、どんな決まりが必要だと思う?
出典:Investing.com(2026年10月16日)、CNBC(2026年10月15日)、Yahoo!ファイナンス米国版(2026年10月16日)、Gizmodo(2026年10月15日)、SkyDriveの発表(2025年7月31日・10月9日、LOGISTICS TODAY)、オースティン・アメリカン・ステーツマン(2026年10月15日)(2026年10月16日 確認)。加速の数字は報道によってちがうため、のせていません。
時事問題としては、次の形で問われる可能性があります。
❶ 理由を書く問題 「AIの研究者や企業が、AIの開発の減速を呼びかけているのはなぜか。30字以内で書きなさい」→「AIの変化が速すぎて、人間が安全かどうか確かめられなくなるから。」
❷ 対策を書く問題 「個人情報の流出による被害を防ぐために、個人ができることを2つ書きなさい」→「パスワードを使い回さない」「2段階認証を設定する」「不審なメールのリンクを開かない」など。
❸ 比べる問題 AIのルールの作り方(国連での呼びかけ・企業の自主的な約束・法律・政府の組織)を、だれが決めるか、守らせる力があるかで比べる。
❹ しくみを説明する問題 「テスラの新しい車は、おしこめた空気をふき出して空中に浮きました。空気をふき出すと車が反対向きに動くのはなぜか。身近な例をあげて説明しなさい」→「ふき出した空気が車をおし返すから。風船の口をはなすと、空気が出るのと反対に風船が飛ぶのと同じ。」
中学入試の時事の整理は2026年10月の時事問題まとめにあります(QR乗車券は⑳、デジタル教科書は㉒)。
家で使っているサービスのうち1つだけ、今週中に2段階認証を設定してください。子どもと一緒に設定すると、「確かめるしくみ」を体で覚えられます。
週刊小学生しんぶん10月16日号の「デジタルのなぜ⑧ QRコードは、なぜ かざすだけで 読めるの?」(1・2年生版)、5・6年生版(誤り訂正と2進法)で、学年別に解説しています。QRコードのしくみは、なぞときで読む「QRコードのなぜ」でも親子で読めます。
その週のニュースだけでは分からないことは、しくみのほうから読むと早いです。どれも、親が説明できるようになることを目標に書いています。