九九が覚えられない子への教え方|つまずく段の順番と1日5分の練習法
① 覚える順番を、2と5の段 → 3と4の段 → 6〜9の段 → 1の段に変える
② 交換法則を教える。3×7と7×3は同じなので、覚える数は実質半分になる
③ 唱えるだけをやめる。「唱える・書く・使う」の3つに分けて1日5分
とくに③が効きます。唱える練習だけで止まっていると、忘れたときに自力で戻れなくなります。
「毎日やっているのに入らない」のは、量の問題ではありません
九九の表を貼り、お風呂で唱えさせ、車の中でも聞かせている。それでも7の段だけ止まる。この時期、多くのご家庭が同じところで足踏みします。
ここで練習量をさらに増やすと、たいてい逆効果になります。子どもは「がんばっているのにできない」という経験を積み、算数そのものを避けるようになるからです。
手を入れるべきはやり方の中身です。九九が入らないときの原因は、だいたい次の3つに分かれます。どれに当てはまるかで、打つ手が変わります。
| 状態 | 起きていること | 効く手 |
|---|---|---|
| 答えが出てこない段がある | 出会う回数が足りていない | 覚える順番を変える/交換法則を使う |
| 唱えられるのに問題が解けない | 意味と結びついていない | おはじきや図で意味に戻す |
| 間違いに気づかない | 答えを確かめる手段がない | 自分で確かめる方法を持たせる |
まず、九九が何を表しているかに戻る
文部科学省の学習指導要領解説算数編では、乗法は一つ分の大きさが a のものの b 個分の大きさ、あるいは b 倍に当たる大きさを求める計算として意味付けられ、素朴には a を b 個だけ加えること(同数累加)によって、その大きさを求めることができる、とされています。
そして同じ解説は、九九の学習について次のように述べています。例えば3×4の場合、その結果が12であることを乗法の意味から考えることと、その結果を「さんしじゅうに」と唱え習熟させることの両方が必要である、と。
出典(一次情報):小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 算数編/文部科学省
つまり、唱える練習だけでは半分しかやっていないということです。忘れたときに「3が4つ分だから、3、6、9、12」と自分で戻れる子は、その場で立て直せます。唱えるだけの子は、忘れたら止まります。
おはじきや積み木を3個ずつ、4つのかたまりに分けて置く。
「3が4つ分だね。ぜんぶで何個?」と数えさせる。
「これが 3×4 だよ。答えは12。」
同じことを 4×3 でもやってみる(4個のかたまりが3つ分)。
どちらも12になることを、目で見せる。 メモ:この5分を1回やっておくと、後の練習の意味が変わります。式と、目の前の数の並びがつながった瞬間から、忘れても戻れるようになります。
覚える順番を変える
教科書の並び順とは別に、家庭での復習であれば入りやすい順番があります。おすすめは次の順です。
| 順番 | 段 | 理由 |
|---|---|---|
| 1 | 2の段・5の段 | 答えの並びに規則が見つけやすく、唱えやすい。日常でも出会う回数が多い |
| 2 | 3の段・4の段 | 2の段が入っていれば、答えの増え方が見通せる |
| 3 | 6の段・7の段・8の段・9の段 | ここが本番。交換法則を先に教えてから入る |
| 4 | 1の段 | いちばんやさしいので最後で足りる |
ポイントは、1つの段を完璧にしてから次へ、という進め方をしないことです。2の段だけを何日も続けると飽きます。2の段と5の段を交互に触れるほうが、同じ時間でも定着します。
9の段は、実は6・7・8より入りやすいことがあります。答えの十の位が1ずつ増え、一の位が1ずつ減るという並びに気づけるからです。9×3=27、9×4=36、9×5=45。ここに気づいた子は、9の段を楽しみはじめます。
7の段と8の段が最後まで残る理由
ほぼすべての子が、最後にここで止まります。理由は2つあります。
- 音が言いにくい。「しちは ごじゅうろく」「はちしち ごじゅうろく」。似ていて、口が回りません。
- 出会う回数が少ない。2個ずつ、5個ずつ数える場面は日常にありますが、7個ずつ8個ずつ数える場面はほとんどありません。
