家庭学習の習慣化|時間より大事な「場所と順番」
効くのは、次の4つです。
① 時間帯を毎日同じに(時刻ではなく、生活の順番で決める)
② 始めやすい場所(机にこだわらない)
③ いちばん簡単なものから(着手のハードルを下げる)
④ 道具を出したままに(始めるまでの手数を減らす)
始められないのは意志の弱さではありません。始めるまでの手数が多いだけです。
「学年×10分」の扱い方
家庭学習の時間の目安として、よく紹介されるのが「学年×10分」という考え方です。1年生なら10分、3年生なら30分。「学年×10分+10分」という言い方もあります。
この目安は広く知られた通説であって、国が定めた基準ではありません。また、宿題の量は学校によって大きく異なるため、同じ学年でも実際にかかる時間はまちまちです。
見るべきは長さではなく、毎日同じ流れで机に向かえているかです。10分でも毎日続いていれば、それは習慣として成立しています。逆に、週末に2時間だけまとめてやる形は、習慣にはなりません。
① 時間帯は、時刻ではなく「順番」で決める
「17時から勉強」と決めても、たいてい守れません。習い事の日、帰りが遅い日、疲れている日。生活は毎日同じではないからです。
効くのは、時刻ではなく生活の中の順番で決めることです。
・帰ってきて、手を洗ったら、まず宿題
・おやつを食べたら、宿題
・お風呂から出たら、音読
・夕食の前に、ドリル1ページ
「◯◯したら、次はこれ」の形にします。 メモ:どの順番が合うかは家庭によります。大切なのは、毎日同じ順番であること。「今日はいつやる?」と毎日聞いていると、そのたびに交渉になります。
順番が決まると、やるかどうかを考えなくなります。考えないで済むことが、習慣の本質です。歯みがきをするかどうか毎日迷わないのと同じ状態を目指します。
② 場所は「集中できる場所」より「始めやすい場所」
リビングか、子ども部屋か。よく議論になりますが、どちらが正解ということはありません。
低学年のうちは、大人の目が届いてすぐ聞ける場所のほうが進みやすい傾向があります。学年が上がると、静かな場所を選びたがる子も出てきます。本人に選ばせて、しばらく試してみてください。
ただし、場所選びで外せない条件が2つあります。
- 毎回同じ場所であること。場所が変わると、そのたびに準備が必要になります。
- そこに道具がそろっていること。鉛筆を取りに行く、消しゴムを探す。この移動が集中を切ります。
リビング学習の場合、テーブルの上に他のものが乗っていると、片づけてから始めることになります。この一手間が、着手を遅らせます。
座ったらすぐ書ける状態にしておく。これだけで、始まりが早くなります。
③ いちばん簡単なものから始める
宿題が3つあるとき、どれから始めるか。多くの大人は「難しいものから」と考えますが、習慣づくりの段階では逆です。
いちばん簡単なもの、たとえば計算ドリル1ページや音読から始めてください。理由は単純で、始まってしまえば続くからです。難しいものから始めると、始める前に止まります。
1. 音読(声を出すだけ。すぐ終わる)
2. 計算ドリル(手が動く。頭を使いすぎない)
3. 漢字(少し負荷がある)
4. 作文や調べ学習(いちばん重い) メモ:この順番だと、重い課題に取りかかる頃には机に向かう体勢ができています。順番を変えるだけで、同じ量が進むことがあります。
④ 始めるまでの手数を数える
「なかなか始めない」とき、実際に何が起きているか観察してみてください。たいてい、始めるまでに手数が多すぎます。
ランドセルを開ける。プリントを探す。連絡帳を見る。筆箱を出す。鉛筆をけずる。消しゴムがない。探す。
この段階で、すでにエネルギーを使い切っています。本人のやる気の問題ではありません。
| 減らす手数 | やり方 |
|---|---|
| 道具を出す | 筆記用具を学習場所に置きっぱなしにする |
| プリントを探す | 帰ってすぐ、宿題だけ出しておく |
| 鉛筆をけずる | 前の晩にけずっておく |
