スクールコンパス > 小学生しんぶん > 週刊AI・ITニュース > 2026年 第41号

週刊 AI・ITニュース 2026年 第41号(10月5日〜11日)

AIで作ったニセの写真や動画は、
なぜ見ぬきにくいのか

2026年 第41号

先週の第40号では、アメリカの大統領とAI企業の「安全の約束」と、AIが危ないことがある3つの理由を伝えました。今週は、AIが私たちの目と耳をだますニュースが続きました。大雨のニセの予測画像、警察官のふりをしたビデオ通話。「なぜ見ぬきにくいのか」「では、どう確かめればいいのか」を順に考えます。あわせて、アメリカ政府がつくったAIの「司令塔」と、相次ぐ情報流出も取り上げます。

1. 大雨のニセ画像、ニセ警察官のビデオ通話。AIで作ったニセものは、なぜ見ぬきにくい?

なにが あったのか

線状降水帯や台風で大雨が続いたこの夏、SNSでは「人工的に豪雨が起こされている」「気象が操作されている」といった偽情報や、AIで作った偽の天気予報の画像が広がりました。NHKは10月3日、こうした大雨のフェイクを検証して伝えました。

また、ニセ警察詐欺では、犯人がLINEなどのビデオ通話に誘い、制服姿で偽の警察手帳や、本人の名前の入った偽の逮捕状を見せて、お金をだまし取ろうとします。警察庁や各地の警察は、本物の警察がビデオ通話で警察手帳や逮捕状を見せることはないと注意を呼びかけています。

なぜ ニュースなのか

なぜ見ぬきにくいのでしょうか。生成AIは、大量の本物の写真や動画から「本物らしさ」の特徴を学び、その特徴に合う新しい画像を作ります。学習が進むほど、指の数がおかしい、影の向きがちがう、といった見た目のほころびは減っていきます。つまり、「よく見れば分かる」という方法には限りがあるのです。

なぜ広がりやすいのでしょうか。アメリカのMITの研究(Science誌、2018年)は、SNSでうそのニュースが本当のニュースより速く、遠くまで広がることを示しました。「びっくり」「こわい」と感じた人ほど、すぐにだれかに伝えたくなるからです。大雨のように不安が大きいときほど、ニセの情報は広がりやすくなります。

世界に どうひびくか

画像そのものを見分ける技術も研究されていますが、作る側の技術も進むため、追いかけっこが続きます。そこで大事になるのが、中身ではなく「出どころ」を確かめる考え方です。

❶ 発信者:気象庁・自治体・報道機関などか、名前の分からない人か
❷ 裏付け:ほかの報道機関も同じことを伝えているか
❸ 発信者のルール:たとえば「警察はビデオ通話で手帳を見せない」「気象庁は大雨の情報を自分のサイトで出す」と知っていれば、どれほど本物そっくりでも、ルールに合わないものは疑えます。

うちの子に どうかかわるか

子どもに「見分け方」を教えるより先に、「びっくりした時ほど、ひろめる前にひと呼吸」を家の約束にするのがおすすめです。

そして、家族の中で「お金の話が出たら、だれからでも、いったん電話を切って家族に話す」を決めておきます。だまそうとする側は、急がせて考える時間をうばうのが手口です。

親子で話す問い
びっくりする写真を見たら、まずだれに見せる? その前に、何を確かめる?

出典:NHK「「人工的に豪雨が…」大雨フェイクを検証 AIで偽の予測画像も」(2026年10月3日)、警察庁「実録 ニセ警察詐欺の手口」、宮城県警察「ニセ警察詐欺多発中」、Vosoughi, Roy, Aral「The spread of true and false news online」Science(2018年)(2026年10月8日 確認)。

2. アメリカ政府がAI政策の「司令塔」SIフォースを設置。AIを「SI(超知能)」と呼ぶ大統領令も

なにが あったのか

トランプ米大統領は10月4日、連邦政府のAI政策を調整する作業部会「スーパー・インテリジェンス・フォース(SIF)」の設置を発表しました。国家情報長官が率い、連邦取引委員会(FTC)の委員長らとともに、消費者や宗教団体、電気・水道などの重要インフラの事業者、AI企業との対話を調整します。報道によると、AIの危険と機会、政府の役割について120日以内に報告するとされます。

同じ日、大統領令で、政府の中ではAI(人工知能)のかわりに「SI(超知能)」と呼ぶよう指示しました。

なぜ ニュースなのか

先週の第40号の「AI企業の自主的な安全の約束」に続き、政府の側にも調整役ができた形です。AIのルールの作り方は、企業の自主管理、法律(EUのAI法)、そして政府の調整組織と、手段が並んできました。

呼び名を変えることにも意味があります。同じ技術でも、呼び方が変わると受け取る印象や議論の中身が変わることがあるからです。

世界に どうひびくか

アメリカは「AIで世界をリードし続ける」ことを目的に掲げています。一方で、国連の場では22か国とEUが「最先端のAIは人間の管理の下に」と呼びかけています(第39号)。競争と安全をどう両立するかが、各国に共通する問いです。

うちの子に どうかかわるか

ニュースで新しい言葉(SI、超知能)が出てきたら、「前の言葉と中身は同じ? ちがう?」と子どもと確かめてみてください。言葉が変わっても中身が同じことはよくあります。

親子で話す問い
「AI」と「超知能」、どちらの言葉を聞くとこわく感じる? それはなぜ?

