漢字が覚えられない子への教え方|10回書いても入らないときの3つの手
入れかえるのは、この3つです。
① パーツで捉える(部首と、知っている字の組み合わせに分ける)
② 熟語で覚える(単体ではなく、言葉として入れる)
③ 回数を分散する(同じ10回でも、今日3回・明日3回・明後日4回)
そして順番は読みが先、書きが後。これは学習指導要領の設計とも一致しています。
「10回書いたのに、テストで書けない」のはなぜか
宿題で同じ字をびっしり書いた。それなのに翌日のテストで思い出せない。この光景は、どのご家庭でも起きます。
理由ははっきりしています。同じ字を続けて書くと、3回目あたりから字を見なくなるからです。手が動きを覚え、目は別のところを見ています。「書いている時間」は長いのに、「字を思い出そうとした回数」は1回しかない。だから残りません。
覚えるために必要なのは、書いた回数ではなく思い出そうとした回数です。この一点を変えるだけで、同じ時間の使い方でも結果が変わります。
1. 手本を見る
2. 手本を隠して、目を閉じて字を思い浮かべる(1秒)
3. 書く
4. 手本と見比べて、違うところに丸をつける メモ:2が肝心です。思い出そうとする1秒があるかないかで、同じ1回の価値がまったく変わります。4も飛ばさないでください。どこが違ったかを自分で見つける作業が、次の1回を正確にします。
学年で、負担はこう変わります
学年別漢字配当表では、小学校の6年間で1026字を学ぶこととされています。学年ごとの内訳は次のとおりです。
| 学年 | 配当字数 | この学年の特徴 |
|---|---|---|
| 第1学年 | 80字 | 画数が少なく、形も単純。まだ量で困ることは少ない |
| 第2学年 | 160字 | 倍に増える。ここで書き取りの宿題がつらくなりはじめる |
| 第3学年 | 200字 | 最初の壁。字の形も複雑になり、部首の考え方が効きはじめる |
| 第4学年 | 202字 | 都道府県名の漢字が入る。地図と結びつけると覚えやすい |
| 第5学年 | 193字 | 抽象的な意味の字が増える。熟語で覚える方法が有効になる |
| 第6学年 | 191字 | 中学につながる字が多い。読めることを優先してよい時期 |
なお、平成29年告示の学習指導要領で都道府県名に用いる漢字20字が第4学年に加わり、それまでの1006字から1026字になりました。4年生で都道府県を学ぶ社会科と、国語の漢字がつながる設計になっています。
参考:学年別漢字配当表(小学校学習指導要領 別表)/字数の内訳は文部科学省の資料にもとづく
この表を見ると、つまずきやすいのは3年生だと分かります。2年生の160字から200字へ増え、同時に字の形が複雑になる。ここで「漢字は苦手」という自己認識ができてしまうと、その後ずっと尾を引きます。
定着させる3つの手
手1:部首とパーツに分ける
複雑な字を、丸ごと形として覚えようとすると負担が大きくなります。知っている字の組み合わせに分解すると、覚える量が一気に減ります。
たとえば「時」は、「日」と「寺」。「校」は「木」と「交」。「晴」は「日」と「青」。すでに知っている字が組み合わさっているだけだと分かると、初めて見る字への抵抗が下がります。
さらに、部首には意味の手がかりがあります。「氵(さんずい)」がつく字は水に関係する、「木」がつく字は木や植物に関係する。この見方が入ると、意味を推測できるようになり、読めない字にも当たりをつけられるようになります。
新しい漢字が出てきたら、まず「知ってるところある?」と聞いてみてください。子どもが自分で分解できると、覚える作業が「暗記」から「発見」に変わります。
手2:熟語で覚える
漢字を単体で覚えると、テストで書けても文章の中で使えません。逆に、言葉として入れると、意味と読みと形が一度に入ります。
「習」という字を10回書くより、「学習」「習字」「練習」の3語を書くほうが、同じ手間で得られるものが多くなります。音読みも訓読みも、熟語の中で自然に区別できます。