| 何をやるか決める | やる順に重ねて置いておく |
この4つを整えるだけで、着手までの時間が変わります。座って、一番上の紙を取れば始まる。この状態を作ってください。
それでも始まらないとき:5分の約束
仕組みを整えても動かない日はあります。そのときに使えるのが「5分だけ」です。
この言い方には2つの効果があります。
1つは、終わりが見えること。5分なら耐えられます。
もう1つは、始まれば続くことが多いこと。手が動き出すと、そのまま最後までいく日が少なくありません。
5分で本当にやめても構いません。やらなかった日をゼロにするほうが、習慣としては大事です。
タイマーを使うと、より効果的です。時間が見えると、本人が自分で管理できます。5分たったら「もう終わっていいよ」と声をかける。ここで無理に延長させないでください。約束を守ることが、次の日につながります。
声かけの言いかえ
同じことを言うにも、言い方で反応が変わります。よく使われる言葉と、言いかえの例です。
| よくある声かけ | 言いかえ | 理由 |
|---|---|---|
| 勉強しなさい | 何から始める? | 指示ではなく、選ばせる形にする |
| まだ終わってないの? | あとどれくらい? | 責める形から、確認する形へ |
| 早くやりなさい | 5分だけやってみる? | 終わりを示すと動きやすい |
| この前も言ったでしょ | (言わない) | 過去を持ち出すと、その日の話でなくなる |
| (できた日に何も言わない) | もう始めてたんだね | できた日に反応するのがいちばん効く |
最後の行が、実はいちばん大切です。できなかった日だけ反応していると、注目されるのは失敗のときだけになります。始められた日に一言、事実を言う。それだけで空気が変わります。
学年別・手の離し方
1・2年生:一緒にいる
この学年は、そばにいることそのものが支えになります。教えなくても構いません。同じテーブルで大人が別のことをしているだけで、進みやすくなります。
宿題の内容を確認するのも、この学年では大人の役割です。連絡帳を一緒に見て、何をやるかを確かめてください。
3・4年生:同じ部屋で、別のことをする
少しずつ手を離す時期です。おすすめは、同じ部屋にいるけれど、大人は別のことをしている状態です。見張られている感じがなく、それでいて聞ける距離。
宿題の確認も、本人が連絡帳を見て、終わったら大人に見せる形に移していきます。確認する役を渡すのがこの学年の課題です。
5・6年生:任せて、週1回だけ確認
基本は任せます。毎日の確認をやめ、週に1回、まとめて様子を聞く形にします。「今週どうだった?」の一言で十分です。
中学生になると、家庭学習は完全に本人の管理になります。その練習を、この学年でしておきたいところです。失敗する日があっても、それも練習のうちと考えてください。
やってしまいがちなこと3つ
ごほうびとの付き合い方
シールやポイント、おこづかい。ごほうびを使うかどうかは、多くのご家庭が迷うところです。
結論から言えば、使ってもよいが、設計に注意が必要です。ポイントは「何に対して与えるか」です。
| おすすめしにくい | おすすめできる |
|---|---|
| テストの点数に対して | 取り組んだことに対して |
| 「100点なら◯◯」 | 「1週間、毎日始められたら◯◯」 |
| 結果を条件にする | 行動を条件にする |
点数に対してごほうびを設定すると、点が取れないときに何も残りません。また、難しい問題を避けるようになることもあります。一方、行動に対してなら、本人がコントロールできる範囲です。
物より、始められた日に一言かけられるほうが続くことがあります。「もうやってたんだね」。この一言はコストがかからず、毎日使えます。
ごほうびを使う場合も、これと併用してください。物だけになると、物がないと動かなくなります。
習慣が崩れたときの立て直し
長期休み明け、行事の後、体調を崩した後。習慣は必ず崩れます。崩れること自体は問題ではありません。問題は、崩れたあとに戻す方法を持っていないことです。