ここで効くのが交換法則です。かける数とかけられる数を入れかえても答えは同じ、という性質です。
7×3 が出てこなくても、3×7 を覚えていれば答えは同じ21です。
8×4 が出てこなくても、4×8 を覚えていれば32です。
つまり、得意な段から引き出せるようにしておけば、7と8の段を丸ごと覚え直す必要はありません。この事実を子どもに伝えるだけで、表情が変わることがあります。
本当に覚えなければならないのは、7×7、7×8、8×8 のような、入れかえても逃げられない組み合わせだけです。数えてみると、そこまで多くありません。
なお、学習指導要領解説では、九九表を扱う際に1の段を加えて九九表が完全になるように補完して捉えるという考え方が示されています。表を眺めて規則を見つける活動そのものが、九九の理解を支えます。答えを隠して埋めさせるより、並んだ数を眺めて「気づいたこと」を言わせるほうが、この時期は効果的です。
1日5分の組み立て方(唱える・書く・使う)
時間を増やすのではなく、中身を3つに分けます。合計5分で構いません。
① 唱える(2分)
今日の段を、上からと下からの両方で唱える。下から唱えると、順番に頼れなくなり実力が見えます。
② 書く(2分)
バラバラの順で10問だけ書く。声に出せても書けない子は多く、書く練習は別に必要です。
③ 使う(1分)
「おかしが1袋に6個。4袋で何個?」のような問題を1問だけ出す。式に直せるかを見ます。 メモ:③を毎日1問入れるのが、いちばん差が出ます。文章から式に直す力は、3年生以降の文章題に直結します。
できた段は、カレンダーや紙に印をつけて見えるようにしてください。残りが減っていくのが見えると、続きます。
📝 その場で採点できる無料ドリル
書く練習は、丸つけまで自動でできると続きます。九九から筆算まで、登録不要でその場で解けます。
✖️ かけ算の練習問題(九九から筆算まで・自動採点) → ➕ 足し算の練習問題(くり上がり対応) → ➗ わり算の練習問題(あまりのあるわり算も) →タイプ別・効く手立て
同じ「九九が入らない」でも、様子によって効く手が違います。お子さまがどれに近いか、見当をつけてから手を打ってください。
タイプA:唱えられるのに、書けない・答えられない
お風呂では言えるのに、テストになると出てこない。このタイプは、唱える順番に頼っている状態です。「にいちが2、ににんが4……」と頭から順に辿らないと出てこないため、バラバラに聞かれると詰まります。
効く手は2つ。下から唱える練習と、バラバラ出題です。カードに1問ずつ書いてシャッフルすると、順番の助けがなくなり、実力が見えます。最初は時間がかかりますが、ここを通ると本物になります。
タイプB:特定の段だけ抜ける
6・7・8のどれかだけが残る、という状態です。全体は入っているので、残った段だけに絞って構いません。全部を毎日通すのはやめて、その段と、交換法則で言いかえられる相手の段だけを触ります。
この段階では、1日3分で十分です。むしろ短くして毎日続けるほうが早く仕上がります。
タイプC:答えが毎回変わる・自信がなさそう
同じ問題で違う答えを言う、答えたあとに大人の顔色を見る。このタイプは、確かめる手段を持っていないことが多いです。
ここで渡したいのが「1つ手前から足す」方法です。6×7が出てこなければ、6×6=36を思い出して6足す。この戻り方を1回教えるだけで、自分で確かめられるようになります。正解を教えるより、確かめ方を渡すほうが長く効きます。
九九の表を、答え合わせ以外に使う
九九の表は、答えを調べるためだけの道具ではありません。眺めて規則を見つける教材として使うと、理解が一段深まります。
- 同じ答えを探す。12は2×6、3×4、4×3、6×2に出てきます。「同じ答えがいくつある?」と聞くと、交換法則に自分で気づきます。
- 斜めを見る。1×1、2×2、3×3……と斜めに並ぶ数(1、4、9、16……)の増え方に気づく子がいます。
- 段ごとの増え方を見る。2の段は2ずつ、5の段は5ずつ。増え方が段の数と同じであることに気づくと、忘れた答えを足し算で作れるようになります。
この「気づいたことを言わせる」時間は、答えを覚える時間より価値があります。自分で見つけた規則は忘れません。