とくに5・6年生では、抽象的な意味の字が増えます。「政」「務」「識」のような字は、単体では意味がつかめません。熟語にして初めて、何を表す字なのかが見えてきます。
手3:使う場面をつくる
3つめが、いちばん地味で、いちばん効きます。実際に使った字は忘れません。
- 連絡帳や日記に、その週に習った字を使ってみる
- 買い物メモを漢字で書く
- 家族へのメッセージに使う
- 4年生なら、地図で都道府県名を探して書く
「書き取りの宿題」と「実際に使う」は、脳の中でまったく別の作業です。使う場面が1回あるだけで、その字の定着はぐっと上がります。
読みが先、書きが後
「読めるけど書けない」状態を心配される方は多いのですが、これは順番としては自然です。
学習指導要領では、各学年において、当該学年に配当された漢字を読むこと、前の学年に配当された漢字を書くことを身に付けるよう指導することとされています。つまり、読みが1年先行する設計になっているのです。
この前提を知っておくと、家庭での優先順位が決まります。まず読めるようにして、教科書が読める状態をつくる。書きは、翌年にかけて仕上げていく。そう考えると、いま全部書けなくても焦る必要がないことが分かります。
テスト前の見直しは、間違えた字だけに絞る
テスト前になると、範囲の全部をもう一度やらせたくなります。しかし、すでに書ける字を練習する時間は、ほとんど得るものがありません。
3日前:範囲を1回だけ通してテストする。書けなかった字に印をつける
2日前:印のついた字だけを練習する
前日:印のついた字だけを、もう一度テストする
これで終わりです。書けた字は触りません。 メモ:印のついた字が10字を超えるようなら、範囲を分けて2回に分けてください。一度に扱う量が多いほど、定着率は下がります。
この方法のもう1つの利点は、できないところが見えることで、子ども自身が状況を把握できることです。「あと5字」と分かると、終わりが見えます。範囲全体を漠然と眺めているより、はるかに動きやすくなります。
宿題の書き取りが多すぎるとき
学校の宿題として、同じ字を何行も書く課題が出ることがあります。ここまで読んで「効率が悪いのでは」と感じた方もいると思いますが、宿題は宿題としてやるのが基本です。勝手に減らすと、子どもが学校で困ります。
そのうえで、家庭でできる工夫があります。
- 途中で1回、手本を隠す。10行のうち5行目で一度手本を伏せ、思い出して書かせる。これだけで「思い出す回数」が増えます。
- 1行ごとに見比べる。書きっぱなしにせず、行の終わりで手本と見比べる。違いに気づく作業が定着を助けます。
- 負担が大きすぎるときは相談する。時間がかかりすぎて生活に支障が出ている場合は、連絡帳で状況を伝えて構いません。
相談の書き方は連絡帳のお願い・相談の書き方にまとめています。「できません」ではなく「◯時間かかっています」と事実を伝えるのがコツです。
覚え方が合わない子への別の入り口
ここまで書いた方法が合わない子もいます。その場合、入り口を変えてみてください。
耳から入る子
書くより、聞くほうが入る子がいます。読み方を声に出して繰り返す、熟語を口で言ってから書く。書く前に音で覚えておくと、書く作業が楽になります。
物語で入る子
字の成り立ちや、部首の由来に興味を示す子がいます。「なぜこの形なのか」に納得すると、一気に覚えます。漢字の成り立ちを扱った本を1冊置いておくだけで、自分から読み始めることがあります。
体を動かすと入る子
紙に書くより、空中に大きく書く、背中に指で書く、といった動きのほうが入る子もいます。机に向かう時間を減らして、遊びの形にすると続きます。
どの入り口が合うかは、試してみないと分かりません。1つの方法で3週間続けて手応えがなければ、別の方法に変えて構いません。方法を変えることは、あきらめることではありません。
やってしまいがちなこと3つ
📝 読む力を支える無料ドリル
漢字が読めるようになると、文章を読む速さが上がります。学年別の読解練習を、登録不要でその場で解けます。
