くり下がりの引き算ができない子への教え方|つまずきは引き算の手前にあります
本当の原因は、その手前にある10の分解です。「10は1と9」「10は2と8」が即座に出てこないと、13−9を10と3に分けたところで、10から9を引く段階で止まります。
まずここを確かめてください。曖昧なら、引き算の練習をいったん止めて10の分解に戻る。遠回りに見えて、これがいちばん早い道です。
「たし算はできるのに、引き算だけできない」
くり上がりのたし算は乗り越えたのに、引き算に入った途端に止まる。宿題に時間がかかり、指を折り、それでも間違える。1年生の秋から冬にかけて、多くのご家庭がここで手が止まります。
ここで「引き算の練習を増やす」と、たいてい長期戦になります。原因が引き算の外側にあるからです。
くり下がりの計算は、実は3つの力の組み合わせでできています。
| 必要な力 | 例(13−9の場合) | ここが弱いと |
|---|---|---|
| ① 数を10と幾つに分ける | 13を10と3に分ける | そもそも計算が始まらない |
| ② 10の分解 | 10から9を引いて1 | 途中で止まる。いちばん多い原因 |
| ③ 小さい数のたし算 | 1と3を足して4 | 最後で間違える |
つまり、答えが出ないときは①②③のどこで止まっているかを見るのが先です。どこで詰まっているかによって、やることがまったく変わります。
まず確かめる:10の分解
紙も鉛筆もいりません。口頭で30秒です。
「10は、1と いくつ?」→ 9
「10は、3と いくつ?」→ 7
「10は、6と いくつ?」→ 4
「10は、8と いくつ?」→ 2
考え込まずに即答できるかを見てください。 メモ:指を折って数えている、3秒以上かかる、という状態なら、ここが原因です。引き算の練習より先に、この10の分解を毎日1分やるほうが効きます。
10の分解は、くり上がりのたし算でも使っています。ただ、たし算では「9に1足すと10」という向きで使うのに対し、引き算では「10から9を引くと1」という逆向きで使います。同じ知識でも、向きが変わると出てこないことがあるのです。
ですので、たし算ができているからといって、10の分解が両方向で入っているとは限りません。ここは必ず確認してください。
2つの計算の仕方(減加法と減々法)
文部科学省の学習指導要領解説算数編では、くり下がりのある引き算の計算の仕方として、被減数の分解の仕方によって二通りが示されています。
減加法:10から引いて、残りを足す
① 12 を 10 と 2 に分ける
② 10 − 7 = 3
③ 3 + 2 = 5
ブロックで言えば、10のまとまりのほうから取っていく方法です。
減々法:順々に引いていく
① 7 を 2 と 5 に分ける
② 12 − 2 = 10
③ 10 − 5 = 5
ブロックで言えば、端数のほうから取っていく方法です。
同解説では、どちらを主にして指導するかは、数の大きさに従い柔軟に対応できるようにすることを原則とするが、児童の実態に合わせて指導することが大切だとされています。
出典(一次情報):小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編/文部科学省
家庭ではどちらで教えるか
そのうえで、家庭で1つに絞るなら減加法が扱いやすい場合が多いです。理由は3つあります。
- 手順が常に同じ。どんな数でも「10から引いて、残りを足す」で通せます。減々法は引く数を分解する必要があり、数によって分け方が変わります。
- 引く数が大きいときに強い。13−9のように引く数が大きいと、減々法では9を3と6に分けることになり、手数が増えます。
- 筆算につながる。2年生の筆算は「上の位から借りてくる」考え方なので、10のまとまりを崩す減加法の感覚がそのまま生きます。
ただし、引く数が小さいとき(12−3など)は減々法のほうが楽です。最終的には数によって使い分けられるのが理想ですが、1年生の段階では1つの型を固めるほうが混乱しません。
ブロックで型を作る(5分)
手順を口で説明しても入りません。手を動かしながら、同じ動きを繰り返すのがこの単元のやり方です。
13 − 9 をやってみます。
1. ブロックを10個のかたまりと、3個に分けて置く
2. 「どっちから9個取れそう?」と聞く(10のほうを選ばせる)
3. 10のかたまりから9個取る。残り1個
4. 残った1個と、はじめの3個を合わせる。4個
5. 「13−9は4だね」と式に戻す メモ:2で「どっちから取る?」と聞くのが大切です。大人が指示すると作業になりますが、選ばせると理由が残ります。3個からは9個取れない、という気づきが型の理由になります。
この5分を、数字を変えて3日続けてください。14−8、12−5、15−7。同じ動きを繰り返すうちに、ブロックなしでも頭の中で同じ手順を辿れるようになります。
指を使う子への対応
「いつまで指を使うのか」は、この時期によく出る心配です。結論から言えば、無理にやめさせる必要はありません。
指は、いつでも手元にある具体物です。10という数を体で扱える点でも優れています。学習指導要領解説でも、この段階の計算は具体物を用いた活動を通して理解を確実にすることが大切だとされています。
ただし、指だけに頼っていると次の2点で行き詰まります。
- 10を超える数を一度に扱えない
- 「10のまとまり」という見方が育ちにくい
ですので、禁止するのではなくより扱いやすい道具に置きかえていく順番で進めてください。ブロック、おはじき、10個で1本になる棒。10のまとまりが目に見える教具が向いています。
「指だと10までしか数えられないね。これ使うと、もっと大きい数もできるよ」
禁止ではなく、便利な道具の紹介として渡すのがコツです。
1週間の練習手順
| 日 | やること | 時間 |
|---|---|---|
| 1〜2日目 | 10の分解だけ。口頭で即答できるまで | 1分×2回 |
| 3日目 | 13を10と3に分ける練習(引き算はまだしない) | 3分 |