出典:NHK「トランプ大統領 AI政策を調整する司令塔組織を設立」(2026年10月5日)、テレビ東京(2026年10月5日)、NOVAIST(ロイター通信の報道をもとに、2026年10月6日)(2026年10月8日 確認)。

3. 情報流出のニュースが相次ぐ ── 飲食チェーン、証券会社の委託先、大学のシステム障害

なにが あったのか

10月4日〜5日には、飲食チェーン「焼肉きんぐ」の運営会社でユーザー情報1000万件余りの漏えい、大和証券の委託先サーバーへの不正アクセスで約11万人分の個人情報が流出した可能性、大阪公立大学のシステム障害がランサムウエアによるサイバー攻撃の疑いなどが、続けて報じられました(NHK)。

なぜ ニュースなのか

大きな会社でも防ぎきれないのは、委託先など会社の外とのつながりや、古いソフトのすき間、人をだますメールなど、入り口がたくさんあるからです。くわしい原因と、9月からの流出の一覧は「なぜ情報流出が相次ぐの?」にまとめています。

世界に どうひびくか

情報が漏れると、その情報を使ったなりすましのメールや電話が届きやすくなります。1本目のニセ警察詐欺も、名前や口座など本物の情報を示して信用させる手口です。

うちの子に どうかかわるか

家で使っているサービスのパスワードの使い回しをやめ、2段階認証を設定しておきましょう。「お知らせ」を名乗るメールのリンクは押さず、公式のアプリやサイトから確かめる習慣をつけます。

親子で話す問い
同じパスワードをいろいろな所で使うと、何が困ると思う?

出典:NHKニュース(2026年10月4日・5日)(2026年10月8日 確認)。

📝 中学入試では、こう出ます

時事問題としては、次の形で問われる可能性があります。

❶ 理由を書く問題 「SNSで偽の情報が広がりやすいのはなぜか。受け手の気持ちにふれて40字以内で書きなさい」→「驚きや不安を感じた人が、確かめる前にすぐ他の人に伝えたくなるから。」
❷ 対策を書く問題 「偽の情報にまどわされないために、受け手ができることを2つ書きなさい」→「発信者がだれかを確かめる」「ほかの報道機関も伝えているか確かめる」「広める前に立ち止まる」など。
❸ 比べる問題 AIのルールの作り方(企業の自主管理・EUのAI法・政府の調整組織)を、長所と短所で比べる。

メディアリテラシーは社会でも国語でも出ます。中学入試の時事の整理は2026年10月の時事問題まとめの⑭にあります。

🎒 今週、家で1つやること

「びっくりした時ほど、ひろめる前にひと呼吸」と「お金の話が出たら、いったん電話を切って家族に話す」の2つを、家族の約束にしてください。

週刊小学生しんぶん10月9日号の「デジタルのなぜ⑦ AIで つくった ニセの しゃしんは、なぜ 見ぬきにくいの?」(1・2年生版)、5・6年生版で、学年別に解説しています。ネットの情報の見分け方は、きょうのかがく(10月12日)でも親子で読めます。

ニュースのしくみを、もう少し知る(14本)

その週のニュースだけでは分からないことは、しくみのほうから読むと早いです。どれも、親が説明できるようになることを目標に書いています。

親のAIはじめて体験小学生とAIとの付き合い方デジタルはかせ検定学校のタブレットが家に来たらわが家のデジタル年表AIは、なぜ堂々とまちがえるの?日本は、AIのことをどう決めているの?QRコードは、なぜ白黒のもようだけで読めるの動画サイトは、なぜ「次はこれ」がわかるの?シンガポールは、なぜ国ぐるみでAIをやるの?プログラミング教室はいつから?たのみ方の練習小学生のスマホデビュー小学生のタイピング練習

IT・AIがわからない親のための入口 →

🗂 これまでの号

2026年 第41号 AIのニセ画像はなぜ見ぬけない?と米政府のAI司令塔 2026年 第40号 米大統領とAI大手6社の安全の約束と、AIはなぜ危ないのか 2026年 第39号 子ども法案KIDSの中身と、AIを人が管理する呼びかけ 2026年 第38号 子どものSNSとAIに年齢のルール(EU) 2026年 第37号 AIが作った絵に印をつける決まり(EU)

→ いちばん新しい号と、AIニュースの読み方

🧭 関連する入口