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1・2年生:書く姿勢と鉛筆から
この時期は、字を覚える以前に書く動作そのものが負担であることがあります。鉛筆の持ち方、紙の位置、姿勢。ここが整うだけで、書く量に耐えられるようになる子がいます。
マス目は大きめを使ってください。小さいマスに入れようとすると、それだけで疲れます。
3・4年生:部首を武器にする
分量が増える時期です。ここで部首で仲間分けする方法を身につけると、その後6年間ずっと効きます。「さんずいの字を集めてみよう」といった遊びから入ると入りやすくなります。
4年生は都道府県の漢字が入ります。地図帳を横に置いて、社会科とセットで覚えると効率が上がります。
5・6年生:熟語と意味で
抽象的な字が増えるため、形だけを覚える方法が通用しなくなります。熟語で覚え、意味を説明できるようにすることが中心になります。
この時期は、本人に方法を選ばせるのも有効です。何回書くか、いつやるか、どこまでやるか。自分で決めたやり方のほうが続きますし、中学に向けた自立の練習にもなります。
漢字が嫌いになってしまったとき
ここまでの手立てを試す前に、そもそも漢字という言葉を聞くだけで嫌がる状態になっていることがあります。その場合、方法を変えても入りません。まず気持ちのほうを下げる必要があります。
量を思い切って減らす
1日1字で構いません。「今日はこの1字だけ」と決めて終える経験を何日か重ねると、机に向かうこと自体の抵抗が下がります。減らすのは後退ではなく、再開のための手順です。
できている字を数える
「まだこんなに残っている」ではなく「もうこれだけ書ける」と数え方を変えてください。3年生なら、すでに1・2年で240字を身につけている計算になります。ゼロから始めているわけではないと本人が知るだけで、見え方が変わります。
得意な教科の時間を削らない
苦手を埋めるために好きな教科の時間を削ると、勉強全体が嫌なものになります。苦手に使う時間は短く、好きなことは今までどおりに。この配分を守ってください。
よくある質問
Q. 小学校で習う漢字は何字ですか?
学年別漢字配当表では、小学校の6年間で1026字を学ぶこととされています。内訳は第1学年80字、第2学年160字、第3学年200字、第4学年202字、第5学年193字、第6学年191字です。平成29年告示の学習指導要領で都道府県名に用いる漢字20字が第4学年に加わり、それまでの1006字から1026字になりました。
Q. 同じ字を10回書かせても覚えません。
同じ字を続けて10回書くと、3回目あたりから手の運動になり、字を見なくなります。書いている時間の割に定着しにくいのはそのためです。効果を上げるには、回数を減らすのではなく分散させてください。同じ10回でも、今日3回、明日3回、明後日4回と日をまたぐほうが残ります。書く前に一度目を閉じて字を思い浮かべさせる手順を入れると、さらに変わります。
Q. 3年生になって急についていけなくなりました。
3年生は分量が増える最初の学年です。学年別漢字配当表では第2学年の160字に対し第3学年は200字となり、同時に字の形も複雑になります。ここでつまずく子は珍しくありません。対策は、すべてを追わずに、教科書やテストで実際に出てくる字から優先することです。部首で仲間分けして覚える方法も、この学年から効きはじめます。
Q. 読めるけれど書けません。それでもよいのでしょうか?
順番としては自然な状態です。学習指導要領では、各学年で当該学年に配当された漢字を読むこと、前の学年に配当された漢字を書くことを身に付けるよう指導することとされており、読みが先に立つ設計になっています。まず読めるようにして教科書が読める状態をつくり、書きは翌年にかけて仕上げていくと考えると、負担の感じ方が変わります。
今日からの5ステップ
- ☑ 「続けて10回」をやめた
- ☑ 書く前に1秒、目を閉じて思い浮かべる手順を入れた
- ☑ 新しい字を「知ってるところ」で分解させた
- ☑ 単体ではなく熟語で書かせた
- ☑ その字を使う場面を1回つくった