| 4〜5日目 | ブロックで減加法の型。数字を変えて3問ずつ | 5分 |
| 6〜7日目 | ブロックなしで5問。手順を口に出させる | 5分 |
ポイントは3日目までは引き算をしないことです。土台が固まっていない状態で計算を繰り返すと、失敗の経験だけが積み上がります。急がば回れが、この単元にはよく当てはまります。
6〜7日目の「手順を口に出させる」も外さないでください。「13を10と3に分けて、10から9を引いて1、1と3で4」。言えるということは、手順が頭の中にある証拠です。答えだけ合っている状態とは、質が違います。
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つまずきの場所を、3問で特定する
「くり下がりができない」と一言で言っても、止まっている場所は子どもによって違います。次の3問を口頭で出すと、5分で見分けられます。
| 出す問題 | できなければ | やること |
|---|---|---|
| 「10は6と いくつ?」 | 10の分解が未定着 | 引き算を止めて、10の分解を毎日1分 |
| 「13は10と いくつ?」 | 数を10と幾つに分ける力が未定着 | ブロックで10のまとまりを作る練習 |
| 「1と3を あわせて いくつ?」 | 最後のたし算でつまずいている | 小さい数のたし算に戻る |
3問とも即答できるのに13−9で止まるなら、3つをつなぐ手順が身についていないだけです。この場合はブロックでの型づくりだけで進みます。
逆に、1問目で止まるなら、引き算のプリントを何枚やっても変わりません。どこに戻るかが分かれば、かける時間は短くなります。
1年生の秋から冬にかけての進み方
くり下がりは、1年生の中でも山になる単元です。この時期は、同時にいろいろなことが重なります。
- 宿題の量が増える。計算カード、音読、プリント。家庭での学習時間そのものが長くなります。
- できる子との差が見えはじめる。本人が「自分は算数が苦手だ」と思いはじめる最初の時期です。
- 疲れが出る。入学から半年以上が経ち、集中が続きにくくなります。
ですので、算数だけを取り出して詰めるのは得策ではありません。1日5分で足ります。むしろ、できた日にきちんと反応するほうが、この学年では効きます。
「算数が苦手」という自己認識を、1年生のうちにつくらせないこと。
くり下がりは、時間をかければ必ずできるようになる単元です。ここで嫌いになるほうが、はるかに大きな損失になります。できない日は切り上げる判断を、大人が持っていてください。
2年生の筆算につなげる
くり下がりは、1年生で終わる単元ではありません。2年生では2位数の減法、3年生では3位数や4位数の減法へと進み、そのたびに同じ考え方を使い回します。
学習指導要領解説では、整数の加法や減法について、十進位取り記数法に着目してそれぞれの位ごとに計算することで、多数桁の計算が第1学年で学習した加法や減法の計算に帰着できることを理解させる、とされています。
つまり、1年生のくり下がりが、そのまま何年も使われるということです。ここを曖昧なまま通過すると、2年生の筆算で必ず戻ってくることになります。
逆に言えば、いま時間をかける価値がとても高い単元です。数か月かかっても構いません。2年生の筆算が始まるまでに型が固まっていれば十分です。
それでも進まないと感じるとき
数週間続けても手応えがない、本人が算数の時間を強く嫌がるようになった。そうした場合は、家庭だけで抱えないでください。
まず担任の先生に、授業中の様子をうかがってみてください。どの段階で止まるのか(10の分解か、分ける作業か、最後のたし算か)を伝えられると、学校でも同じ場所を見てもらえます。
伝え方は連絡帳のお願い・相談の書き方、面談での聞き方は個人面談で聞くこと・話すことリストにまとめています。
よくある質問
Q. くり下がりの計算は、どのやり方で教えるのがよいですか?
文部科学省の学習指導要領解説算数編では、10から引いて残りを加える減加法と、順々に引いていく減々法の二通りが示されています。どちらを主にして指導するかは、数の大きさに従い柔軟に対応できるようにすることを原則としつつ、児童の実態に合わせて指導することが大切だとされています。家庭では、まず減加法を一つの型として固定するのが分かりやすい場合が多いですが、学校で習ったやり方と食い違うと混乱するため、教科書やノートを確認してから合わせてください。
Q. 指を使って計算するのをやめさせるべきですか?
無理にやめさせる必要はありません。指は目に見える具体物であり、10という数を体で扱える便利な道具です。ただし、指だけに頼っていると10を超える数を扱いにくくなるため、ブロックやおはじきなど、10のまとまりが見える教具に少しずつ置きかえていくのがおすすめです。禁止するのではなく、より扱いやすい道具を渡す、という順番で進めてください。
Q. たし算はできるのに引き算だけできません。
引き算そのものではなく、その手前にある10の分解が定着していないことが多くあります。10は1と9、2と8、3と7というように、即座に言えるかを確認してみてください。ここが曖昧なままだと、13−9を10と3に分けても、10から9を引く段階で止まってしまいます。引き算の練習をいったん止めて、10の分解だけを数日やり直すほうが、結果的に早く進みます。
Q. 答えは合っているのに、時間がかかります。
1つずつ数えて引いている可能性があります。数え引きでも答えは出ますが、2年生以降の筆算では桁数が増えるため、そのやり方では追いつかなくなります。急がせるのではなく、10のまとまりから引く型に置きかえてください。型が固まると、速さは後から自然についてきます。この段階でタイムを競わせるのは逆効果です。
今日からの5ステップ
- ☑ 10の分解を30秒でチェックした
- ☑ 教科書で学校のやり方を確認した
- ☑ ブロックで「どっちから取る?」と聞いた
- ☑ 手順を口に出して言わせた
- ☑ タイムを計るのをやめた