立て直すときのコツは3つです。
- 元の量に戻そうとしない。いきなり30分に戻すと続きません。5分から再開します。
- 順番を思い出させる。「前は、おやつの後にやってたよね」。仕組みを再確認するだけで戻ることがあります。
- できなかった期間を責めない。「久しぶりだね」で始めてください。振り返って責めると、再開そのものが嫌になります。
とくに夏休み明けと冬休み明けは、崩れやすい時期です。長期休みの終わりに、生活リズムと一緒に学習の順番も戻しておくと、始業後が楽になります。2学期に向けた準備は2学期はじまり準備ガイドにまとめています。
宿題が終わらないとき
習慣以前に、そもそも宿題の量が本人に合っていないことがあります。次のサインがあれば、量や難易度の問題を疑ってください。
- 毎日、就寝時刻を過ぎても終わらない
- 泣きながらやっている日がある
- 他の子と比べて、明らかに時間がかかっている
この場合は、家庭の工夫だけで解決しないことがあります。担任の先生に、実際にかかっている時間を伝えてみてください。「できません」ではなく「1時間半かかっています」と事実を伝えるのがコツです。
伝え方は連絡帳のお願い・相談の書き方、面談での聞き方は個人面談で聞くこと・話すことリストにまとめています。
また、特定の単元でつまずいているために時間がかかっている場合もあります。その場合は、習慣の問題ではなく学習内容の問題です。つまずき解決ガイドから該当する単元をご覧ください。
夜、うまくいかない日に
仕組みを整えても、うまくいかない日はあります。大人も子どもも疲れている日は、無理をしないでください。
1日できなくても、習慣は壊れません。壊れるのは、できなかった日に叱って、勉強そのものを嫌いにしてしまったときです。
「今日はここまでにしよう」と大人から切り上げる判断も、必要な関わりです。翌日また同じ順番で始められれば、それで続いています。
よくある質問
Q. 家庭学習は毎日どれくらいやればよいですか?
目安としてよく紹介されるのが「学年×10分」や「学年×10分+10分」という考え方です。3年生なら30分前後、というものです。ただしこれは広く知られた通説であって、国が定めた基準ではありません。宿題の量も学校によって大きく異なります。時間を達成すべき数値として扱うと、時間つぶしのような学習になりがちです。長さより、毎日同じ流れで机に向かえているかを見てください。
Q. なかなか始めてくれません。
意志の問題ではなく、始めるまでの手数が多いことが原因であることが多くあります。ランドセルを開けて、プリントを探して、筆箱を出して、消しゴムがなくて探して。この段階でエネルギーを使い切ってしまいます。道具を出したままにする、いちばん簡単な課題を一番上に置いておくなど、着手までの手数を減らしてください。「5分だけやろう」と区切るのも有効です。
Q. リビングと子ども部屋、どちらがよいですか?
どちらが正解ということはありません。低学年のうちは、大人の目が届き、すぐ聞ける場所のほうが進みやすい傾向があります。学年が上がるにつれて、集中できる静かな場所を選びたがる子も出てきます。大切なのは場所の種類ではなく、毎回同じ場所であることと、そこに道具がそろっていることです。本人に選ばせて、しばらく試してみてください。
Q. 宿題は終わるのですが、それ以上やりません。
宿題が毎日終わっているなら、家庭学習としては十分に成立しています。無理に量を足すより、その状態を保つほうが優先です。追加するなら、苦手な単元を5分だけ、といった小さな形から始めてください。量を増やしたことで宿題まで滞るようになると、元も子もありません。増やす前に、いまの状態が安定しているかを確かめてください。
今日からの5ステップ
- ☑ 「◯◯したら勉強」の順番を1つ決めた
- ☑ 学習場所に道具を置きっぱなしにした
- ☑ やる順に、簡単なものを一番上に重ねた
- ☑ 時間ではなく「ここまで」で区切った
- ☑ 始められた日に、一言だけ声をかけた