やってしまいがちなこと3つ
兄弟がいるご家庭・共働きのご家庭で
毎日5分でも、その5分を確保するのが難しい日はあります。無理に毎日を目指すより、続けられる形に落とすほうが結果が出ます。
- 移動中に唱える。車の中、歩いている途中。書けなくても、唱えるだけなら場所を選びません。
- 上の子に出題させる。問題を出す側も復習になります。上の子にとっては教える経験になり、下の子にとっては大人よりも気楽です。
- 週末にまとめて書く。平日は唱えるだけ、書く練習は週末に。分けて構いません。
大切なのは、やらない日があっても再開できることです。「毎日やる」と決めて2日空いた瞬間にやめてしまうより、「週に4日できればよい」としておくほうが、結果的に長く続きます。
覚えたあと、次につながること
九九は、それ自体がゴールではありません。学習指導要領解説では、第2学年で構成した乗法九九の性質が、3年生で学習するかけ算の筆算やわり算につながっていくという位置づけになっています。
つまり、九九が曖昧なまま3年生に進むと、筆算とわり算の両方で同時に苦しくなります。逆に言えば、ここで時間をかける価値がいちばん高い単元だということです。2年生のうちに、あと一歩まで持っていければ十分です。
3年生でわり算に入るとき、九九を「逆から引き出す」力が必要になります。「21÷3は?」と聞かれて「3×7=21だから7」と戻れるかどうか。この練習は、九九が入ってきた段階で少しずつ始めておくと、3年生の春が楽になります。
それでも入らないと感じるとき
数か月続けても手応えがない、本人が算数の時間を強く嫌がるようになった。そうした場合は、家庭だけで抱え込まないでください。
まず担任の先生に、授業中の様子をうかがってみてください。家では見えない場面が見えることがあります。どの段で止まるのか、書くほうと言うほうのどちらが苦手なのかを先生と共有できると、学校での声のかけ方も変わります。
相談の切り出し方は連絡帳のお願い・相談の書き方、面談での聞き方は個人面談で聞くこと・話すことリストにまとめています。
よくある質問
Q. 九九はどの段から覚えさせるのがよいですか?
唱えやすく答えの規則が見つけやすい2の段と5の段から始めるのが定着しやすい方法です。次に3の段と4の段、そのあとに6から9の段、最後に1の段という順番です。教科書の並び順とは異なることがありますが、家庭での復習であれば得意な段から積み上げて構いません。1つの段を完全にしてから次へ進むより、2の段と5の段を交互に触れるほうが飽きずに続きます。
Q. 7の段と8の段だけどうしても覚えられません。
7と8の段が最後まで残るのには理由が2つあります。1つは唱えたときの音が言いにくいこと、もう1つは日常生活で7個ずつ8個ずつ数える場面が少なく、出会う回数が他の段より少ないことです。対策は、交換法則を使って覚える数を減らすことです。7×3が出てこなくても3×7を覚えていれば答えは同じなので、得意な段から引き出せるようにしておくと実質の負担が半分になります。
Q. 唱えて覚えさせるだけでよいのでしょうか?
唱える練習は必要ですが、それだけでは足りません。文部科学省の学習指導要領解説算数編では、九九の学習について、答えがいくつになるかを乗法の意味から考えることと、その結果を唱えて習熟させることの両方が必要だとされています。答えを忘れたときに、意味に戻って自分で求め直せる状態にしておくことが、その後のかけ算の筆算やわり算につながります。
Q. いつまでに覚えられればよいですか?
乗法は学習指導要領で第2学年の内容とされていますが、具体的にどの時期に扱うかは教科書や学校によって異なります。多くの学校では2学期に学習が進みます。ただし、期限を切って急がせると算数そのものを嫌いになりかねません。3年生でかけ算の筆算やわり算に入るまでに定着していれば十分間に合いますので、焦らず毎日少しずつ続けるほうが結果的に早く仕上がります。
今日からの3ステップ
- ☑ おはじきで「3が4つ分」を1回だけ見せた
- ☑ 交換法則を伝えて、覚える数が半分でいいと知らせた
- ☑ 今日やる段を1〜2段に絞った
- ☑ 唱える・書く・使うを5分で回した
- ☑ できた段に印をつけた